久美子「あんたひょっとして、じょっぴんかけたとか鼻血出したらつっぺかうとかいう言葉遣いしてないでしょうね?」
あすか「小学生まではフツーに言ってたけど周り誰も言わないから私も言わなくなった」
久美子「そうよね?それ私達の方言よ。じゃあ難易度上げるけど、壁によしかかる、って言う?」
あすか「それは言うでしょう」
久美子「それもこっちの方言よ!」
あすか「え、そうなの?知らなかった」
久美子「とにかく方言だから内地でそれ言わないでよね」
あすか「久美子ちゃ~ん、いいかげんその手のコンプレックス卒業しようよ。私、今年の夏休みはそっちに行きたいな。北一硝子でトンボ玉作ってみたいんだよ」
久美子「ダメー!あんたはパコとあたしを渋谷のセンター街と新宿御苑と代官山のブティックと山下公園と中華街案内するの!」
あすか「あのさー、山下公園と中華街は東京じゃないよ。それでさ、東京は二人で回って、私だけそっち行ってテルコ伯母さんに北一硝子とオルゴール堂と運河とお寿司とトラピスト修道院案内してもらおうかと思ってるんだけど」
久美子「修道院は函館よ。クッキーならいくらでも持ってきてあげるからあんたは東京案内するの!あたしとパコが方向音痴だって知ってるでしょ。あとお母さんは銀座行きたがってるからね」
あすか「以前丸井今井でアキレス伯父さんに手袋を買ってもらったから丸井今井も…」
久美子「丸井今井はとっくの昔に小樽からなくなったわよ!」
あすか「あ、そう」
久美子「そういうことよ」
あすか「富良野のラベンダー畑とか車で連れてってくれないかな」
久美子「そっちはあたしも知らないから友達と行ったら?」
あすか「ひどいよ久美子ちゃん」
久美子「おだまり二重人格。あんたあたしと喋るときとボーイフレンドと喋るときと全然態度違うんだって?けっこういばってんでしょ」
あすか「ツヨシくんはボーイフレンドじゃないよ」
久美子「とにかく夏もよろしく!方言使うんじゃないわよ」
ノンコ「え?『よしかかる』って方言だったの?知らなかったわ」
あすか「でしょ。久美子ちゃんから聞かなきゃ一生気づかなかったよ。でもどうして久美子ちゃん、あんなにこだわるんだろ?」
ノンコ「うーん、小樽も昔はハイカラな街だったんだけど…今はちょっとさびしくなっちゃったのよ。私やお祖母ちゃんの頃は裕次郎のふるさととか、頭いい人はみんな小樽商大とか、売りがいっぱいあったんだけど」
あすか「裕次郎ってだれ?」
ノンコ「ほらね。あんた石原裕次郎知らないでしょ。昔の大スター。小樽には石原裕次郎記念館もあったのよ。今は誰も行かなくなってなくなっちゃった。久美子ちゃんはそういうことを気にしているの」
あすか「東京にすごい執着してるからな久美子ちゃん。小樽に不満あるなら北海道広いんだからいくらでも素敵なところあるだろうに。せっかく北のロマンあふれる大地に生まれたのにさー」
ノンコ「ま、久美子ちゃんもないものねだりなのよ。私も小樽時代は雪かきしか思い出せないわ。札幌まで近いわけじゃないし、お祖母ちゃんも当時はお金持ちじゃなかったし、子供の頃あんまり遊ぶところなかったから気持ち分からないわけじゃないけど。丸井今井なくなっちゃったのよねー。あれ痛いわ。札幌にはまだあるはずだけど」
あすか「北海道出身ってカッコイイのに」
ノンコ「あんたこっちで生まれたから東京のありがたみ分かんないのよ。お母さんこっち出てきて毎日、刺激だらけで、勉強なんて落ち着いて出来ないわーって思ったわよ。あすかちゃんと宝塚劇場行ったり浅草のほおずき市行ったり、楽しかったわ。方向音痴がうちの家系の特徴じゃなければきっともっと楽しかったと思うわ」
あすか「そりゃ色々便利だけど…私まだ札幌の雪祭り行ってない~。お母さん、休み取れたら連れてってよ」
ノンコ「冬の北海道なめたら大変よ。寒いわよ」
あすか「お母さんだって北海道で生まれたんでしょ。寒いの慣れてるでしょ。それに小樽より札幌のほうが少しは暖かいんじゃない?」
ノンコ「北海道じゃね、家の中にでっかいストーブ置いて、すっごく暑くしておくの。こたつとかはないの。窓は二重になってて、防寒完璧なのよ。家の中なら東京のほうが寒いわ。だから外は防寒着で歩いても家の中じゃTシャツ一枚とかザラなの。だから北海道人は寒がりなのよ」
あすか「お母さんも?」
ノンコ「そう。お母さんも向こう寒いんだからあんたが行ったってきっと震え上がって雪祭り見るどころじゃないわよ」
あすか「なんで自分のふるさと貶めるの?」
ノンコ「お母さん、こっちに出てきちゃったからね。おばあちゃんもこっちに来ちゃったし、東京に慣れちゃったのよ。北海道でうまれてそのまま結婚したとき、明治生まれの大姑に洗濯機使わせてもらえなくて、真冬にたらいに水張って手洗いで洗濯させられたの。その時の寒さと凍傷になったときの痛み悲しみ想像出来る?」
あすか「うーん」
あすか「それは大姑さんの性格でしょ?ふるさとそのものとは関係ないと思うけど」
ノンコ「お母さんの中では、全部ひっくるめて言葉では言い表せないつらさになっちゃったわね」
あすか「そっか。じゃお母さんのふるさとはひとりで観に行くよ」
ノンコ「そうして。あんたには久美子ちゃんやお母さんの気持ちは分からないわね」
あすか「残念ながら、私はこの辺は楽観的なんだよ。たくさんの観光客が来て、たくさんの名所があって、夏涼しくて、ゴッキーいなくて素敵なところだよ。それでいいじゃない」
ノンコ「ま、久美子ちゃんとはせいぜい仲良くね。自分の気持ちばっかり押しつけないのよ」
あすか「それは久美子ちゃんのほうにこそ言ってよ」
ノンコ「それであんた飛行機恐怖症で、海底トンネルも苦手で船酔いでどうやって北海道行くの?」
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言うは易く行うは難し。
私の本籍はいまだに小樽にあります。
北のロマンは今でもハートに輝き続けているのですが…。
飛行機恐くて海底トンネル恐くて、青函連絡船なくなって、こりゃもう橋でも架けてもらわないと…。
今回ローカルネタですみません。分かんない人にはサッパリですよね。
「よしかかる」つい最近まで標準語だと思ってました。
今住んでるところでそれ言ってるのはうちだけと気づいたのは最近です。




