1月9日に開幕したアジアカップ2015オーストラリア大会もいよいよ決勝戦。ヒロゴラでは日本代表の敗退後も、グループリーグも東アジア勢が強さを見せたA組(豪州・韓国・クウェート・オマーン)とB組(韓国・ウズベキスタン・北朝鮮・サウジアラビア)編や、日本以外は中東勢となり、日本にとっては"中東包囲網"となったC組(イラン・UAE・バーレーン・カタール)とD組(日本・イラク・パレスチナ・ヨルダン)編、そして準々決勝、準決勝と総括記事を書き綴って来ました。
また、決勝前には大会のベストイレブンを選出したり、MVP投票も作りましたのでご閲覧の上、ご参加ください。という事で、今回は昨日行われた決勝のマッチレポートです。
日程に恵まれた2強による順当な決勝戦
最多得点の豪州、5試合連続無失点の韓国
今大会は準々決勝でブラジルW杯に出場したイランと日本の2ヶ国が敗退する波乱があったものの、それが同じくブラジルW杯出場の豪州と韓国の順当な決勝進出を演出しました。
ここまで開催国の豪州は5試合で12得点2失点。得点者が10人にも振り分けられているという"どこからでも得点がとれる攻撃サッカー"を披露。対する韓国はその開催国と同じグループAに入って、その豪州を1-0で下してグループAを首位通過。ここまで5試合を7得点とはいえ、未だ無失点を続けている堅守で大会を勝ちあがって来ました。
決勝に進出した韓国・豪州は日程面での有利があったとはいえ、彼等にとっては準決勝が最も楽に勝利できたのでは?と思えるほどの余裕ぶり。特に準決勝第1試合の韓国VSイラク。本来は開催国の豪州がA組首位通過に入って辿るポットに入った韓国。彼等は決勝まで相手国より相当に有利な状態で試合を迎えられます。イラクが準々決勝も準決勝も中2日の超強行日程だったのに対して、韓国は同中4日・中3日です。これはグループリーグの3試合で負傷者と体調不良者が続出し、毎試合のように先発メンバーの半分を変更して戦って来た韓国には大いに助かった事でしょう。
韓国は決勝へ向けても豪州より休養が1日多いだけでなく、開催地が準決勝からシドニーなので移動する負担もありません。開催国優遇のスケジュールに入り込んだのは、すでに消化試合化していたグループリーグ最終戦の豪州VS韓国で韓国が勝利した事。この勝利が決勝まで多分に優位性を保っています。日程は下記表をご参照ください。
決勝トーナメント直前以降の日程 | ||
日付 | 試合日程 | ベスト8進出国 |
1月17日 | A組最終節 | 韓国・豪州 |
1月18日 | B組最終節 | 中国・ウズベキスタン |
1月19日 | C組最終節 | イラン・UAE |
1月20日 | D組最終節 | 日本・イラク |
1月21日 | ||
1月22日 | 準々決勝 | 韓国VSウズベキスタン 中国VS豪州 |
1月23日 | 準々決勝 | イランVSイラク 日本 VS UAE |
1月24日 | ||
1月25日 | ||
1月26日 | 準決勝 | 韓国 VS イラク |
1月27日 | 準決勝 | 豪州 VS UAE |
1月28日 | ||
1月29日 | ||
1月30日 | 3位決定戦 | イラク VS UAE |
1月31日 | 🏆決勝 | 韓国VS豪州 |
※赤字はA組通過、青字は過酷すぎるイラク
組み合わせ抽選が決まった時から決まっているとはいえ、イラクにはあまりにも厳しい日程です。日本も厳しい日程でしたが、イラクほどではないので・・・日程以外に敗因を定めた方が良い言えます。敗因は別稿にて述べておりますので参照ください。
→「ベスト8敗退の日本。敗因は?」
http://ameblo.jp/venger/entry-11981121014.html
[アジアカップ決勝マッチレポート]
韓国<A組1位>1ー2豪州<A組2位>
得点者【韓国】ソン・フンミン(90+1分)
【豪州】ルオンゴ(45分)、トロイ―ジ(105分)
肉弾戦が続く激しい序盤を経て
開催国が巧みな試合運びで先制
