前にも書いたがベンチャーの領域というか、少なくともIPOの件数では、無視できない比率を占めているのが、不動産業だ。

これ↓は先月、東京工科大学のMOT(事業システム論)で講義したときに、過去、ベンチャーバブル真っ盛りの2000年ごろと最近(06年上半期まで)の業種別比較をしたもの。

ソフトウェア(システムアプリケーション)が減少して、人材紹介や各種業務支援の企業向けサービスが増えているのは、予想どおりだったが、意外だったのは第一に、インターネットサービスが盛り返していること。確かにドリコムやアドウェイズといったインターネットサービスの中でも第二世代のものが出てきている。ここがベンチャーの領域であることには異論は無いし、「その1」でも取り上げた。意外その2は、不動産だ。工科大の受講生も、目ざとくIPO企業の事例研究の課題に数名が不動産業でIPOした会社を取り上げていた。当初、その自覚が薄かったので、否定的なスタンスで挑んだが、途中から態度を豹変させて一理あるなあ・・・と勉強になりました。工科大MOTの学生さん、ありがとう。

IPO業種比較


昨年だけでも、ハウスフリーダム、アトリウム、ラ・アトレ、日本レップ、リビングコーポレーション、ライフステージなどがある。野村不動産もIPOしたが、ここはすでにベンチャーではないが。


しかし、本当に不動産はベンチャーの領域だろうかはてなマーク


確かにロットが大きく、地域性があるから、数十億円の売上げ/数億円の利益という新興市場の公開基準はクリアしやすいだろう。ましてや不動産市況が全般的に好況である今は「知恵」よりも「努力」で達成されてしまうかも知れない。ただ、どうだろう?前に上げた会社も、勿論具体的なビジネスは異なり、アイデアと工夫があったればこそ、一皮剥けてIPOに至ったんだろうが、少なくとも事業概要を散見する限りでは、「中古の物件」を仕入れて「リニューアル」して販売するか「不動産流動化」手法を噛ませて安定化を図るもので、どれも大差なく思えてしまった。


確かに市場は大きく、硬直化している。十分、価値を生み、回収できるだけの余地のある市場である。

新風を顧客は望んでいるからこそ、こうした新しい企業のビジネスが、おっかなびっくりながら受け入れられて、伸びてきている。

ただ、差別化は難しい。大手がいつ下の領域にまで進出してくるとも限らない。今は不動産バブルの後遺症でそれだけの体力もないから、良いだろうが。

もう一つの課題は、資金需要が大きいことだ。だからこそ証券化手法なども駆使して知恵を絞るわけだし、新興市場での資金調達も意味がある。社長はファイナンスのエキスパートか、金繰りの天才でないとだめだ。まさにこれから、IPOしてからが、熾烈な競争が待っている業界と言えるかも知れない。信用と資金が必要な不動産ベンチャーにとって、新興市場はまさになくてはならない場なのかも知れない。


こうして見ると確かに現時点においては、不動産もベンチャーの領域かも知れない。

今から、VCとして投資先探索していては遅きに失しているが。。。 なるほど!って感じですね。


最後に請い願うのは、不動産ベンチャーの市場退出が増えても、それを新興市場として当然のこととして認める市場関係者・投資家であって欲しい。



夜の街