バルサPIGの乗り味 | Viva '60s SurfStyle!!!

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1960年代のカリフォルニアサーフスタイルに心を奪われた男の独り言。

バルサボードに乗る・・・

思えば、ロングボードを始めた頃には思いもしなかった夢の様な話である・・・
 
 
しかし、複数本のボードを所有していても結局乗るボードは限られて来る訳で、こと、近年に至ってはPIGを中心のサーフィンライフになっている事から「どうせだったら・・・」をカタチにした次第である。
 
 
バルサはこれまでも所有して来た訳だが、その殆どが飾りに過ぎなかった。
 
 
実際にワックスアップして海に持ち出したボードもブルース・グラントが削ったデーブ・スウィートとタイラーのZチップのみであった。
それも両手で余る程の数回程度であった。
 
 
2回に渡って書き綴って来たピーターのバルサPIGは、愛機としてピーターとマイクが授けてくれたボードである。
これは宝の持ち腐れにしてしまっては彼らに顔向けも出来なくなる。
 
 
いや、そんな事では無い。
俺自身が長年に渡って思い描いて来たバルサでのサーフィンライフのスタートなのである。
 
 
出番を待つバルサPIGに後輩から「進水式やりましょう!」、「明日は良い波ですよ!」と突然のラブコール。
 
 
既にワックスアップも済ませていた為、フラット4エンジンを搭載する愛車にバルサを積み込み慣れ親しんだいつものビーチへ。
 
 
進水式に花を添えてくれたのか?後輩も愛機であるピーターの'50sPIGを用意していた。
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PIG自体が珍しい様で、周りのサーファー達も「何だあのボードは?」と言わんばかりの表情でボードを見つめているが、流石にバルサだとは思っていない様である。

 
 
揃いで並んだハーフムーン・・・
やはり、バルサPIGの方がやや後方に斜行しているの一目でも判るが、この小さな拘りこそが'50sPIGとバルサPIGの住み分けをしているピーターの真骨頂なのではと感心してしまった。
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そんな事を思いながらバルサを小脇に抱えながらビーチへと向かう足は、どことなく「テンポが速いのでは?」と、感じた程であった。
 
 
重い、重いと云われるバルサだが、実は以前、ランス・カーソンからストリンガーに使う2インチのバルサ材を見せてもらった事があった。
 
 
その感触は「これが木なのか?」と感触を疑う程に軽く、かのライト兄弟が人類初の飛行を成し遂げた機体にもバルサが使われいたのが妙に納得出来た程であった。
 
 
バルサは樹脂を多分に含む性質の木材である様で、その要因があの重さを齎しているのかも知れないが、ヴィンテージPIG等のボードと比べると一際重い訳では無かったが、いざ、海上での一連のアクションをトライしてみると手前の技量だからか?全てのアクションが「1テンポ遅れている事」に気付いたのだ。
 
 
例えば、慣れ親しんだ'50sPIGのフラットロッカーも1テンポ遅れる事によって、どうしてもノーズが海面に刺さってしまう。
また、ターンも同様で、レールを上手く入れる事が出来ない・・・
 
 
全ては俺の技量によるものだと解ってはいるが、何故、1テンポ遅れるのかが判らなかった。
 
 
'50sPIGはカリフォルニア産のモダンPIGと比べるとややライトな仕上がりの為、いつしか、その軽さに身体が慣れて「重さに対する反応が遅れている」のだ気付いた。
 
 
 
ウィークポイントさえ掴めれば、後は慣れしたんだピーターのボードである。
レールさえ波のフェイスに入ってしまえば、PIGだのハーフムーンだのという事を忘れさせてくれる程の軽快な乗り味を堪能出来た。
 
 
実際に後輩にも乗ってもらった所、「確かに重いですけど、慣れればピーターのボードの良さがバルサに詰まっているのが解りますね」と、感想を述べてくれた。
 
 
そして、海から上がり、再び2本のボードを並べながらピーターに感想を告げるべく電話してみた・・・
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「やぁ、ピーター、今日、バルサに乗ったよ!」
「凄く良かった!」
「'50sPIGとは全く乗り味が違う感覚だったけど・・・」
 
と、報告すると・・・
 
「基本のテンプレートは'50sPIGと同じだが、全体的にナローしているから慣れてしまえばバルサの方が動くと思うよ」
 
と、ピーターはご機嫌に返答してくれた。
 
 
ピーターはバルサのデーターが欲しい様で「もっと、沢山乗って、随時報告してくれ!」と、リクエストして来た。
 
 
そして、最後に「そうだ!お前のお蔭でカリフォルニアから3本もバルサのオーダーが入ったよ!」、「そのうちの1本は現在制作中だ!」、「本当にありがとう!」と、俺に感謝の弁を述べてくれた。
 
 
お礼を云うのは俺の方だよ、ピーター。
こんな素晴らしいボードを、しかも、最初に削ったバルサPIGを俺に授けてくれたのだから感謝する方は俺の方だよ。
 
 
日本とオーストラリアは非常に遠く離れている・・・
世に五万といるシェイパーの中には「削りっぱなし」、「売りっぱなし」の者も多く居ると云われている。
 
 
サーファーはシェイパーを尊敬し、自身の想いを伝え上げ、大枚を叩いて理想のボードをオーダーする。
 
 
かつて、ロングボードが黄金時代と云われた1960年代前半・・・
多くのサーファーはベルジーやジェイコブス等を始めとするシェイパー達を尊敬し、彼等もそれらに誠意を持って対応していたとサーフマガジンで読んだ事がある。
 
 
マシンシェイプが主流となる中、シェイパーに求められる資質は単にシェイプが巧いだのサーフィンが上手い等では無くなっている様な気がする。
 
 
思えば、マリブのショッピングモールでランス・カーソンと初めて会った時に「I am Lance Carson」と名乗りながら近づいて来てくれた時と同じ様な親近感をピーターには強く感じる程である。
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ディケールに寄り添う様に飽和する水玉を見詰めながら、ふと、そんな事を思った次第です。
 
 
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