2強が日程の有利や総合力を見せつけて順当に決勝まで勝ち上がってきた決勝戦。シドニー五輪決勝でも使用された収容人数8万人のスタジアムはチケット完売。満員の観客が詰め掛け、開催国・豪州を大きくサポート。グループリーグでも両国は対戦しておりますが、その試合では両国ともに準々決勝進出が決定していた消化試合だったため、豪州はティム・ケーヒル、ロビー・クルーゼ、マシュー・レッキーの強力3トップが温存、韓国は野戦病院状態でチーム編成に苦心していた事もあって盛り上がりには欠けました。その意味では両国共にベストメンバーをぶつけて来たこの決勝は"再戦"の意味合いは全くありませんでした。
この決勝に挑むにあたり、韓国は準決勝から先発メンバーを1人変更。豪州の攻撃力を警戒してか?守備的MFチャン・ヒョンスを先発起用し、それまで守備的MFだったパク・チュホを左サイドMF、ソン・フンミンは左サイドから右サイドMFに回る<4-2-3-1>のシステムでスタート。豪州は準決勝と全く同じ先発メンバーで挑み、自分達が主導権を握るための<4-3-3>でスタートしました。
試合の方は決勝独特の緊張感が漂い、集中力の高い試合の入りになりました。しかし、"慎重"ではなく、両国のシステムがピッチ上でちょうどマンツーマンで噛み合うマッチアップを生んでいたため、ゴツゴツという生音が聞こえてきそうな激しい肉弾戦に。開始早々からピッチに倒れる両チームの選手が続出しました。
そんな激しい肉弾戦による寄せの速い試合展開では得点の機会はセットプレーに限られそうなもの。
8分、豪州の主将MFミレ・ジェディナックの直接FKが僅かに外れるという惜しい場面。韓国にも24分に、主将MFキ・ソンヨンの左サイドからのFKにニアへフリーで飛び込んだカク・テヒのヘディングシュートが外れるという場面。流れの中からでは豪州は23分にマーク・ミリガンの長いスルーパスに右サイドを抜け出したクルーゼのグランダークロスをに、DFをブロックしながら放ったケーヒルの枠内シュートが無失点を続ける韓国の守護神GKキム・ジンヒョンにセーブされた場面くらいでした。
しかし、先発メンバーの選考からも専守防衛で入った韓国が徐々に攻勢に転じてからは迫力も増してエンタテイメント性も増した試合展開になりました。37分、左サイドに流れたキ・ソンヨンが内側を駆け上がったキム・ジンスへパス。ゴールライン際まで持ち込んでの浮き球の折り返しをソン・フンミンがヘッドで合わせるも外れ・・・・。その1分後には右サイドのスローインからの繋ぎで抜け出したチャ・ドゥリがショートクロス。フリーのソン・フンミンが狙ったシュートは豪州MFマッシモ・ルオンゴの懸命なブロックに遭遇。43分にはキ・ソンヨンの至近距離からの直接FKがGKの正面に飛んで得点ならずの状況。
そうこうしていると前半終了間際の45分でした。豪州の後方でのパス回しから、ヒロゴラ一押しのCBトレント・セインズベリーが鋭い縦パス。バイタルエリアで韓国選手の間で受けたルオンゴが巧みなトラップで相手を交わし、そのまま右足で放った強烈なミドルシュートが無失点を続ける韓国のゴールネットに突き刺さって開催国・豪州が先制。0-1。
満員の会場を埋め尽くす開催国サポーターのボルテージも最高潮な中、巧みな試合運びから韓国の無失点記録を破り、豪州が1点リードで前半を折り返しました。
韓国も現実的な試合運びで戦略通りに同点劇
豪州は負傷者続出とファウルトラブルで苦しく・・・
後半に入っても試合の主導権を握るのはリードしている豪州。韓国は勝負所までは1点差で持ちこたえようと耐える戦いをしながら、個人で打開できるソン・フンミンの突破にだけは仕掛けさせるという現実的アプローチをとっていたように思います。両国共に選手交代もなく、59分に韓国はセットプレーからカク・テヒのヘッドがGK正面。60分には豪州のレッキーが左サイドから抜け出しての強烈なシュートもGKのセーブに遭い、そのシュートで得た右CKからセインズベリーが高い打点から叩いたヘディングシュートも外れ、豪州が追加点を挙げられず。
するとこの時間帯から豪州に怪しい雰囲気が漂い始めます。64分に開催国の英雄FWケーヒルが負傷もあって交代に。また、前半からDFラインに出されていた2枚の警告の数が5枚まで増え、その5枚を4バック+アンカーの中ではCBのセインズベリー以外の4人が警告を受けていました。さらに悪事は重なる事で、連戦の疲労からか?71分にクルーゼ、74分には右SBフランジッチが相次いで負傷交代となってしまいました。これにより、豪州はまだリードしているものの、交代枠3枚を全て使い切ってしまうことに。
