ツヨシ(右)「了くん、ヤンジャンとヤンサンとヤンマガ買ってきた。どれ読む?ヤンジャンの表紙は●倉唯ちゃんだよ」
了くん(左)「なんでもいい」
ツヨシ「グラビア興味ないの?」
了くん「みんな同じに見える」
ツヨシ「ぼくのコンサートに唯ちゃん来てくれないかなってぐらい笑顔が可愛いよ。了くん女の子の顔みんな同じに見えるの?とびっきりの美少女がいつも2人そばにいるのに同じ?」
了くん「同じだ」
ツヨシ「最近グラビアが誰かすごく気になるんだよ。好きなタイプの子の表紙の雑誌から切り抜いてスクラップブックに取ってある。その中の誰かぼくのピアノ聴きに来てくれないかなって思う。いつかきっと誰かがたくさんのグラビアの子連れてきてくれて、客席が埋まるの夢なんだ。タブレット買ったら画像全部そっちに細かくファイルして永久保存する予定。内緒だけどあすかっちと久美子ちゃんの写真もあるよ。笑顔の写真だったらもっとよかったけど」
ツヨシ(右)「なんで乗ってこないの?」
了くん(左)「いや、次の鹿狩りの解禁とは関係ないから興味ないんだよ。猟銃は惚れた女だと思ってピカピカに磨け、そして正確に撃てって教わったんだけど、ピンと来ない」
ツヨシ「それじゃやっぱり雑誌のグラビア見なよ、ネットだとサイトにウィルスついてるかもしれないから、紙媒体は安全だよ」
了くん「前にも本屋で見たけどみんな同じに見える」
ツヨシ(右)「ぼくは会場でピアノを弾くとき、客席にいる女の人はみんなぼくの恋人だって想像するんだ。恋人に捧げるつもりで演奏するんだよ。でも、この間、楽屋に、唯ちゃん似の小学生の女の子がお母さんと一緒に花を持ってきてくれて、クラシックは詳しくないけど熱い演奏に感激したって言ってくれて。何にも染まっていないまっさらな子がぼくの演奏聴いてくれて喜んでくれて、また来てくれないかなとか、彼女になってくれないかなとか思うと、きみの理性が理解できないよ、もう爆発しそう。惚れちゃった。そうだ、もしその子が彼女になったらスクラップブックきみにあげてもいい」
了くん「お前べらべらべらべらとよく喋るよな。いらねぇよ」
了くん(左)「オレはオレのことだけ考えてる女なんて気味悪い。帰りを待ってご飯作ってじっと座ってる女より、ひとりで勝手に宴会しててくれる女のほうがラクだと思う」
ツヨシ(右)「つまんないな。ぼくはぼくを好きになってくれる女の子がいいよ。唯ちゃんは大人だから、唯ちゃんを若くしたようなあの子のほうがぼくと歳が近いし、何よりぼくのピアノで感動してくれる。そのうちピアノ以外のぼくも――」
了くん「お前はピアノを取ったらただの中学生だ。その子はピアノを聴きに来たんだろ。明日も公民館でコンサートやるなら練習しろよ」
ツヨシ「ぼくの明日のピアノは唯ちゃん似のあの子に捧げよう」
了くんの声「お前がベートーヴェン好きなワケが分かったよ」
翌日の夜。
了くん(左)「コンサートは上手くいったか?」
ツヨシ(右)「うん。お客さんはたくさん来てくれたけど……」
了くん「よかったな」
ツヨシ「あすかっちと久美子ちゃんは?」
了くん「ふたりでメシ食いに外へ行った」
ツヨシ「あのさー、もっと突っ込んで聞いてくれないの?」
了くん「何を?」
ツヨシ「唯ちゃん似のあの子にチケット2枚渡してたんだ、またお母さんと来てって。確かに来てくれたんだけど、お母さんじゃなくてぼくより背の小さい彼氏連れてきたんだよ。サッカー部でMFやってて、以前脚を傷めた時、ぼくのCDに励まされたよって言ってたけど、喜んでいいのか……あの子は彼氏に聞いてぼくのこと知ったんだって。まっさらだと思ったのに裏切られた~。当面、グラビアのスクラップは続きそうだ」
了くん(左)「趣味捨てなくてよかったな」
ツヨシ「きみは理性のカタマリだと思ったんだけど、本当に他人のことに鈍いんだね。ぼく、いろんな意味で傷ついてるんだけど」
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了くんは鈍いのではなく、結末に触れないほうがいいと思って励ましたつもりでした。でも傷心のツヨシくんには伝わりませんでした。ツヨシくんはピアノ抜きでも自分を愛してくれる人を求めていますが、そんな人は現れるのでしょうか。







