あすなろ塾物語(6)
T君事件。
悲しい事件だ。
ある日のこと。いつものように授業を受けていると、どこからともなく変な音が聞こえてきた。
静まり返る教室。
ブブブッ。ブリー。
もしや?
ほどなく漂う悪臭。
誰かが叫んだ。「うわぁー。こいつウンコもらしとるー!」
張本人はT君だった。
あまり目立たない、おとなしい子だ。
T君はうつむいたまま、教室をあとにした。
小学生は半ズボンだ。
教室の床には、T君の残したモノが、黄 土色に堆積していた。
それから。
T君はその事件以来、塾に姿を見せなくなった。
すこし遠方から塾に通っていたT君はいつも親の迎えが来ていた。
塾が終わる時間には、塾のあるビルの下に生徒が一挙に出てくる。
その時に、T君はどこからともなく現れ、何事もなかったように迎えにきた親と合流して消えていった。
悪ガキの多い塾の連中も、このことを指摘するものはいなかった。
そんな状況がしばらく続き、そのうちT君は本当に姿を見せなくなった。
(以上、プロジェクトX風に)