サッカーは観ないつもりでしたが、久しぶりに観たJリーグの試合が面白かったのでマッチレポートを書きました。
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"賢攻"とパスサッカーの競演
シュート42本が飛び交うスペクタクル
J1リーグ第1ステージ第6節
ベガルタ仙台2-3川崎フロンターレ
【得点者】<仙台>ウィルソン(28分)、多々良(80分)
<川崎>小林(70分)、レナト(72分)、大久保(86分)
「堅守"賢攻"」の浸透で無敗の仙台
仙台は2013年シーズン限りで6年間チームを率いた現・U22日本代表の手倉森誠監督が退任。昨季はその長期政権後の歪みをもろに受けて低迷。手倉森監督の後を受けたグラハム・アーノルド監督はJリーグのサンフレッチェ広島でのプレー経験があり、監督しても豪州代表や国内リーグでリーグ優勝の実績がある実力派でしたが、新たに導入した豪州流のポゼッションサッカーが堅守速攻型のチームに全く根付かず、開幕から公式戦8戦未勝利のまま早期解任。後任には手倉森政権下から長年コーチを務めていた渡邊晋監督が昇格して就任。前体制で培った部分に原点回帰してチームを軌道修正し、最終的には残り1試合までJ1残留が決まらずに14位に終わったものの、ブラジルW杯前の4連勝でJ2降格圏を脱出してからは1度も降格圏に沈むことなくシーズンを終える見事な"リリーフ"を見せました。
しかし、昨シーズン終了後、FW赤嶺真吾がガンバ大阪、MF太田吉彰が古巣・ジュビロ磐田。攻守の要であるMF角田誠までが、この日対戦する川崎フロンターレへ移籍。2011年のJ1リーグ4位、2012年の同2位という2011年3月11日に起きた東日本大震災の直後からピッチ内外で大活躍してきた主力選手が大量に他クラブに移籍にしまい、今季は降格争いも予想されていました。そもそも昨季もリーグワースト3位だった35得点というチームとしての得点力不足という慢性的な積年の課題も深刻でした。それまではオーソドックスな<4-4-2>のシステムを組み、2011年にはリーグ最少失点も記録した堅守を武器に、FW赤嶺&ウィルソンという強力な2トップの決定力を活かすためのカウンターやサイド攻撃からのクロスを多用するシンプルな攻撃が多く見られました。即興性も高く、実効性の高い攻撃パターンではありましたが、個人技で打開できるウィルソンが負傷すると機能しなくなる限界も感じさせていたのです。
そこで渡邊監督は、今季から「堅守速攻」ではなく「堅守"賢攻"」と名付け、堅守をベースにするのは前提であるものの、状況や時間帯、駆け引きに対応しながら攻撃の方法を変えるような組織的な攻撃パターンを構築。実に、"賢く攻める"スタイルを導入しています。具体的にはカウンターでフィニッシュにまで活ききれない際にはキープしてチーム全体で押し上げてポゼッションをしたり、サイド攻撃からはクロスだけでなく"3人目の動き"とワンタッチパスを絡めてエリア内へ2列目、3列目の選手が飛び込んでいくような遅攻もできるようなスタイルですが、攻撃パターンを選択する賢さが重要です。戦術を叩き込むというよりも、ガイドラインを渡して選手がその途度判断して戦うというイメージでしょうか?
現状は相手のサイドバックが上がった裏を突いたスペースで起点を作ったり、高い位置でのスローインから密集を作ってワンタッチパスの連続を繰り出すような現実的な遅攻が多いですが、それでもエリア内に多くの選手が飛び込んでいるフィニッシュの局面の迫力は以前とは別格です。
その効果もあって、仙台はJ1リーグ開幕から5戦を2勝3分の無敗でリーグ4位と好調。昨季J1リーグにぎりぎりで残留し、その上に主力まで大量に引き抜かれたチームとは思えないポジティヴな変化です。この日は、ここ2年ほどで「J1で最も美しいサッカーをする」川崎フロンターレの攻撃的なパスサッカーと対決する事で、仙台の攻撃力の程が試されました。
賢く攻める仙台がゲームプラン通り先制
その川崎をホームのユアテック仙台に迎えた仙台。ボールはJ1トップのパス数や成功率、ボール支配率を誇る川崎に支配されたものの、実に状況判断に長けた選手達がゲームプランを着実に遂行したような賢い試合運びを見せました。
そして、機を見て攻撃を仕掛ける時には人数をかける"賢攻"は実りました。28分、仙台MF野沢拓也が左足でスルーパスのような低いクロスをゴール前に供給。コレにFW奥埜博亮とMF富田晋伍が飛び込み、相手DFが懸命に戻ってゴールライン際でクリアしたものの、詰めていたFWウィルソンがこぼれ球を押し込んで仙台が先制。1-0。
川崎は3バックの右に入っている武岡優斗がアタッキングサードまで攻め上がって攻撃を仕掛け、シュート性のクロスに仙台のDFがあわやオウンゴールの場面など鋭い攻撃があったものの、ボールを保持している割には決定機が作れず、前半は仙台の1点リードで折り返しました。
選手交代とシステム変更で蘇った川崎
しかし、後半から川崎は武岡に替えて、昨季はJ2の松本山雅で19得点を挙げてチームのJ1初昇格の偉業達成に大きく貢献したFW船山貴之を投入。同時にシステムをスタートから採用した<3-4-3>から<4-4-2>へ変更。これで前半はサイドでポジションが重なって窮屈なプレーがあったエウシーニョ、レナトという個人技に長けるサイドアタッカーもスぺ―スを得て持ち味を出す事に成功します。
