前回の記事で、
自転車スポーツの歴史始まって以来、
クランク長に関して多くの実験がされてきたにも関わらず、
現在に至っても最適なクランク長が一体どのあたりにあるのか、
という結論を、言い切れた人が未だにいない、
という話を致しました。
クランクの長さが長くなれば、
当然、視点(bbの位置)から力点(ペダルの位置)の距離が伸びる訳ですから、
誰がどう考えたって、そちらの方がテコが働き、
より速く走れるはずだと思うわけですが、
これがいくら実験をしても、ギアの変速が自由に出来るロードバイクにおいては、
明らかな結果を出すことが出来なかった、
というのが前回の話でした。
クランクが伸びて、テコが働くことによって強くなるのは、
トルクでして、固定ギアの場合では確かにクランクが長い方がスピードは出るのですが、
ギアが変更できるロードバイクでパワーを計測すると、
結局は販売していないほど極端に長い、または短いクランクを使わない限りは、
結果は同じになるというのが
クランク長に関する、自転車史上一度も解決していない謎な訳です。
しかし、ここ最近の、欧米のフィッターやトレーナー、または趣味のうるさ方は、
まず例外なく、
クランクをより短くすることを勧めております。
その第一のポイントは、
クランクは長くすると確実にトルクが確保されて、
重いギアを踏むことが出来ますが、
クランクが長ければBBからの距離が遠くなる、
つまり、回転する半径が伸びる訳でなので、
ペダルの描く軌道が、
短いクランクよりも長くなるところなんですね。
例えば、165mmのクランクを使っているとすれば、
これを半径として描く円周は、円周率3.14で計算すれば、
1036.2mmになります。
それが175mmになりますと、
1099mmなので、
誤差などを考えずに単純に見れば、
165mmのクランクは、
175mmのクランクよりも円周が63mm短い、
ということになります。
すると、ペダルが描く軌道が6.3cm短くて済む訳ですから、
165mmのクランクを使っている場合、
同じケイデンスで回していても、
175mmのクランクを回すよりも、6.3cm分短い軌道を回せば済むことになる訳です。
すると、実際に同じケイデンスで回す場合は、
165mmで回している方が175mmよりも、ペダルのストロークは遅くても良いということになる訳です。
クランクを一周回すごとに6.3cmって結構でかいと思いませんか?
これがケイデンス100で回していたとしたら、
ペダルの描く軌道が1分間で6,3cmの100倍、
630cm!!
つまり175mmを使ってケイデンス100で回したら、
165mmよりも1分間で6m30cm分も長い軌道を回さなくてはならないつうことですよね。
1分間で6m30cm分も長い軌道でペダルを動かしているのに、
同じケイデンス100しか出せないんだから、結構厳しいです。
(計算間違ってねぇよなぁ??)
ふむ。
実は、長いクランクでテコが働いているにも関わらず、
なぜか結果として、パワーに関しては短いクランクと差が出ないのは、
これが原因な筈なんですよね。
すなわち、
長いクランクならテコが働いてトルクは出るが、
ペダルのストロークスピードが同じなら、
短いクランクの方が、結果的に速いケイデンスで回せることになるからなのです。
この二つの特性によって相殺されることによって、
結果として長短のクランクで、ほぼ同じような結果が出てくる
というのが、
最近の大体のこの問題に関する結論なのですが、
そうすると、残るは各人の得意分野、
特に、個人的な筋肉の特性と、
関節の可動域の個人差が、最適なクランクの長さを選択する場合のキーポイントになってくるということになります。
例えば、去年のシーズンでは怪我で途中から棄権致しましたが、
今でも、世界で最も速い選手の一人なことに間違いはないクリス・フルームは、
186cmという長身で、
さらに異常なほど手足の長い体系をしている人物です。
(フルームの手足の細長さが普通じゃない件。笑)
そのフルームは175mmのクランクを使っています。
彼の場合、身長と脚の長さから考えても
長いクランクを使って
関節の可動域という意味で問題が出ることはまずあり得ない訳ですが、
175mmを回すには、短いクランクを回すよりも
もっと速く回さなくては、ケイデンスが伸びないという条件においては
それは物理的な条件なので、同じなのです。
しかし、フルームの場合、
特に回転させることが得意な選手なので、
長いクランクで、ケイデンスを速くするには不利だとしても、
それを補って余りあるほど、ペダルのストロークスピードを速くできるのでしょう。
フルームの場合、それに楕円のチェーンリング合わせることによって、
さらに長いクランクでテコを効かせられる優位性をパワーの向上に使っているようです。
そんな訳で、このクランク長の問題、
残るは、長さの違いによる「取れる姿勢の良し悪し」
という問題を残すのみになりました。
それはまた次回に書こうと思います。