おはようございます、そして会えないときのために、こんにちは、こんばんは^^

 

六回目にして早くも力尽きそうな
RTS IIIです

今回紹介いたしますは
『猫の年』
なる印象的なワードと

アラン・パーソンズの手腕が冴え渡る

ポップ・ソングです


擦られ尽くした感のあるネタですが

そのワードについても

お話をさせていただいております
よろしかったら

お付き合いくださいませ

 

ではでは

 

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-My Favorite Things-

#06

AL STEWART
-Year of The Cat-
1976

(2021 REMASTER)

 

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-音量注意でお願いします-

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アル・スチュワートは英グラスゴー出身で66年にシングルを、翌年にアルバムデビューしたSSWです。本曲は同名タイトル7thに収録されており、アルバムは米で5位、英38位。シングルとしては米ビルボードHOT100にて最高位8位、英シングルチャートでは31位と、主にアメリカ市場での評価が高かったようですね。ジャケットデザインをあのヒプノシスが担当。印象的なイラストはコリン・エルギー(ヒプノシス・チームの一員として、その他の作品にも参加されています)による作です。猫尽くしのアイテムが乱雑に散らかった化粧台と鏡にちらり映る"猫"のメイキャップをした女性の姿。そのビジュアルからミュージカル・キャッツの楽屋の風景を切り取った、一種のオマージュかと勝手に思い込んでいたのですが、キャッツの初演は81年との事。ミュージカルの元となったT・S・エリオットの詩集(キャッツ - ポッサムおじさんの猫とつき合う法)は39年の発表ですが…まぁ、関係はないのかな?むしろキャット・ウーマン的なイメージなのかも知れませんね。プロデュースはアラン・パーソンズ。本作における彼の功績は大きく、英語版wikipediaによると、

 

『彼による洗練されたプロダクションと豊かなアレンジは広く称賛され、87年ころまでは

ハイファイ・デモンストレーション用のレコードとして人気を博した』

 

とあります。前年に発表された"Modern Times"と78年発表の次作"Time Passages"はこのコンビにより制作されており、アル・スチュワートの数ある作品の中でも人気が高いようです。

 

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in The Year of The Cat
猫の年に

 

さて、この曲についてよく語られるのが、上記にあげたワードです。彼の書く詞は具体的な表現の詞が多くを占めています。その中にあって、繰り返し使われるこのワードには、一体どういった意味が込められてるのでしょうか?それとも意味などなく、はぐらかされてるだけ、とか?猫の年ねぇ…十二支って訳でもないしなぁ…と、思いながらちょっと調べて見たところ、wiki

 

フランス、中国の一部、タイ、ベトナム、ロシア、ベラルーシでは兎ではなく猫が割り当てられる

 

とあります。あっさりと判明して、ちょっと肩透かしですね…。西欧圏に十二支に相当するものが存在すること自体も驚きです。どうやらネズミに騙されることなく会議に参加出来たのでしょう。そうなると次なる疑問はこの曲の舞台となった場所です。ヒントが隠れてないか歌詞の冒頭から確認していきますと、上記に上げた国の内の、いずれにも該当しそうな詞はありませんでした。そのかわりに、別の国がその候補に名乗りを上げます。何とその鍵は往年の映画スターと名作と名高い出演作にあるのです。

 

On a Morning from a Bogart Movie

ボガートの映画のような朝

 

まずは一行目です。ここでいう"ボガート"とはハリウッドの大スター、ハンフリー・ボガートの事で間違いないと思われます。ハード・ボイルドの代名詞的存在ですね。世代的にはかなりのズレがある僕でも、その特徴的な煙草の吸い方、煙草を指に"挟む"のではなく、指で"摘む"ボガート・スタイルを真似したものです。なお、現在は健康的、ご時世的理由により喫煙自体をやめています。おかげで御飯やお酒の美味いことw 愛飲してい銘柄が悉く販売中止になったのも理由ですね。

 

You Go Strolling Thtough The Crows Like Peter Lorre

ピーター・ローレのように人混みの中を歩き回る

 

で…次は三行目を見てみましょう。こちらも答えは明白と言えるでしょう。ハンフリー・ボガートと同時期に活躍した個性派俳優、ピーター・ローレその人と思われます。アクの強い役柄が多いようですが、僕的には『海底二万哩(54年)』や『八十日間世界一周(56年)』が印象に残ってますね。そしてこの二人は『マルタの鷹(41年)』と『カサブランカ(42年)』で共演しております。なるほどなるほど、実に良い感じで話が進みますね。で『マルタの鷹』の舞台は米西海岸に位置するサンフランシスコです。一方の『カサブランカ』はモロッコに所在します。

 

如何でしょうか?まぁ、冒頭の歌詞からだけで特定なぞ、ナンセンスの極みだとは思いますが、大目に見てやってください。この僅か二行で候補地が二つにまで、しかもかなり具体的に絞られたのですから。いやいや、はっきりと申せば、モロッコ一択だと思っています。しかし、です。先に触れた大前提でもある『猫の年』を有する国には含まれていませんよね。今一度確認してみましょう。

 

フランス、中国の一部、タイ、ベトナム、ロシア、ベラルーシでは兎ではなく猫が割り当てられる

 

では何を理由に上記の国々と関係のないように思えるモロッコを選んだのか?

