あすか「ん?フランス革命時代のマリー・アントワネットとフェルセンのロマンスが知りたい?そうだねえ、二人のなれそめは、まだアントワネットが王太子妃になって4年目、スウェーデン貴族の子息フェルセンがヨーロッパ遊学3年目の仮面舞踏会の夜だった。アントワネットは物腰柔らかで身分高そう、フェルセンは背が高くハンサムでマッチョ、二人は同じ歳。『もうお友達は出来まして?』『いえ、あなたにお近づきになるチャンスを待っておりましたので、まだ一人も。マダム、踊っていただけませんか?』ダンスの息も合った」
クリスタル(右)「うわぁ~、おとぎ話みたい」
アンバー(左)「フェルセンみたいな人が旦那だったらよかったのにね。でもこんな一幕、ベルばらにあったかな?」
あすか「ベルばらもう読んだの?」
アンバー「うん。アニメも観た」
あすか「それならこれから起こることもだいたい分かるね?」
ふたり「うん」
あすか「実はフェルセンは、スウェーデン王グスタフ3世がフランスに送り込んだスパイだったんだ」
ふたり「えーっ?」
あすか(右)「その後フェルセンはヴェルサイユ宮殿に何度も招かれ、アントワネットと距離を縮めていった。しかし二人が出会った妃から3ヶ月目、フランス国王ルイ15世が天然痘で急死。自動的にルイ王太子がルイ16世となり、アントワネットも王后陛下になってしまった。もう今までのような振る舞いは出来ない。身分違いの恋と分かっていたフェルセンは王妃の元を去ってスウェーデンへ帰った。かれは本当にアントワネットに恋してしまったんだよ」
クリスタル(左)「かわいそう」
クリスタル(右)「報われない恋なんだね……」
アンバー(左)「もう!すぐ入っちゃうんだからクリスタルってば」
あすか「さて、ルイ16世と性格も趣味も合わないアントワネットは贅沢三昧の生活を続け、国民は重い税と飢えに苦しみ、議会が開かれることになった。税を免れられた僧や貴族は私服を肥やし、市民農民は虐げられていたので一月後、独自に国民議会を……」
ふたり「わー、難しいお話はナシ!フェルセンとの再会から始めて!」
あすか(右)「これ『テニスコートの誓い』っていってテストに出るよ。覚えておいた方がいいと思うけどな」
アンバー(左)「小学校のうちは出ないもん」
クリスタル(中央)「もん♪」
あすか「じゃあ、政治犯をぶちこむバスチーユ要塞に市民たちが攻め入ってフランス革命が起こった。パリ市長は殺され、一時期任を解かれてた親民的なネッケルが財務長官に呼び戻されるといったん国民は収まったんだけど、フランスは無政府状態になって、勢いづいた暴徒が国王一家をパリのチュイルリー宮殿に押し込め、貴族や僧侶は国外へ逃げ出した。そしていよいよ、あのフェルセンが国王一家を救うためスウェーデンから再びやってきた!って今度もスパイとして送り込まれてきたんだけど」
アンバー(左)「素敵!かれこそ王子様だ」
クリスタル(右)「彼って理想よぉ。アントワネットだけに愛を捧げて」
あすか「愛を捧げすぎてルイ17世はフェルセンの子だって噂まで立ったんだからやりすぎだよ。生涯独身だったみたいだけどとにかく、かれは国王一家の身を案じてパリから脱出することを勧めた。フランスから逃げた貴族らが外国の王たちと手を組んでフランスを攻撃したからね」
あすか(右)「国王一家はすぐにでもパリを離れたかったが、アントワネットがこの皿もあの服も持って行きたいと騒いで計画は遅れ、変装してなんとか馬車でフェルセンが御者を務めて全員逃げ出した。だけどあまりに豪華すぎる馬車で目立ってしまったのと、ルイ16世がこれ以上のフェルセンの同行を断り、思ったように迎えの騎士隊に出会えず、とうとう市民たちに国王一家だとバレちゃった。これが『ヴァレンヌ事件』。これもテストに出るよ!」
クリスタル(左)「ボロの馬車だったらうまくいったかもしれないのにね」