韓国は64分にエースFWソン・フンミンに並ぶ打開力があるFWイ・グノ、72分にはハン・クギョンとJリーグ経験者の2人をピッチに投入。それでも豪州は大会を通して安定感を保つCBセインズベリーや、エリア外へも積極的に飛び出して相手の攻撃を防ぐGKマシュー・ライアンの存在もあり、コンパクトで連携の行き届いた組織的な守備による巧みな試合運びで勝利へ近づいていました。
ただし、カウンターの好機に高いインテンシテイの試合に入り切れていない途中出場のFWトミ・ユーリッチ(ウエスタン・シドニーのACL優勝立役者)がシュートが遅かったり、逆にシュートの場面までは果敢に持ち込むものの、疲労困憊でレッキーがフィニッシュでもたつくことがあり、追加点という最も重要な部分が足りていませんでした。
そして87分、後がなくなった韓国は最前線のFWイ・ジョンヒョプに替えて、CBのキム・ジュヨンを投入し、空中戦に滅法強いCBカク・テヒを最前線に上げてパワープレーを敢行。日本の某放送局の解説者がこの采配を批判する中、91分でした。韓国の後方からのロングボールに、そのカク・テヒが競って落とし、ソン・フンミンが懸命にマイボールにし、キ・ソンヨンが前へ繋いだパスを再び受けたエースFWソン・フンミンが自らエリア内へ持ち込むとGKと1対1に。国際大会の決勝の追加タイムという状況に動じず、韓国のエースが冷静に左足で決め、韓国が土壇場で1-1の同点とし、そのまま4年前の決勝と同じく延長戦に。
最後は韓国が満身創痍となって倒れ
豪州が壮絶な決勝戦を制して初優勝
開催国相手に試合終了間際の劇的な同点劇。韓国有利の雰囲気が漂ってスタートされた延長戦でしたが・・・、なんと今度は韓国が疲労による満身創痍な状態に。守備的MFキム・チャンスとパワープレー要員のはずだったCBカク・テヒが続けて足を攣って動けなくなり、本来は守備専門職のはずだった2人が負担軽滅のために最前線に残るという違和感たっぷりの布陣で延長戦を進めなければならない状況になりました。ただ、脚を攣った韓国の2選手の精神力は凄まじく、ボール際の競り合いで激しく寄せて再び痙攣を起こしても最後までファイトし続けていました。
しかし、105分でした。豪州FWユーリッチが右サイドに流れてチャンメイク。倒れたり、もつれながら突破を試みるもキム・ジンスに続き、ソン・フンミンも戻って対応されると思った瞬間でした。ユーリッチが大きな体格を活かして韓国選手2人を割ってゴールライン沿いを突破。グランダーの折り返しは、GKキム・ジンヒョンに弾かれるも、こぼれ球はエリア内に走り込んで来た豪州の途中出場MFジェームズ・トロイ―ジの足下へ。ベテランらしくトロイ―ジが確実にゴールネットを揺らした得点により、遂に豪州が1-2と勝ち越しに成功。前半・後半・延長前半と終了間際にゴールが記録されるシーソーゲームに終止符を打つ決勝点となりました。
満身創痍の韓国はトロイ―ジのゴールで終わった延長前半を経ての延長後半の15分間は再びのパワープレーとイ・グノ&ソン・フンミンの個人技に賭けるも、正直言って試合を進めるだけでも精一杯の状況。それでも終了間際に得点が動くこの試合状況にやや豪州も慎重になったものの、最後は安全に試合を運んでタイムアップ。オセアニアからアジアへのサッカー協会転籍後、3回目の大会でホスト国として大会を主催し、チームも見事に初優勝という最高の結果をピッチ内外で達成。
試合終了後に豪州のアンジ・ポステコグル監督が敗戦のショックで自力で立つ事ができない韓国の選手1人ずつに挨拶をして回る場面も印象的でした。負けた韓国も若い選手が多く、警告を5枚受けた豪州とは相対して警告をもらわないフェアプレーもあり、非常にクリーンで爽やかな印象を残してくれました。
ちなみに大会MVPには、この日の先制点を記録した豪州MFマッシモ・ルオンゴ。得点王には準々決勝の日本戦を含む5得点を記録したUAEのFWアリ・マブフート、最優秀GKには韓国からではなく、豪州GKマシュー・ライアンが選出されました。
【決勝観戦後記】確かなアジアの進化