それはモロッコの歩んできた歴史にあります。遠い過去の話ではありません。映画が撮影され、公開された42年(映画内の時代設定はその前年の41年)当時、モロッコはフランス領だったのです。映画のストーリーも、ドイツに占領されたフランスによる、親独派のヴィシー政権支配下に置かれたカサブランカにて云々…となります。当時の世界情勢を多分に含み、プロパガンダ要素も備えた映画ともいえます。まぁ難しい事はさておき、ボギー(ボガートの愛称)が"君の瞳に乾杯"とのたまったその時、モロッコはフランスの一部だったわけですね。ちなみに"君の瞳に乾杯"は完全なる意訳で、原語を直訳すると"君を見つめて乾杯"といった感じになるようです。とすれば意訳なれど、かなりの名訳といえますよね。

 

 

さて閑話休題、保護という名の統治は1912年から始まり、二度目の大戦の終了後の56年の独立まで続きました。当時のフランス文化(おそらくはフランスの支配地であったベトナムなどからの影響)が残っている可能性も大いにあるのではないでしょうか。

 


蛇足にはなりますが、上に記した以外にも、

 

in a Country Where They Turn Back Time

時を巻き戻す(ような?)国で

 

モロッコには世界遺産指定地域が九箇所もあり、"時を〜"と表現するにはうってつけかと思います。

 

By The Blue Tiled Walls Near The Market Stalls

市場の屋台近くの青いタイル張りの壁のそば

 

青いタイルといえば、ウズベキスタンのサマルカンド(サマルカンド文化交差路:01年世界遺産登録)を連想する方が多いと思います。一度は訪れてみたい場所ですよね。吉田拓郎さんのサマルカンド・ブルーという曲を思い起こす方も多いと思います。そしてモロッコにも"青"で有名な街があるのを御存知でしょうか?シャウエン(正式にはシェフシャウエン。必見の価値あり)という街です。ただし、歌詞のような"青いタイル張りの壁"ではなく"青い壁"そのものなのですが…。

 

She Comes in Incense and Patchouli

彼女はお香とパチョリで現れた(彼女はパチョリの香りを纏って現れた かな?)

 

続いてはパチョリについて。ざっくり説明すると

 

『インド原産のハーブの一つで、古くから香や香水に用いられるとともに、防虫作用を含んだ性質を活かし、18世紀から19世紀にかけて、中国から中東を結ぶシルクロードで絹を運んだ交易商たちが、絹に衣蛾などの昆虫が卵を産みつけるのを防ぐため、乾燥させたパチョリの葉とともに包んで運んだ』

-wikiより抜粋-

 

とあります。カサブランカを含むモロッコはアフリカ北西部に位置し、シルクロードには含まれてはいません。ですが古くから交易地として栄えており、中国から中東へ、中東からモロッコ、そしてヨーロッパへの窓口の一つとして機能していた事を鑑みればパチョリが広く使われていたとしてもおかしくはないのではないでしょうか。

 

と、若干(かなり)のこじつけ感は否めないものの、このように歌詞の端々にはモロッコを思わせる"ような"描写はあるのですが、どうにも決定力に欠けるような気がします。まさに『猫の年に』とはぐらかされる男の気分ですね。

 

♦♢♦

 

といった感じでどうでしょうか?

 

もちろん異論もあるでしょうし、そもそもからして、これは考察と呼べるようなものでもないですしね。ちょっとしたお遊びと思いください。というのも、厳密にはフランスに"十二支"という概念が根付いているわけではないらしく、"黄道12宮占い"の変形のような立ち位置として存在し、しかも、かならずしも猫がレギュラーとして加わっている訳ではないようなのです。

 

フランス式十二支

鼠、牛、虎、兎(猫)、龍、蛇、馬、山羊、猿、鶏、犬、

 

となっており、地域差なのか何なのか、その由来は調べられませんでしたが『兎』の代わりを『猫』が務めている場合がある、といったような感じのようですね。また、いつの頃から、何処から十二支がフランスに伝わったかも判明しませんでした。個人的には植民地化していたベトナムからの影響だったのでは?と思いますが確証はありません。何気に羊が『山羊』へ、猪が『』へとコンバートしてますね。ひょっとすると、その辺りにフランスへと伝わった時期や場所を解く鍵があるかもしれませんね。

 

 

結局のところ、この曲の舞台となってる『猫の年』の国とは何処なのでしょうね

個人的にはモロッコ説は捨てたくはないのですが、こうまで決定力に欠けると…ねぇ

 

その答えは遥か彼方の時が巻き戻ったような国
パチョリの香りの彼方にあるのかもしれませんね

 

みなさんが思い描く『猫の年』の国とは何処ですか?


最期までお付き合いしてくださってありがとうございます

 

ではでは