lも書面で一笑しているが、しかし、摂津守が本当に増長しているとしたら、災いの種になりかねないとも述べている。
実は牛太郎、伊丹城の改修に一枚噛んでいる。長島から帰参してからすぐのこと、田中宗易からの文で伊丹城改修事業の計画を知った牛太郎は、摂津守に文を送って、伊丹は畿内と西国を繋ぐ要所であるから、頑強な要塞を築城するようあおった。さらに堺の四郎次郎に早馬を出し、摂津守に借財の誘いを持ちこませ、改修工事にかかる人夫や材木も、堺会合衆と摂津守の間を取り持って斡旋するよう命じた。
なので、十兵衛や兵部に煙たがられては困るのだった。
牛太郎は筆を取り、和紙に書き連ねていく。
荒木摂津守は確かに増長しているかもしれないが、生来気の弱い男であり、信長様の恐ろしさも存じているから、織田に弓引くような真似は考えられない。築城も所詮は道楽の延長であり、気を揉むほどでもない。と。
家長としては穏やかに振る舞うようになった牛太郎だが、事が銭儲けに至るとなると、相変わらずの貪欲な利己主義者であった。
「ヘタレ村重には稼がせてもらわないとな」
にたにたと笑いながら、牛太郎は文を折り畳んでいく。武田家工作に日々追い立てられ、成長を楽しみにしていた駒も喪い、香りを楽しめる衣服も梓のものだけで飽きてきた。今の牛太郎が牛太郎らしくいられるのは、蓄財への情熱しかないのかもしれなかった。
無用心
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尾張沓掛に栗綱と栗之介を置いていき、例のように旅人風情の目立たない姿で三河に入ると、事前に文を出していた松平善兵衛と再会し、遠江の地を踏んだ。
さて、どのようにして徳川三河守と接触するかであるが、やはり、牛太郎は武田の忍びの目に怯え、浜松城への登城はためらった。
「前のように、本坂街道沿いの茶屋で落ち合うのはいかがかと」
善兵衛が提案した。
「おやかた様は野駆けのついでに、あそこにたびたび寄られているようなので、不自然ではないでしょう」
「そっか。だったら好都合だな。じゃあ、早速、家康殿に日取りと時刻を訊いてきてくれ」
「でも、殿」
と、利兵衛が口を挟んできた。いつもの出しゃばりかと牛太郎は苦々しくなったが、
「野駆けや鷹狩りのついでとあれば、使いの従者を大勢連れられているはずです。それではかえって目立ちますし、その中に間者がいないとも限らなくありませんか?」
利兵衛らしくないが、確かに、もっともな意見だと牛太郎は得心した。
「そういうことだ、善兵衛」
しかし、善兵衛は眉をしかめた。
「いや、万が一を考えたら、一人か二人の警護でおやかた様を城外にお連れすることはできかねます。今の武田と徳川の情勢ではなおさらです」
「平八郎がいるから大丈夫だろ」
「そんな」
「天下の三河武者が、武田怖さでお散歩もできないって言うのかい?」
「そ、そんなわけありませぬっ! いくら簗田殿とはいえ、口が過ぎますぞ!」
「ああ、失敬。ということで、段取りのほうよろしく」
善兵衛は、血色豊かに床を叩き踏んでいきながら、宿を出ていった。
「殿。あのような口を叩いていいのですか」
「いいんだ。ごちゃごちゃ言い争っていたって先には進まないだろ。もう、ここまで来たら躊躇している暇はないんだ」
慕ってくれている善兵衛をけしかけてしまって気分の良くない牛太郎は、大きく鼻息を抜くと、床の目をぼんやりと見つめる。
責務であった。
決戦地を設楽ヶ原と定めたそのときから、およそ一年。
牛太郎は、人々が営む時空の流れに、設楽ヶ原作戦という川を作った。そうして、牛太郎は、竹中半兵衛ら、智謀家たちに川を広げる手段を授かり、又左衛