ノンコさん、コノエさんのアトリエにて。
ノンコ「あらやだ、こんなアルバムあったの?誰?この男の子。ちょっとあすかちゃんに似てるわね。親戚にこんな子いた?」
コノエ「それ、あすかちゃんよ」
ノンコ「まさか!こんな短髪に黒いランドセルに男子の盛装して、あすかちゃんなわけないじゃない」
コノエ「それ小学校の入学式の写真よ。黒いランドセルと男の子の服は、私が買ったの」
ノンコ「あらやだ母さん、あすかちゃんってやっぱり男の子になりたかったのね。全然覚えてないわ」
コノエ「そうじゃないのよ。小学校の入学式の前日に、お前があすかちゃんの頭、刈り上げちゃったのよ」
ノンコ「えー!まさか!ありえないわ」
コノエ「入学式前に、トモエちゃんって綺麗な長い髪の女の子が見知らぬ大学生の青年に高い高いされて、PTAで問題になったのよ。お前そのことで震え上がって、あすかちゃんが男に襲われないようにって思いっきり短髪にしちゃったの。それであすかちゃんがうちへ駆け込んできて、このなりでは入学式に出られないからって、私が男の子用のものをすぐ買ったわけ。当時うちにカツラ買うお金もなかったし間に合わない」
コノエ「今でもはっきり覚えているわよ。あすかちゃん泣きもせず、これでは周りを驚かせてしまうからなんとかしてくれって」
ノンコ「きっと自分でやったんじゃない?」
コノエ「人一倍見た目を気にしてた子がそんなことするわけないでしょう。お前、することが極端なのよ」
コノエ「だから髪が伸びるまでは男で通すって言ってたわよ。でもいじめられたくないからって剣道教室に通い始めて、そこからちょっと変わっちゃったのよね。男子を倒せるって分かってから、学校で、口より先に手が出る乱暴な子になっちゃったのよ。おまけに同じクラスになったトモエちゃんまであすかちゃんがいきなり殴ったってこともあったのよ。だから試合には出られなかったのよね」
ノンコ「そんなの全然知らないわ」
コノエ「あすかちゃん、しばらく私の家から通ってたからね。お前の耳には入れたくなかったのよ。お前、当時主婦と教師の仕事両立できなくて寝込んでばかりいたし、教師やめてからはマサオさんからひどいモラハラ受けてたでしょ」
ノンコ「それは覚えてるわ。『俺は専業主婦など養う気はない、自分で稼げる女だから結婚したんだ』っていつも言われてたもの。毎日泣いたわよ。苦しかったことしかないわ、あの頃」
コノエ「私がマサオさんの家に行っても、マサオさんひとことも口を利いてくれなかったし、なんだかひどかったけど、私も絵画教室持ってたから手伝いにも行けなかったわね。大事な時に支えてあげられなくてごめんよ」
ノンコ「そうね。あの人、家庭ってものを知らない人だったものね。いっぱいいっぱいだったわ。4年前だったわよね、母さんの絵がブレイクしたらあの人、キャリアウーマンの女の人作って『お前の金持ちの母親に養ってもらえ』って私とあすかちゃん家から追い出したのよね。私は自分はカトリックだから離婚できないって3年頑張ったけど、その間のお口の暴力がすごくて、私の体重32キロになっちゃって、なんとか司祭さんに頼んで姓を変えないことと再婚しないことを条件に離れたわ」
コノエ「その間本当によく我慢したわね。あの辺からあすかちゃんまた変わってね、髪を伸ばし始めてだれかれ構わず殴って歩くのやめたのよ。中学の入試で内申書に響くからって」
ノンコ「あの頃のあの子、時々分からなかったのよ。感動するとかないのかしらって思うの。家事は手伝ってくれるけど泣きも笑いもしなかったし、叱ってもケロッとしてるし、気味悪い画集やホラーDVDばかり見てるし。気持ち悪くて捨てても怒りもしない。そしてまた買ってくるのよね。モデルガンだのプラモデルだの変な趣味のものばっかりで、私どこで間違えたんだろうって。だから単に男の子のようなことが好きなんだって思ってたわ。夫と離れてやっと親子になれた気がしたわね」
コノエ「髪を伸ばしても、結局6年間黒いランドセルのままだったわ」
ノンコ「なんの服にでも合うように黒いのが気に入ってるって言ってたけど」
コノエ「本当のことは本人にしか分からないわよ」
ノンコ「あすかちゃんが中学入れたのも、執事つきの家に住めたのも母さんのおかげね。ありがたくて涙が出るわ」
コノエ「女子校へ行ったのも分かる気がするわよ。思春期の男の子って残酷だからね。あれからあすかちゃん、オシャレになったわね」
ノンコ「そうね、お洋服自分で作ったりお人形買ってきたり、明るくなった気がするわ」
ノンコ「ねえ母さん、そのアルバム捨ててくれない?ここにあると思うと昔のこと思い出しちゃってつらいわ」
コノエ「それはダメよ。あすかちゃんが大人になった時、あすかちゃんに決めてもらうわ」
コノエ「なんでもよ」
あすか「よっしゃ、今日も美少女!」
久美子「バカじゃないの」
あすかっち、昔のことなど全く気にしていないのでありました。
たぶん忘れ果てております。
( ゚ ▽ ゚ ;)( ゚ ▽ ゚ ;)( ゚ ▽ ゚ ;)( ゚ ▽ ゚ ;)
親が思う以上に子供は逞しいものであります。
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