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(1)の続き。
「自分は魔物として王女を襲った。だから、魔物としてこの国を滅ぼしてしまえばいい」と考えたのです。
怒りの衝動に身を任せた騎士は、城にいる人々すべてを襲い始めました。
出会う人すべてを傷つけ、殺したのです。
騎士が大暴れしたことで、国はたった数週間で誰一人としていなくなりました。
そうして、騎士の故郷はなくなってしまったのです。
国を滅ぼした騎士の中は空っぽでした。
どうしてこんなことになってしまったのだろうと考えることも時にはありましたが、何も答えは出ませんでした。
国を滅ぼした魔物となった騎士の噂は瞬く間に全世界に広がりました。
そして、多くの人間が魔物となった騎士を殺そうと昼夜問わず襲ってきたのです。
魔物となった騎士は、眠らずに戦い続けました。
その中で、ひとつの思いが芽生えていました。
自分を殺してほしい。
と。
しかし、その思いは通じませんでした。
自分よりも強い人間がいなかったのです。
魔物となった騎士は思いました。
早く殺してくれと。
この苦しみから解放してくれと。
そんなことが数年続いた後、魔物となった騎士の前に、ある人間が現れました。
騎士は目を疑いました。
その人間は自分が愛した王女の姿そのものだったのです。
騎士は狼狽し、数十年前の思いを思い出しました。
目の前に現れた女性は、魔物となった騎士にこう言いました。
「あなたを苦しみから解放しにきました」
と。
騎士はその言葉に対し、
「なにをいうか。お前に俺が救えるのか」
と声を荒げます。
女性は切り替えします。
「救うことはできます。私はそのために生まれてきたのだから」
と。
魔物となった騎士の心は一瞬その言葉に揺るがされましたが、以前に裏切られた記憶が邪魔をして、素直に「救ってほしい」と言葉にできませんでした。
そして、魔物は「この女性は王女じゃない」と思いを断ち切り、女性に襲い掛かったのです。女性の肩に魔物の姿となった騎士がかじりつきました。
その瞬間、女性は魔物へと変貌しました。
そして、その魔物は、魔物となった騎士よりもどんどん大きくなっていったのです。
魔物となった騎士は、魔物となった女性に投げ飛ばされました。
魔物となった女性の姿は、騎士にとってあまりにおぞましかったため、魔物となった騎士は逃げ出そうとしました。
しかし、魔物となった女性は、魔物となった騎士を逃がすことはしませんでした。
魔物となった女性は、片手で魔物のなった騎士を持ち上げ、こう言ったのです。
「あなたの怒りや苦しみ、辛さはこんなものです。私はもっと辛い思いをしてきた」
と。
そして、魔物となった女性は、魔物となった騎士の頭にかじりついて食べ始めました。
食べられながらも騎士は色んなことを思い出していました。自分が愛した王女のこと。自分が傷つけ、殺してきた人々のこと。
そして、最後に気づいたのです。
自分より大きく、激しい痛みや苦しみによって魔物になった人間がこの世界に無数にいるということを知りました。
魔物となった騎士は、魔物となった女性に食べられてしまいました。
魔物となった女性はつぶやきました。
「自分で感じた痛みの美味さに比べたら、他人の痛みや苦しみの味ほどまずいものはない」と。
終わり