名将の条件 | バレーボールワールド     中西美雁の日々是排球

名将の条件


楊さん胴上げ ゴッツ 日体東レ さらさら金井 北川川浦 大村スパイク 脇戸 アレク おまけのメグカナ

終わらない原稿の合間を縫って…。
ついでに載せ損ねてた黒鷲の写真なんかも載せたりして…。

今出てるナンバーの、表題のコラムが面白かった。
ここ数年ぼんやり考えていたことを、鋭く分析してたので。

某局某さんと飲んだときに教えて頂いた話に、体操のとある指導者は、幼稚園児くらいの子供たちが演技をするのを小一時間ほど見て、才能の有無を見分けてしまうのだそうだってのがあった。

私なんぞ、年がら年中バレーのことばっかり考えていて「どこに行ってもいますね」と呆れられるほど試合やら練習やらを観て、いろんな識者・指導者に意見を聞きまくって、挙げ句やっとこ大学生くらいから「この子は伸びる…といいな」とか、「この次の大会でブレイクするのはこの子……なのではないかしら」程度なのに、その道のプロ、しかも伯楽級の人はやっぱり違うのである。

まあ純粋な才能のあるなしと、その後大成するかどうかは必ずしも完全一致する訳じゃないんだけど(その辺が面白いところでもあり、切ないところでもある。ゲームのパラメータだけ見てチームを作る人には、よく目を開けて眼前で繰り広げられているプレーを見ようよと言いたい)、そもそも前提というか基本となる才能の有無ってのをそんなちっこい頃からでなくてもいい、ぱ!と見て分かるくらいには早くなりたいものである。

でまあそういうタレント(天から授かった才能)を見極めることは大前提として、その上で戦術や戦略にあったセレクトをして、チームを作るってのが必要な訳なんですが。名将たるためには。

「スター選手の制御とチームビルディング」みたいな要素も最近は不可欠なんじゃないのかなあ…。などと思っていたので、当該コラムを読んで「やっぱりね…」と思った次第。

セレクト型、育成型、そしてきら星コントロール型…。というかどの要素も必要だなと。


ちょっと前に某サッカー専門誌の編集さんと飲んだときも、それに近いテーマで盛り上がったんだけど、「無謬のヒーローなどいない」というのが私の持論なんですね。

きら星ってのはたいがい超癖がある人たちばかりなんで、そういう人をいかに乗せたり脅したりすかしたり甘やかしたり手綱を締めたりして、上手いことチームのためになるよう働かせていくか、そんでもってチーム全体を作っていくか。

地味に堅実に働く真面目な選手だけでチームを作るのも一案でしょう。
但し気をつけないと、本当に大事なところで、バクチ的なところで絶対勝てなかったりする。

『マネーボール』というメジャーリーグを舞台にしたチーム運営に関するノンフィクションがあってこれが実に面白いんだけど、是非バレー好きな皆さんにも斜め読みで良いんで読んで欲しいんだけど、というのはこの本に描かれた物語は非常にドラマティックかつエキサイティングなんだけど、きっとこのチームはプレーオフを勝ち抜くことはできないだろうなというのが読み終えてまずの私の感想だった。
んで、実際にそうみたい。

アメリカ人らしい徹底した合理主義で、データのみを重視し、従来の職人さんによるスカウティングを否定するところからチームの再建が始まっている本なんですよ。
気が向いたら読んでみてください。


2004年OQTの時の全日本男子の個々人のパラメータ値は、バルセロナ時代にも匹敵するのではないかと密かに思っていた。でも、本来その合計たるべきチーム力は皆さんもご存じの通り、全然違ってた。

バレーの神様にたくさん愛されている人たちは、喉から手が出るほどの飢餓感には欠けていたのかも知れない。えげつないほどの上昇志向も欠けていたのかも知れない。自律心も。欲望を制御することも、競り合ったときの「負けるかも知れない」恐怖や、自分より格上の相手に「こんなにも地力が違う相手とどうやって闘ったらいいのだ」という暗闇に立ち向かえるある種の無謀さも。

「あのメンバーでよくぞここまでやったね」というのは、指揮官の耳を心地よくくすぐるだろう。

だが本当に望ましいのは、最も才能ある選手達が、最大限力を発揮してチームを構成し、闘うことだ。

それが理想という名の絵に描いた餅に過ぎないというならば、どこで折り合いをつけるべきなのか。どのようにつけるべきなのか。

現代の名将の条件は……過酷であることは間違いがない。



*胴上げされる楊監督。3回目くらいのバージョンのです。
*合成戦に敗れた直後のゴッツ。手術療養のためWL辞退の山本に代わってオポジットを務める計画もあるとか。本人はレセプションの経験を積むことにこだわっているようだったが。
*兄弟対決の日体東レ戦。
*さらさらヘアの金井。直前に得点したシーンでゴッツに子供か女の子のように抱き上げられてちょっと微妙な顔。
*「前半にブロックが~」「後半にブロックが~」のコメントで記者会見場を沸かせた家日ブロッカー2人。
*黒鷲賞の大村。
*決勝でセットアップしていた脇戸。田中ジャパンスタートの時は彼がセッターだったんだけどね。
*ニコロフの息子さんのアレク。チームの危機をよそに、ファビアノの娘さんと仲良く遊んでました。
*おまけ。


そんじゃまた!

Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2007年 5/24号 [雑誌]
マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男