童話を書くのは、人生を振り返るのに良いらしい。
『騎士と王女』
昔、ある国にとても勇敢な騎士がいました。
騎士は、その国を治めている王女に忠誠を誓っていました。王女も騎士を信頼し、騎士はいつも王女の側にいました。
騎士は、「王女のためなら、命も捨てる覚悟だ」と言っていました。その誓いを王女に表すために、軍を指揮して、命を張って領土を広げることもしました。
しかし、いつの間にか騎士の思いは、忠誠から愛に変わっていたのです。
愛に目覚めた騎士は、どんな手段を使っても領土を広げることにしました。血にまみれて城に帰ってきたこともありました。しかし、王女はそんな騎士の姿を見て、顔は笑顔でも、心の中では騎士を恐れていたのです。いつからか「王女のために」と帰ってくる騎士を、避けるようになっていました。
そして、騎士の思いを断ち切らせるために、王女は隣国の王子と結婚してしまうのでした。
騎士は、その話を聞いて大変に落ち込みました。しかし「王女のためだ」と、笑顔で過ごしていたのです。それから数ヶ月、騎士は王女の下で過ごしましたが、いつからか騎士の王女に対する愛情は少しずつ自分の欲望に変わり、いつの日か憎しみへと変わっていました。
その憎しみの思いを恥じた騎士は、城を去ったのです。城を去った騎士は、傭兵として暮らすことになり、騎士の時代とはかけ離れた生活を送っていました。
その後、戦争で武勲をあげた傭兵となった騎士は、傭兵隊長に出世し、いつのまにか別の国の騎士となっていました。
その国では、王女がいた国とは遠く離れていたため、騎士のことを知る者はいませんでした。しかし、騎士にとっては過去を思い出さないため、好都合だったのです。
騎士のいる国の王はとても寛大で、騎士もいつしか「この国のために」と、思うようになっていました。
騎士の働きもあり、領土はすぐに広がっていき、国は豊かになっていきました。 騎士の階級も昇格し、一つの軍の指揮を任せられるようになるほどでした。それから、数年の時がたちました。
騎士のいる国は、大陸一の王国にまで発展していました。
騎士はある日、西の彼方の王国の噂を耳にしたのです。
それは、騎士の母国であり、王女のいる国でした。母国では、騎士が去った後、王の統治が悪く、大変なことになっているという噂だったのです。騎士はその噂を無視しようとしましたが、日が経つにつれて、王女への思いを思い出していました。そして、変装をして母国に帰還することにしたのです。
母国に帰還すると、騎士が想像した以上に国は荒廃していました。盗賊や野盗が街中のいたるところで暴れまわっているという有様だったのです。
国の人間に話を聞いたところ、すでに結婚していた王は死に、王女一人で国を統治しているとのことでした。
騎士は、すぐさま城に駆けつけ、王女に謁見しました。王女の顔はやつれ、騎士の姿を見た王女は、騎士にすがり付いてきたのです。
そして、「国を救ってください」と懇願しました。
騎士はすでに別の王に仕えている身のため迷いましたが、「数ヶ月なら」と、王女の申し出を受けました。
騎士が軍を指揮して、国中の盗賊を駆逐し、敵国から領土を守ると、国は瞬く間に復興していきました。王女も次第に笑顔を取り戻していきました。そのときには、騎士の王女に対する忠誠は、以前より増したものになっていました。
ですが、王女は騎士が戦っている間に、領土を維持するために、隣国の王と婚約していたのです。
その話を聞いた騎士は心が砕け散ったような感覚に教われました。
「この数年間はなんだったのだろう」と。
そして、数年前の憎しみを思い出し、一気にあふれ出したのです。
騎士は、その憎しみを止めようと必死に抑えましたが、抑え切れませんでした。
そして、騎士はある衝動に駆られていました。真夜中に王女の部屋に忍び込んだ騎士は、眠っている王女の胸に剣を突き刺し、殺してしまったのです。
その瞬間、騎士の身体は熱を発したように暑くなり、大きくなっていきました。騎士の着ていた鎧は壊れ、壊れた鎧の間からは獣のような毛が覗いていました。
騎士は、王女の部屋にある鏡で自分自身を見ると、そこには、大きな獣の姿をした魔物がいたのです。
その時、騎士は気づきました。
王女に対する憎しみや恨みのあまり、自分が魔物になっていることに。
魔物となってしまった騎士は、王女の部屋からは出ることはできません。
大きな身体では、部屋に隠れることもできません。
朝になれば、王女を迎えに来る侍女に気づかれ、衛兵に囲まれてしまいます。
騎士は悩みました。
そして、騎士は答えを出しました。
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