首を長~く続報を待っている学生諸君もいる?と思うので、第二弾。

第二問は、タリーズコーヒーの資本政策を考えるもの。


タリーズの会社設立当初(事業自体は当初個人事業として開始)の株主構成は、P227~228に書いてあるとおりである。松田社長と米タリーズが780万円ずつで29%シェア。他は内装業者や仕入業者、VCとして三井物産系列のMVCが410万円(15%)を出資している。

松田社長は、高潔な志(解雇される緊張感等)から、この資本構成を「是」としているが、フツーならこうしない。

また、すでに開業して実績を築きあげつつあった銀座店のもの(投資額7,000万円)がこの会社にどう踏襲されたかがわからない。当時だと現物出資にはいくつものハードルがあったから、それはできなかったかも知れない。

僕だったら/今だったら、当初からタリーズジャパンで始めるし、さもなくば、早期に自分と米タリーズの2社でまずタリーズ・ジャパンを設立して、そこに銀座店の権利関係を移動し、その場合、ミッキーからの借入は個人借入としてエクイティにスワップして、銀行借り入れは借主チェンジをすれば、現物出資と合わせて、社長個人の資本金3,500万円が確保でき(それが780万円だった!という可能性もあるが)、その段階で米タリーズと2社で会社にする。


次の資金需要は、98年8月の銀座店拡張のための5,000万円で、実際には三菱銀行からの融資で賄っているが、この分の調達だったはず。実際にはこの内装を請け負う業者を株主に入れて、このヘンの記述は曖昧だが、内装代金との相殺もあったはず。あまり好ましくない。

この前のタイミングで増資をして、次の2・3号店の資金まで目処をつけたいところ。

「銀座店オープン直後からVCからの投資話が舞い込んできた」と言うから、ビジネスプランを書いて持っていけばかなりの確率でもっとシェアを落としてVCから資金を集めることが十分可能だったと思う。


たとえば、

97.1 会社設立時:社長3,500万円(100%)(銀行借り入れ3,500万円) @5万円

97.8 銀座店開業時:米タリーズ出資 500万円(12.5%) @5万円

98.4 銀座店黒字化:関係業者、MVC出資 4,000万円 @10万円

99.4 3店舗黒字:VC 12,000万円 @30万円

とすればかなり社長のシェアは守れたはず。


さらにタリーズでは2000年4月に関連する大企業等から5億2,500万円を調達した後、2001年7月にナスダック・ジャパンにIPOして、公募調達で5億円を集めた。

しかし、2000年4月の5億円余の調達は本当に必要だったか?銀行からの借入で十分だったのでは?と、後だしジャンケンでは思う。そうすれば先の皮算用で44%シェアだから、IPO時に売り出したとしても30%以上のシェアを保てたはず。


ちなみに、会社支配と株式シェアの関係で言うと、

2/3以上シェア 特別決議(事業譲渡、会社閉鎖等)が一人でできる。ほぼ会社完全支配

50%超 普通決議が一人でできる。役員選任も思うがまま。

1/3超  最初の逆で特別決議に対して拒否権が生じる。

さらに面倒なのは実効支配で、決議に欠席する人はカウントされないから、さらに低いシェアでも通常は支配できる。逆に”通常でない"場合はプロキシファイトに最後はなるから、やはり法定シェアも必要であるが。


タリーズジャパンの場合、米国タリーズと仲良くやろうと、同じシェアで出発したが、後に仲たがいしてしまうし、その後、松田社長は借金までして自社株を懸命に買い集めている(本人談では、もっと高い志ゆえであるが)から、シェアの低さを後悔していたのでは?

そして、ファンドの力を借りて株式公開を取りやめ、プライベートカンパニーとしての飛躍を期するが・・・・。

この後の後日談は講義当日にでも。


音譜