先日は、ヴィシュヌの4番目の化身ナルシンハの降誕の日でした。

 

それにちなんで、今日はナルシンハのお話をシェアさせて頂きます。

 

 

昨年頭にお話しした、3番目の化身バラハ(猪)によって、

非常に強い力を持つ悪魔の兄弟の弟ヒランニャクシュが殺されました。

entry-12430909784.html←参照

 

 

今回はその兄である、ヒランヤカシャップのお話になります。

 

 

 

弟のヒランニャクシュを殺されたヒランヤカシャップは、ヴィシュヌへの怒りに震え、

世の中のヴィシュヌ信仰者を、お坊さん含め皆殺しにるすという御触れを出しました。

 

世界には更に悪がはびこりました。

 

その悪に対抗し、インドラ神は悪魔たちに戦いを挑みました。

インドラ神は多くの悪魔を殺した後、

ヒランヤカシャップの妻カヤドゥのお腹に子どもが宿っていることを知り、

悪魔の後継者の誕生を喰い止めようと、妊婦であるカヤドゥの髪を引きづり連れ去ろうとしました。

 

それを見たヴィシュヌの一番の帰依者であるナーラダ仙人は、インドラ神を止めました。

「インドラ、悪魔の家系に生まれるからといって、お腹の中の子どもも悪魔になるとは限りません。

私が見る限りでは、カヤドゥのお腹の中にいる子どもは、誰よりも智慧に富む、ヴィシュヌの献身者になる人でしょう。」

それを聞いたインドラ神は自分の行いを反省し、すぐにカヤドゥを離して天国に戻りました。

 

ナーラダは解放されたカヤドゥを自分のアシュラム(家)に連れて行き、

そこで、毎日カヤドゥとお腹の中の子どもに神様のお話を聞かせました。

 

ここでの教訓は、胎教の大切さです。

お腹に子どもを抱えた母親がどのような環境で過ごすかで、その子どもの人生を変えることが出来るのです。

子どもは、母親の胎内で全てのことを聞いており、そこで既に知識を吸収しながら育っていくのです。

 

さて、

一方、ヒランヤカシャップは、どうしてもヴィシュヌを倒すために、

誰にも負けないパワーを得ようと苦行をしていました。

その苦行が成功し、ヒランヤカシャップは特別な力をブランマ神から授かりました。

それは、ブランマ神が想像したこの世界のどの生き物からも殺されない力です。

そして、建物の中、外、朝、昼、夜、空中でも地面でも、これらの場所や時間では絶対に殺されない力、

さらに、この世界に存在するどの武器によっても殺されない力でした。

 

この力を授かったヒランヤカシャップは、この世界の神々含め、全ての生き物を手下にして暮らしました。

 

ヴィシュヌはただ、それを見守り、

この世界をヒランヤカシャップの支配から救い出すタイミングを見計らっていました。

 

 

その鍵となる子どもが、カヤドゥのお腹にいたプララードという少年でした。

 

カヤドゥはヒランヤカシャップの元に戻り、その後プララードが誕生しました。

 

ナーラダの予言通り、プララードは誰よりも賢く、普通の子どもとは少し変わっていて、

常に他の子どもと少し離れたところで瞑想したり、ヴィシュヌの名前をひたすら唱えている子どもでした。

 

ヒランヤカシャップは、プララードが年頃になると、他の兄弟と同じ学校に入れました。

その学校でも、1を教えると全てを理解する優等生でした。

 

しかし、プララードは年齢を重ねるごとに、

学校の教育の内容があまりにも悪に偏っており、

ワンマンである父のヒランヤカシャップを崇拝することや、

その他の方針が全て正義ではないことに対し、時折、大人に説教するようになりました。

 

プララードは母親のお腹の中で、全ての智慧を身につけていたため、善悪の判断が出来る子どもでした。

 

時々、父ヒラニャカシャップに対してもヴィシュヌの名前を出し、

神様は唯一ヴィシュヌであることを父に教えることもありました。

 

ヒランヤカシャップは、ヴィシュヌの名前を出すものを皆殺しにしてきているため、

息子の口からその名前が出ることに驚き、怒りを覚え、

何としてでも、プララードからヴィシュヌの名前を消したいと思っていました。

 

 

