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夢の存在意義とは
・無意味な情報を捨て去る際に知覚される現象
・必要な情報を忘れないようにする活動の際に知覚される現象
                     (Wikipediaより)

最近よく夢を見る。
僕は実に心が弱いので、少しでも不安を憶えると寝付きが悪くなり
眠りも浅くなってしまう。いわゆるレム睡眠というやつが続いて
いるのだろう。
先日も貯蓄と人生設計の大切さを秋吉久美子とアグネスチャンに
入れ替わり立ち代わり滔々と説教されたものだ。

今でもその詳細まで鮮明に記憶している夢がある。
ひとつめは少しシリアスな夢。
僕は殺人を犯し且つ金品も奪ったので強盗殺人となり、死刑を覚悟
しながら逃亡を続けている中、とある服屋に入って気に入った服を
手に取り(この服を買ってもどうせ死ぬんだから何の意味も無い
んだな…)という虚無感に襲われた夢。
今でもその時の感覚を忘れられない。
ふたつめは高校生時に見た切ない夢。
僕より全ての面において優秀な2つ年下の弟と
山口リエ を奪い合い、そしてその争いの勝者となった僕が
弟に「結局、いつだって兄貴だよ」と言われた夢。
現実との差に触れる必要は無いと思うのでここでは省略させていただこう。
そしてもう一つの忘れられない夢。

少し話しはそれるが、僕が育った地域には大企業が多く、その
恩恵に預かってか貧乏な家庭というものを殆ど見なかった。
そんな中ただ一人、例外な子供がいた。
その子は多田君といった。
まず、その見た目からして絵に描いたような貧乏ファッションだった。
成長期という子供の大前提を無視するかのようなピッチピチな服のサイズ。
もう少し配色考えていこうぜ、と言いたくなるようなステッチという名の
つぎはぎ。
姉のおさがりであることをわざわざ明示してるかのような、光GENJI等
ジャニーズのステッカーが貼られたかばん。
(さらに本人がそのステッカーを剥がそうとした痕跡が見られるのが
 より哀愁を誘う。)
僕が後にも先にも白黒テレビというやつを見たことあるのは
多田君の家でだけである。
ちなみにそんな彼のあだ名は「社長」だった。一時期「部長」に
降格していたが小学校卒業時には無事に「社長」に返り咲いた強い子だ。

夢の話に戻ろう。
僕が今でも一番強烈に印象に残ってる夢。
夕暮れ時。なぜそう知覚しているかというと、夢全体の色彩が赤色に
染まっていたから。
僕は一人、近所のスーパーに入っていく。
入り口から目的の菓子コーナーへ進み、当時流行っていた
ビックリマンチョコを手に取る。
その時僕は何故か青果コーナーから禍々しい気配を感じた。
僕は手にしたビックリマンチョコを戻し、恐る恐るその気配の
発生源に近づく。
そこで僕が見たのはサングラスで顔を隠して必死にみかんを万引きして
いる一人の中年女性。
…多田の母親の姿だった…。
それはもう禍々しいとか、そんな表現なんかでは全然、物足りなくて
敢えて言うなら、全ての、平和なスーパーの光景を飲み込むブラックホール。
鬼の様な形相でみかんを万引きし続ける多田の母さん。
サングラスしてるのにばればれな多田の母さん。
みかんより高価な果物の存在を無視する多田の母さん。
給食以外で珍しくみかんを口にする多田と多田の姉。
そして深く赤い夕暮れ…。

その後、多田家は夜逃げをし、多田君自身はヤンキーとなったという
都市伝説がまことしやかに広まったなんてエピソードでこの話を締めたいと
思う。


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