レナトとエウシーニョがサイドを抉って"縦"を制し、中央では中村憲剛と大島僚太の新旧司令塔コンビが緩急自在のパス交換で"横"を制していく川崎の後半からの攻撃は非常に魅力的でした。観ていてウットリする面白いサッカーへのさらなるアクセントとなったのは、負傷からの復帰で63分に投入された日本代表FW小林悠。
「パスやドリブルにメッセージがある」上記の攻撃陣とは異なり、「動きにメッセージがある」小林は70分、中村が縦パスを入れてエウシーニョがバイタルで落としたボールから引いていたFW大久保嘉人がスルーパス。中央でのテンポの良いパスワークが続く間に右サイドMFとして投入された小林はサイドから中央へダイアゴナル(斜め)に走り込んでゴール前へ侵入。大久保からの絶妙なスルーパスを受けると、懸命に戻る仙台DFのスライディングをキックフェイントであっさりと交わし、左足で流し込んで1-1。
同点に追いついた川崎は続く72分、再び前線から引いて来た大久保が大島から横パスを受け、ノールック気味に相手DFの意表を突き、縦を破ったレナトに最上級のスルーパス。レナトが冷静に流し込んで決めた川崎が一気に逆転。1-2。
称賛されるべきスペクタクルの競演
しかし、リードされた"賢攻"仙台はリスクを負って前に出ます。エリア内のウィルソンへのパスが通り、その折り返しを梁勇基のヘッドがゴールを襲う決定機を作り、そして80分でした。左サイドからパスを繋ぎ、エリア内への浮き球のパスを、奥埜が"ヒールボレー・フリック"。エリア内左サイドでフリーだったウィルソンへ渡り、彼のクロスがバウンドして流れたボールに、右SBの多々良敦斗がダイレクトで右足を一閃したシュートがゴールに突き刺さり、2-2の同点に。この場面、ぺナルティエリア内にはゴールを決めた多々良含めて6人もが侵入しているという攻撃の迫力は新たな仙台のサッカーを見せたと言えます。仙台の攻撃の組み立て方も見事でしたが、川崎はその迫力に負けたという感覚だったと思います。
ただし、同点にされた川崎は後半に入って縦へのドリブル突破から躍動感を取り戻していたレナトが、個人技をチームプレーと勝利へ落とし込む決定的な仕事を連発。そして86分、前方にスペースが出来ているのを確認した上で中盤からパスを受けたレナトが左サイドで縦勝負のドリブル突破。ゴール前へ詰めた川崎攻撃陣を確認したレナトはグランダーのシュート性クロスを選択し、大久保が流し込んで2-3と川崎が勝ち越して勝利。結局、最終的には2年連続J1リーグ得点王が2アシストの後に自身で決勝ゴールを決める役者ぶりを見せた試合で川崎が逆転勝利。
川崎の個と組織の両方の要素が混じり合った攻撃は観衆を魅了しました。
しかし、敗れたとはいえ、仙台の攻撃の迫力はシュート20本という数字にも表れている通り、確実に成果が出ていますし、観ている人々の心を打つプレーを続けています。この日は川崎も22本のシュートを放ち、両チーム合わせて42本のシュートが飛び交う熱戦でした。お互いがお互いを刺激し合って攻撃姿勢が引き出されたとも言えます。近年は1試合10本もシュートが放てないチームが多いJリーグにあって、この試合で両チームが魅せたパフォーマンスは称賛に値すると言えます。どちらにも勝点をあげたい試合でした。
"ファンタスティック6"だけではない
代表レベルの激しいポジション争い
昨季は当ブログで中盤から前線までの大島・中村・レナト・大久保・小林・森谷賢太郎の6人を"ファンタスティック6"と表現していて、彼等の高いテクニックを活かした流動的で華麗な攻撃の連携は、逆にそれが悪い方向にも出て、「この6人でないと出来ない」、ことから選手層の薄さや終盤戦での疲労蓄積、負傷者続出という悪循環も招き、夏まではリーグでも首位に立つ時期もありながら失速。リーグ戦は最終的に6位に終わりました。
しかし、この日にJ1デビューとなったFW船山はオプションとして逆転勝利に貢献し、現在は負傷中ながらも、セレッソ大阪から新加入のFW杉本健勇はすでに第4節のアルビレックス新潟戦で初ゴールとアシストも記録し、彼等新加入FWが"ファンタスティック6"だけではない新たな要素で、確実にチームの攻撃にプラスアルファをもたらしています。
特に187cmながらスピードと突破力を兼備して多彩な攻撃を仕掛けられる杉本はすでに先発起用でも川崎の攻撃サッカーにフィットしている姿を見せているので楽しみです。ポテンシャル的には今後の日本代表への招集も期待したいので、彼の負傷からの回復を待ちつつ、出遅れていた小林が奮起する事で、大久保・小林・杉本・レナトという代表レベルのポジション争いで今後は選手層が昨季よりも飛躍的に分厚くなるでしょう。楽しみです。あとは・・何となく角田が久しぶりのセンターバックというポジションでの役割がどうなのか?というところでしょう。
ドレッシングルームはこんな感じだったらしいですが(笑)
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新アンケート実施
「今季のジュビロへ期待する事は!?」
と言う事で、このたび新しいアンケートを作成しました。ズバリ、昨季J1昇格を果たせなかったジュビロ磐田へ期待している事です。名波さんの連載をして来ましたので、ジュビロサポーターではない方もご協力下されば幸いです。選択肢にない場合は【その他】を選んでいただき、【コメント欄】に記入をお願い致します。興味深い集計になると思いますのでご参加お願い致します。
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