プララードの説いた教えで、とても大切な教えがあります。

それは「9つのバクティ」です。

Shravanam Kirtanam Vishnho Smaranam Padsevanam

Archanam Vandanam Dasiyam Sakhyam Atmnivedanma

 

1、シュラヴァナ(神の物語を聞くこと)
2、キールタナ(神を讃え歌うこと)
3、スマラナ(神を想い瞑想すること)
4、パーダ・セーヴァナ(神の御足を礼拝すること)
5、アルチャナ(神の姿を礼拝すること)
6、ヴァンダナ(神に敬意を表すこと)
7、ダーシャ(神の支え人になること)
8、サキャ(神と友になること)
9、アートマ・ニヴェーダナ(神に全てを委ねること)

 

この9つの行いのどれか1つでも行うことが、心の平安をもたらし、

神(ヴィシュヌ)との繋がりを感じることができます。

そして、どの行為も全て心から溢れ出る思いで行わなければなりません。

 

プララードは父のヒランヤカシャップに説いて聞かせます。

 

お父さん、優しさや純粋な心は9つの方法によって育てることが出来ます。

まず一番はじめの入り口は、ヴィシュヌのお話を聞くことです。

聖者やグルからヴィシュヌの物語や聖典の内容を聞き学ぶことが大切です。

 

これを聞いたヒランヤカシャップは、怒りに震え、

誰がこの子どもにこのような知識を吹き込んだのかと考えました。

既にヴィシュヌの名を唱えるお坊さんや聖者は皆殺されているはずです。

 

怒っている父親にプララードは続けます。

 

お父さん、この世界は弱いものを苦しめます。このような人間は感覚を統制する必要があります。

そうしない限り自分たちの積み重ねてきているカルマから逃れることができません。

賢者は、関係性への執着から離れます。離れると神様が自然と私たちに智慧を与えてくださいます。

私たち人間は、一回でも神様の御足に礼拝しない限り、カルマに束縛され続けます。

一度でもその蓮華の御足に礼拝することが出来たら、モクシャ(解脱)を得ることができます。

ヴィシュヌを知るためには、賢者の御足の礼拝し、彼らの話に耳を傾け、その言葉を全身に浴びて心を浄化する必要があります。

お父さん、この世界は全てマヤ(幻想)だと思ってください。

賢者の元へ出向き、ヴィシュヌの物語を聞き、どうかバクティをしてください。

 

この話を聞いていたヒランヤカシャップはさらに怒り、遂に、プララードを殺すように命じました。

 

しかし、火あぶりにかけても、猛獣に襲わせても、崖から突き落としても、

プララードはどうしても危機一髪で救われ、死にませんでした。

 

彼の心には常に、「Om Namo Bhagwat Vasdevaya」のマントラがあり、ヴィシュヌと一緒でした。

 

どうしても死なないプララードは、学校でも、子どもたちにヴィシュヌについてのお話を聞かせはじめました。

みんなで神様を讃える歌を歌い、楽器を叩き鳴らし幸せな時間でした。

 

そんな賑やかな音楽を聞きつけたヒランヤカシャップは、自ら止めに入るために学校に押しかけました。

他の子どもたちはみんな怯えて逃げましたが、プララードは動揺することもなく立っています。

 

学校から戻ったプララードにヒランヤカシャップは尋ねます。

「この世界全てのものが私に怯えるのに、お前だけはどうして怖くないのだ。

お前のその力は一体どこから来るのか。」と。

 

プララードは答えました。

「お父さん、今、誰のお陰でこの力を授かっているか聞きましたね。

実はこの力は、私だけでなく、全ての人に平等に与えられています。

それを下さるのは神様であるヴィシュヌです。ヴィシュヌはこの世界のどこにでも存在します。

あなたは、私が小さな子どもだと思っていますね。

しかし、小さな子どもは肉体だけであり、私の本質は、この中にある魂です。

そして、この魂がヴィシュヌそのものなのです。

ヴィシュヌは全ての魂の中に平等に入ってその力を授けてくださっています。

この魂は全ての物質の中に存在するのです。」

 

これを聞いたヒランヤカシャップは怒り狂い、プララードを馬鹿にして言いました。

「では、この石の柱の中にもヴィシュヌはいるのか?!」と。

プララードは、

「もちろん!」と答えました。

ヒランヤカシャップは、

「では、殺してやる!」と、棍棒を振りかざし、柱を叩き壊しました。

 

