「車に積めるサイズがこれが限界なんだよ!」と、友人の小脇に抱えられたPIGは8.6ftのHess(ヘス)であった。
決して、彼は一昔前に流行った?Mini Pigが欲しくてそのサイズを選んだ訳では無い。
彼には上記の様に必然性があって8.6ftのPigを愛機としているのだ。
8.6ft・・・
一見、レングスだけに耳を傾けると、トレンド在りきの様なチョイスに思えるかも知れないが、実は、この8.6ftの長さこそがPigが誕生した1950年代には最高のスペックとされていたのではないだろうか?
勿論、バルサの時代にも10ft近いレングスのPigは存在していた。
しかし、サーファーズの矢作さんの愛機である1959年製のベルジーのPigの長さも同様に8.6ftであった。
(1959年製のベルジーのPig)
Pigの生みの親であるベルジーが新しい時代(フォームの時代)に選んだレングスは8.6ftだったのだ。
同様に、1959年に誕生したばかりのゴードン&スミスからリリースされたPigもレングスは8.6ftだった。
(1959年製のゴードン&スミスのPig)
そして、世界で初めてフォームのボードを完成させたデーブスウィートからリリースされたPigもレングスは8.6ftだった。
(1959年製のデーブスウィートのPig)
1959年がカリフォルニアのサーフィンの夜明けの様な年だからだと云っても、この3レーベルのヴィンテージ全てが8.6ft・・・
これは偶然にしては出来過ぎているのではないだろうか?
ベルジーとジェイコブスが二人でバルサを削っていた時代、サーフボードはその殆どがオーダー品ばかりで吊るしのボードは存在していなかった。
稀に、金持ちがフライングして別の者がオーダーしたボードを横取りするケースはあった様だが、この時代にストックボードが並べられている事は無かった。
しかし、ベンチュラを拠点に活躍するスティーブ・ブロムの話しでは1959年辺りからサーフショップが普及し始め、店頭にストックボードが置かれる様になって行ったと教えてくれた。
実際に、スティーブはサーフショップに「憧れのサーフボード(Pig)」を何度も拝みに行っていたとも語っていた。
広大なカリフォルニア故に例外は多々あるだろうが、当時はこの8.6ftこそがサーフボード(Pig)にとっても最もベストなレングスであったと考えられていたのではないだろうか?
そんな、8.6ftのヴィンテージに、いざ身体を預けてみると・・・
これが実に難しい。
浮力は充分にあるのだが、如何せん、幅が21インチ前後しかなく、レールも丸太の様に太く、ボトムも安定感とは程遠い創り込みとなっている為か?日頃、10ftのボードを愛機としている俺にとっては難し過ぎる。
当時のアメリカ人が今ほど大柄で無いと云っても、このボードをいとも簡単に乗り込なしていたかと思うと非常に考え深いものである。
しかし、リアルに1950年代のサーフィンを楽しみたいのなら、この8.6ftと向き合わなければならないのも事実である。
こうして考えてみると、やはり、サーフィンは奥が深い魔性の水遊びであると思う一方で、大人の男が真剣に取り組むには格好の遊びである事も間違い無いのではなかろうか?
高がサーフボードであるが、されどサーフボードである。
そう考えると、まだまだボードの探求は終わら無さそうである。
Keep Surfing!!!!!