代々木ゼミナール仙台校に着くと、"Just A Friend"でBlah-blahに会いに行ったBiz Markieよろしく、訪問者カードを書かされた。案内されて着いた下駄箱には、まだ自分の上履きがあった。これを履いていたのはもう8年前になるのか。震災前から変わらずここにあるのだな、と少し感慨深かった。予備校で上履きが必要だったかどうかなんてこの際どうでもいい。

今日ここに来たのは、数学講師の体験授業を受けるよう母に勧められたからだ。講師は受験に向けた心構えを熱く語った後、某大学の過去問を解説し始めた。平面図形で角度を求める問題だったが、板書が汚すぎて何一つ理解できなかった。授業を受けていると一つの疑問が頭を過ぎった。

俺、とっくに受験終わってないか?

解説がある程度進むと、前のほうに座っていた女の子が当てられ、求める角度を答えさせられた。見事正解し、授業は終了。帰り際、その講師に声を掛けられた。

「君は今年受験なの?」

「いえ、もう受験は終わったんですけど…」

「そっか、ここに通ってた?」

「いや、僕、K(河合塾)のほうに行ってまして…」

「そうかぁ、あの頃はちょうど抗争があったからなぁ」

抗争?そんなの知らないんですが。何ですかそのCrips対Bloods的なのは?それはそうと、代ゼミはトイレが綺麗なのでたまに自習に来てました。

帰り際、廊下にふと目をやると、先ほどの数学講師がホバーボードに乗って移動していた。最近の予備校講師はホバーボードに乗るのか。いいと思います。

代ゼミ仙台校から出ると、意外にも家に近かったので歩いて帰った。正確にいえば、とても懐かしかったので、代ゼミ仙台校1階の参考書売場に行きたかったのが、見つけられなかったのだ。家に帰って着替えると、やはりどうしてもその参考書売場に行きたくなり、家の近くでバイクタクシーを拾って仙台駅へと向かった。バイクタクシーに乗っている途中、代ゼミで回収した上履きの入ったビニール袋を落としてしまったがために、降りてから定禅寺通りを裸足で走らなければならなかったのは不覚だった。昨日雨が降ったせいもあって、道路は所々スリッピーで、何度か転びかけた。滑りやすい道に対し「ふざけんなまじで!」と一人で悪態を吐くと、通りがかった白人夫婦がこちらを見るので、"Nah, I ain't talking to you. It's okay."と言い、再び走り出した。オークリーのサングラスをしたスキンヘッドの白人男性は、こちらを見てにっこりと微笑んでくれた。 

それにしても、最近の赤本はこんなにも口語体で書かれているのかと、先ほど代ゼミの講師が解説してくれた問題の解答・解説を読みながら驚いた。セルフツッコミ的なのも入れてるし、どれも見事に面白くないし…

ほどなくして、いつもは渋谷のフレッシュネスバーガーで行っている英会話の個人レッスンが始まった。今回は宮城教育大学附属小学校の多目的教室を彷彿とさせる大きめの教室で、床に座ってのレッスンだ。今日は遅刻しなかったぞ。

レッスンが始まり、僕は今日行った代ゼミの体験授業のことを話した。

- So, do you wanna take the class?

Nah, never.

- Why not?

Cuz even though 受験勉強 was a good memory it was so tough I never wanna do that again.

僕がそう言うと、先生は残念そうな、というか少し悲しそうな表情をしていた。その意味がいまひとつ分からないまま、レッスンは終わった。