すると、

そこから、頭はライオンで体は人間の姿でナルシンハが現れたのです。

 

これがヴィシュヌの4番目の化身の姿です。

 

ナルシンハはヒランヤカシャップを殺すことができない、ブランマの想像した生き物ではありませんでした。

動物でも人間でもない姿でした。

そして、その時間は朝でも昼でも夜でもない、夕方の時間帯でした。

ナルシンハはヒランヤカシャップをお城から引きづり出し、お城の門のど真ん中に連れ出しました。

そして、建物の外でも中でもない、門の中心に留まると、

空中でも地面でもない、自分の膝の上に寝かし、

武器ではない、自分の鋭い爪でヒランヤカシャップのお腹を引き裂き、殺してしまいました。

 

 

プララードはナルシンハに駆け寄り、御足に礼拝しました。

すると、ナルシンハはプララードを抱き上げ、膝の上で抱きしめて涙を流しました。

 

「プララード、ごめんなさい。早く助けにきてあげることが出来ず、長い間、あなたを苦しめてしまいました。

こんな小さな体に痛い傷をたくさん追わせてしまいました。

どうか、私に罰を与えてください。

あなたは素晴らしい私の献身者です。あなたからの罰なら喜んでお受けします。」

 

プララードは言います。

「あぁ、神様、私のこんな肉体、悪魔の両親から生まれた、

ラジャスとタマスの性質でしか出来ていない肉体を抱きしめてくださいました。

こんな幸せなことはありません。

他の天国の神様すらもこんな幸せは与えられていないでしょう。

私はこれで十分救われてました。至福しかありません。

そんなあなたに罰を与えるだなんて、とんでもありません。」

 

ナルシンハは尋ねます。

「では、私から欲しいものをなんでも授けようと思います。何が欲しいですか?」

 

プララードは手を合わせて答えました。

「神様、心からお世話をしてくれる人にお金を要求することなんて出来ないように、

あなたに何かを求めることは出来ません。

私はただ、あなたの献身奉仕をし続けたいのです。

どうか、今までと変わらず、ただ、ずっと私の心の中にいてください。

そして、1つだけお願いするとしたら、この心にある、何かを欲しいと求める欲の心を消してください。」

 

ナルシンハは嬉しくなり、プララードを抱きしめました。

「プララード、あなたの気持ちは本当に純粋で、とても嬉しいです。

それでも、どうか1つだけ、何かあなたが喜ぶことを形としてやってあげたいのです。

何かお願いしてください。」

 

それを聞いたプララードは、しばらく考えて答えました。

「では、1つだけお願いします。

お父さんは本当に悪魔の心の持ち主でひどいことしかしてきませんでした。

しかし、それは私も同じです。私がその父親の肉体から生まれています。

お父さんのやってきた行いは全て私の責任でもあります。

そのお父さんに変わって私が全て悔い改めて懺悔をします。

どうか、お父さんを解脱させてあげてください。」

ナルシンハは言います。

「プララード、心配ありません。あなたのような素晴らしい献身者が生まれる家族には、

あなたから21世代前の家族も、21世代後に生まれる家族も、全ての人が解脱することが出来ますよ。」

 

このようにヴィシュヌはナルシンハの姿で悪の世界を救いました。

 

 

神様の存在を全て否定し、自らが神だとして、

悪の国を築きあげていた悪魔の家系のヒランヤカシャップの息子がプララードでした。

 

家系とは関係なく、プララードは産まれながらにして、真実が何かを知っていたのです。

そして、家族や先生、友人にも流されることなく、自分の確信している真実を貫き、

ヴィシュヌへの最高の献身者として育って行きました。

 

神様は生まれ育ちは関係なく、どのような人にも平等に力を与えてくださいます。

その力をただ信じることだけ、それさえ出来れば不可能はない、ということをこの神話は伝えてくれています。

心から帰依して信じるものは、必ず救われます。

 

「ノーダバクティ」と呼ばれる「9つのバクティ」によって、

どんな人でも神様への愛を育てることが出来ます。

 

そして、その神様への愛を持つ者は、身なりや生まれ育ち、人間や動物、年齢も関係なく、

誰もが救われる、ということを教えてくれています。

 

 

 

常にあなたを心に留めることが出来ますように、、、、、

永遠にあなたの、支え人であり友であることが出来ますように、、、、

 

Om Namo Bhagwate Vasdevaya........