ナタリーさん「あすかっち!今回のコラム何?"無力な母を釈放せよ"って。雑誌じゃ今回児童虐待で逮捕された両親を徹底的に叩く予定よ。我が子なのに虐待に加わった無責任な母親は罰を受けるべきなのに、庇っちゃ駄目じゃない」
あすか「彼女は虐待に加わっていない。今回の逮捕は他の、夫のDVに苦しんでいる母親達をさらに追い込むことになるよ」
ナタリーさん「母親は夫が娘を虐待しているのをただ見ていたのよ。虐待したのと同じだわ。母親なら身を挺しても娘を守るべきよ。父親のDVに悩まされてたあすかっちなら分かるでしょ」
あすか「母親っていったってたかだか30やそこらの小娘になにができる。彼女は無力な存在だよ。母親だからって万能じゃないんだよ」
ナタリーさん「それでも産んだからには責任が伴うのよ。旦那と別れる勇気を出すべきだったわ」
あすか「そうして最貧困家庭に堕ちろってことだよね。この国じゃ離婚した子連れ女に働き口なんてほとんどない。生活保護を申請すれば世間から非難を浴びる上に、一日に100円のパンだって買えない生活になる。結局飢え死にだ。彼女は生きていくためには娘を人身御供に差し出すしかなかったんだ。それを『母親なら何でも出来るだろう』と責めるのはお門違いだ」
ナタリーさん「だけど母親には子供を守る義務があるのよ」
あすか「違うね。国が子供を守る義務があるんだ。母親を容疑者にすれば、罪悪感に囚われた母親は取調室ですべて自分の責任ですと言って泣き、父親は何年もしないで釈放されるだろう。だけど母親には重罪が科される。これがこの国の現状だ」
ナタリーさん「じゃあ、母親はどうすればよかったのか分からないわ」
あすか「夫と刺し違えていたらあっぱれ日本の母の鑑とでも書けば日本中の女達は子供を産まなくなるだろうね。でも保守層の女性達やたまたま相手がDV夫でなかったお花畑の奥さんは雑誌のお涙頂戴に騙されて買ってくれるんじゃないの。そして相手がDV夫でなかったのを見抜けなかったのが悪いとか、働くのがイヤで離婚しなかったのが悪いとか、好き放題SNSに書きまくるだろうよ。離婚する時は大金が要るんだよ。それを分かってない女どもの井戸端会議のお楽しみに使われるのは気の毒というものだ」
ナタリーさん「だからあんなコラム書いたの?炎上するわよ」
あすか「この国はジャーナリズムも世間のおばちゃん達の井戸端会議に左右されるようだけど、スーパーウーマンになることを強要されて散っていった女達がどれだけいると思う?真実を語ってるって思わない?」
ナタリーさん「謝罪文出して記事を削除ってわけにはいかないようね。今回は大目にみるけど、あんたにもし苦情が殺到したら、あんたの生い立ち残らずバラすけどいいかしら。炎上を沈静化するためには同情引くしかないから」
あすか「お好きなように」
ナタリーさん「あんた当分、事件性のあるもののコラムには使わないからね。今の時代、義憤でドーパミン出しまくりの大衆の怒りを買えば、雑誌そのものが潰れてしまうの。だから大人の事情も分かって。義憤が最大の偽善だってことは私もよく分かってる。だけどそこは我慢しないとごはんが食べられなくなっちゃうのよ。くやしいけどジャーナリズムはとっくに敗北したわ」
ナタリーさん「次の小説は突撃で官能もののルポをもとにお願い」
あすか「ペナルティってわけ?」
ナタリーさん「そうよ。思いっきりいやらしく書いて頂戴」
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ペンシルバニア州のアーミッシュというキリスト教原理主義の集落でも、兄たちの虐待に遭った妹のほうを殺そうとしたのは、他ならぬ実の母親でした。醜聞が洩れるのを恐れた母親は娘を救うことより息子を守る方を選んだのです。娘がよそで喋ったりしないよう歯を全部抜き、食事を与えないで放置しました。このようなことは今までどこの国でも当たり前のように起こっています。処罰するべきは弱い立場の母親ではなく息子達のほうだということを誰も言えないのです。
息子達は現在当たり前に所帯を持って暮らしていますが、娘はアーミッシュの村を脱出して弁護士にかくまわれています。
これは母親がやり過ぎな例ですが、世間が母親にすべての責任を押しつけた結果です。










