ベンチャー企業の株価を考えてみたい。

まず初歩的な話から。

いまだに株価で企業価値を考える人が少なくない。

しかし、株価はほとんど意味がない。あくまで時価総額が問題である。


時価総額=株価×(株数+オプションなどの潜在株数)


したがって、VCにオファーを出すときには、時価総額がいくらかを十分念頭に議論すべきだ。


そう言っておきながら、話を単純化するために「株価」という表現をする。先の式の割り算として厳格な方にはお許しを乞う。


税務的には相続税評価の指針に基づくことになる。ほとんどが一株あたり純資産額≒株価である。会社の解散価格とも言えよう。しかしながら、一株あたり純資産の株価でVCにオファーするVBはいない。みんなプレミアをつけてオファーすることになる。

では、プレミアとはどこから来ているのか?


一つには将来利益の期待値。利益計画から、フリーキャッシュフローの割引計算をしてNPV(正味現在価値)を求めて、それに不確実性のリスク値を掛けて算定するもの。理論的には正しいのだろうが、これが非常に胡散臭い。コンプラ&税務的にそんなことを言ったら問題かも知れないが、さまざまな問題がある。

まずターミナルバリュー(永続価値)を入れるかどうかで大きく、10倍とか、になるケースが少なくない。そもそも企業10年説時代に未来永劫続く永続価値を算定するのがよいかという議論がある。

さらに不確実性のリスク値もいい加減だ。確かに未公開の場合、株式に流動性が乏しいから、流動性リスクをカウントしたり、社内管理体制が未整備であるから、ベンチャーリスクをカウントすることは理に適っている。商品ができていなければ、商品化リスクもカウントすることになる。しかし、それぞれの合理的な基準がない。

会計士協会か、それともお役所でも、こうした「不確実」なことを是非研究して、ガイドラインを定めて欲しいものだ。#私が無知なだけであれば、是非、ご指摘ください。


もう一つが、EXITバリューからの割引計算をすること。個人的にはこちらの方がまだ信頼度が高いのではないかと思う。

すなわち、自社がどういう会社としてIPOしたいか、類似の会社のIPOやM&Aの際の価値はどうかということをまず算定する。これは実績データや現在の株価から確定値が入手でき、自社のIPO時の売上・利益の額をベースにして算定することになる。

この方法の場合は、会社の想いもビルトインできて良いと思う。VC的にはいろいろな意味でイメージしやすい。

一方で、業種によっては、すばらしい売上・利益でも、業界全体の成長性が乏しいと判断されている場合は、思うほどの株価にならないことがある。「ウチの会社は、フリーキャッシュフローベースのNPVで言うと・・・」という会社も、その会社がイメージする類似会社の株式データを適用すると、一桁くらい小さい規模にしかならないことがある。

しかしこの手法はまさにバブルを評価するものである。ITバブル/バイオバブルを市況が呈していると、IT/バイオに投資しやすくなるが、投資先企業がIPOするころにはバブルは弾けていて思った株価にならない・・・という極めて理に適った不幸を招くことになる。勿論、例外のない規則は無く、バブルの余韻というものもある。


今、一番、信用できるのは、企業のステージごとの凡その時価総額かな?

会社の商品開発ステージ、将来その会社が興そうとしているイノベーションのインパクトなどを総合的に判断する。「魔の川」「死の谷」「バミューダの海」のどこにいるのか?どの段階だったらいくらくらい・・・というような。

・・・最後のがもっとも感性的ですね。


結論!いろいろな時価総額(株価)の算定方式があります。最後はVB=売り手とVC=買い手の商談で決まるものです。

いろいろ知っていて賢い交渉ができれば、グッドディールになる。VBの方も是非、ディールを主導的にリードしてください。

それと結論その2!その時、高い株価で売りつけるのが良いディールとは限らない。長期的な展望に乗っ取ってディールを成立させることが大切。決して、負け犬VCの負け惜しみでなく!