シスター・クラレンス「それでは、今週の宗教の時間を終わります」
ゆきな「あすかっちー、今日のシスター・クラレンスの授業の意味よく分からなかったんだけど、どういう意味?あれ」
あすか「うーん、イエスの名を騙って治療をしている一行を責めるな、ってイエスは言ったんだよね。敵でない者はすべて味方である、って。つまり自分の名前を広めることに意味があったんだろうね」
キラりん「えー!なにそれ」
ゆきな「それってバチカン(当時ないけど)が認めてない異端のキリスト教も認めろってことだよね」
あすか「そこが謎なんだけどね、どうもそういうことになる」
キラりん「じゃ、キリスト者に一杯の水を恵んだ者は救いの手から漏れることはないってのは?キリスト教徒でなくても天国に行けるの?」
あすか「天国があればの話だけどね」
ゆきな「え?」
あすか「神様の存在や奇跡はある程度信じるけど、私、もう魂も天国も地獄も煉獄もいまいちぴんとこないんだよね。非科学的すぎてさ」
ゆきな「あすかっち、永遠に生きていたいからってあんなに熱心だったじゃないか。どうしちゃったの」
あすか「いや、『無』も悪くないかと思うんだよね。消滅と解釈するか、この世のあらゆる苦しみから解放されることが『無』と取るかで意味変わるけどそうであるならばそれはそれでいいんじゃないかな」
キラりん「あすかっち、それ仏教だよ」
あすか「それも悪くない。お釈迦様が死んだ時は『釈迦入滅』って言ったよね。キリスト教だと『帰天』だし。いま流行ってるのは『永眠』だけど私は子供の頃永眠って言葉さえ怖かったから『他界』って表現がいいって思ってた。でも今は『入滅』が正しい気がする」
キラりん「なんだか怖いことになってきたわね。仏教って怖いのね」
あすか「だからご冥福をお祈りしますって言葉をこれから使うかどうかで悩んでるんだよね。『ない』ものに冥福もなにも存在しないんだから」
キラりん「そうかな。私、できれば天国あってほしいけどな…地獄は要らない」
ゆきな「私には必要ないからあすかっちの言うことも納得いく。ちょっと驚いたけど、あの世はないような気がする」
あすか「それで、今はカトリック校にいる意味が分からなくなった」
キラりん「そうかー」
ゆきな「じゃあ、同じ敷地内の鷗洋学院に転校したら?あっち無宗教だよ」
あすか「そうだね」
ゆきな「そうだねって…信仰ってあすかっちにとって簡単に捨てていいものだったの?」
あすか「だから、分からなくなったんだってば。元から信じてなかったのか、信じられなくなったのかさえ自分でも分からなくなったんだよ」
ゆきな「あすかっちさー、大丈夫?忙しすぎるんじゃない?」
あすか「いや…」
ゆきな「こういう時アルフレッドならなんて言うかね」
あすか「前もこーいう悩みあった時訊いた。心正しく生きていればお迎えが来た時必ず亡くなった奥さんに会えるって固く信じているから、お嬢様も普段からよい人間でいなさいって」
ゆきな「アルフレッドらしいね。ブレない人だなあ。じゃ、きみもアルフレッドに倣っていい人になればいいじゃん。ホントか嘘かで悩むより、まず、自分やみんなにとっていいことを信じようよ」
あすか「うん、そうだね」
キラりん「私、気分悪くなっちゃった」
あすか「ごめん、私のせいだ。保健室まで付き添うよ」
キラりん「大丈夫だよ、保健室まで行くほどじゃないから」
結局、キラりんとあすかっち、ふたりとも早退してしまいました。
秋はもの悲しいですね。思春期の子供はあやういのですよ。









