詩:下垂する記憶
痩せ細った野犬が吐き出したのは眼球だったどろりと白濁した、それは知っていた箱庭の夜に星月はなく太陽も昇らないことを一秒が螺旋を描く水流だということを泥濘に沈むように脳髄は伸びていることを結晶は反芻する夢にのみ生きることを胎児に握り潰された桜は狂い咲いたことを矛盾する剥離と北極星の幻想曲(ファンタジア)駆け巡る純真に追従する影裏は赫く滴る逆再生の指先が弾くのは過敏症の雨だ過剰な虚飾?呑み込んだブラックホールに撃墜した明日をあげる、吐き戻すほどの光粒子をあげる、破裂するほどの孤独をあげる、安易な物干し竿をあげる、不要な必然性をあげる、宇宙の重力(グラビティ)をあげる、サイケデリックな平凡をあげる、最後尾の精子を、生まれたての剥製を、止まらない心臓を、心臓を、2023.10.23最後かもしれない詩