アンバー「あとはだいたい知ってる。ルイ16世は国王ではなくなって処刑されて、恐怖政治とかになって、革命に反対した人が次々殺されたんだよね」
あすか「そうだよ。フェルセンはアントワネットを救出しようと何度も計画を立てたけど、みんな失敗に終わった。そしてそのたびアントワネットの立場は悪くなった。フェルセンはスパイとしても二流だったし、参謀としてもダメダメだったんだよ」
クリスタル「フェルセンもアントワネットもこれじゃかわいそう」
あすか「うん。囚人として閉じ込められたアントワネット一人だけでも逃げたらどうかと味方の将軍が提案したんだけど、アントワネットはフェルセンへ『わたしはただあなたのもとへみちびかれる』という言葉を将軍に託して逃亡を断った。子供いたからね」
クリスタル「でも、心はフェルセンのものだったのね」
あすか「アントワネットは出来レース裁判の末、ギロチンにかけられ処刑された。遺されたルイ17世は靴職人の元へ預けられたけど、やがて靴職人夫妻は去り、地下に閉じ込められ、放置されて死んだ。王女はその後フランスを去った。いっぽうフェルセンはスウェーデンに帰り、カール13世に仕えたけれど、その後王太子カール14世の事故死の犯人ではないかと噂された。胸中穏やかでないものの、カール13世は王太子の葬儀委員長をフェルセンに任せた」
あすか「フェルセンはスウェーデンの王になりフランスを攻め入るために国民をかり出す陰謀を企てている疑いもかけられていたんだよ。かれは愛するアントワネットを殺した民衆という概念を憎み圧政をしいたため、民衆からも憎まれていた。スウェーデン王太子の葬儀の日、彼は群衆に襲われ撲殺された。奇しくもその日はヴァレンヌ事件と同じ日だった」
百鬼丸「(運命的です、がうがう)」
アンバー「運命よね」
クリスタル「……運命ね」
あすか(右)「フェルセンは原形とどめないほどぐちゃぐちゃに踏みしだかれて、その遺体は裸でドブに棄てられたよ。おしまい」
クリスタル(左)「えっ」
クリスタル(中央)「そんな最期いやだぁ!そこだけ聞きたくなかった」
アンバー(左)「殺されたってのはベルばらで知ってたけど、遺体の扱われ方までは描いてなかったね。私、結構そういうの好きよ」
クリスタル「わーん」
あすか(右)「悪かったね、事実なんてそんなもんだよ。アントワネットとのロマンスの顛末、ご満足いただけなかっただろうけど、要するに血の気が多いんだよねー、向こうの人は。あ、ここはテストに出ないから忘れてもいいよ」
クリスタル「忘れられないよ!」
=============================
こういうことには悪意たっぷりに話すあすかっち。
15コマと大変長いお話にお付き合いくださり、ありがとうございました。フランス革命の詳細についてもっと書きたかったのですが、それだと恐ろしく長くなって読者の方がお疲れになると思いましたので、フランス革命の立役者であるロベスピエールその他の人たちのことは割愛しました。
ラストが……という方、お疲れ様でした。
なお、あすかっちは知りませんが、フェルセンの無惨な遺体は領内の城に運び込まれ、王太子暗殺の疑いもなくなったため、教会で大々的なお葬式がとりおこなわれたそうです。
びっくりさせてどうもすみません……。(m_m)
さらに追い打ちをかけるようで申し訳ないのですが、私にはフェルセンが生涯アントワネットしか愛さなかったとは思えません。長身でマッチョでハンサムなフェルゼンがモテないはずないし、実際愛人がいた説もあります。でも時代が時代だけにスパイとして間抜けだったフェルセンを夫にするのはリスクが大きいと思う現実的な女性のほうが多いと思うので、生涯独身だったというのは分かります。アントワネットとの純愛を期待した方、申し訳ありません。宝塚ファンの方、ベルばらファンの方、そして池田理代子先生ごめんなさい。
<禁・無断複製転載>
