~日本には相当な危機感が必要
「この決勝に勝者も敗者もない」というウリ・シュティーリケ韓国代表監督の言葉の通り、インテンシティ(プレー強度)が高く、試合の迫力も満載のエンターテイメント性に溢れる素晴らしい決勝戦でした。正直、4年前の決勝とは比べ物にならないほどレベルの高い試合でした。壮絶すぎた試合内容のため、負傷者や痙攣を起こす選手も多発。日程に恵まれた両国でも試合中に多数のアクシデントに見舞われたアジアカップ2015豪州大会。やはり、先発メンバーを固定していくのは日程面で最も厳しいグループDでスタートした日本には限界があったのかもしれません。
しかし、「連覇、連覇」と当たり前のように結果を煽ったものの、ピッチ上のサッカーの質では4年前の優勝は本田圭佑も認めた通り、「まぐれ」でした。そして、今大会決勝で魅せつけられたアジアの頂点を決める戦いの迫力は凄まじいものでした。
日本もPK戦で運があってUAEを下していれば優勝へ向かっていたかもしれません。ただ、それを言うならば4年前の優勝もヨルダンに土壇場で引き分けに持ち込み、シリアとカタールに何とか勝利し、韓国にPK勝ちし、豪州に偶然勝った"だけ"の優勝を、"当たり前"のように捉える兆候の方が危険。UAEがPK戦で日本に勝つよりも、前回大会の日本の優勝の方がもっと偶発度は高かったのが真実でした。それを"史上最強日本代表"と煽ってブラジルW杯惨敗を喫して挙句、そのメンバーを残し、アジアカップも「連覇が最低ノルマ」としてる時点で相当無理があったと思います。
近年のアジアからのW杯出場国は4.5枠。0.5枠は南米との大陸間プレーオフになることが想定されるためウルグアイなどが回って来ることを考えると、4枠と捉えるべきでしょう。だからこそ、日本はベスト4に入らなければいけなかった。勝てばベスト4となる準々決勝のUAE戦こそが最初の決勝戦だったはずなのに。
クラブレベルではACLベスト8や16が多くなり、下部年代の代表では、U19が世界大会へ行けない事が当たり前になり、U17も昨年はベスト8敗退で世界大会への出場を逃しました。世界を意識していたはずの日本ですが、アジアのベスト4に入れなかったのが真実と現実。これで4年前の優勝が本当に偶然なら、日本サッカーは本当に危機です。"勘違い"する事が悪い事ばかりではありませんが、今の日本サッカーは"勘違いし過ぎ"ではないでしょうか?または「裸の王様」なのかもしれませんね。
以上、ヒロゴラでは日本代表の敗退後も、世代交代に着手した国が躍進する今大会は興味深いと捉えて書き綴っています。大会の総括記事をあと1つ書きたいと思います。ベストイレブンも少し変更したいと思いますので、読者の皆様よろしくお願い致します。
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ヒロゴラ的アンケート実施
「アジアカップMVPは!?」
ヒロゴラでは日本代表の敗退後もアジアカップの模様をお届けしておりますが、その中でベストイレブンを選出致しました。ですが敢えてMVPは選出しておりません。ここは1つ、読者の皆様にご選出いただきたく思います。皆様の試合を観た感想でも、今までのヒロゴラの記事を読んでの感想でも構いませんのでご参加ください。やっぱり大会公式通り、豪州のルオンゴか?それとも3位決定戦のプレーを魅せられるとオマルでしょうか?
http://blog.with2.net/vote/v/?id=142093
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最後に、"あの"アンケート集計の結果が出ましたので先にURLだけ掲載しておきます。この結果に対しての僕の考えは後日述べさせていただきたいと思います。
http://blog.with2.net/vote/v/?m=va&id=140080
注目記事「アギーレ監督を信じる~八百長ではなくマネーロンダリング」
http://ameblo.jp/venger/entry-11966791493.html
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