父の入院先は、私のパート先から近いこともあって
昼休みや仕事帰りにも寄ったのだが
行くたびに「盗られた」話しである。
認知症の場合、介護的には盗られたに「同調」するのが正解なのだろうが、父の場合は物が見つからない→盗られたに違いないという単純な流れではない。
認知症の症状が出る前から、物を盗られたと頻繁に言っていたので、今の訴えが認知症だからなのか、別の疾患なのかの区別が難しい。
今回も、盗られた話しにはストーリーがある。
窓側の右のベッドの人は、見舞客が来ない。
買い物に行ってくれる人がいないので困っていたはずだ、さっきも水を飲みに行っていたようだが手で汲んで飲んだに違いない(想像)。それで帰りがけにこっそり俺のコップを持っていった。(父のコップは記名済)
左のベッドの人は、子供が小さい。
さっき見舞いに来ていたが、子供を遊ばせるために俺のメモ帳と鉛筆を盗んだに違いない。
向いのベッドの人は、パジャマの色が褪めている。
新しいパジャマも買えないくらい貧乏(想像)なので、俺の電気カミソリを盗んだのはあいつだ。
それぞれの観察をして、その結果こうだったと言い張る。
他の認知症の人でも、途中に観察した事実を織り込むのがありがちなのかどうか知らないけれど、いちいち観察して想像してるかと思うと気持ち悪い。
向こうのベッドの人に小さいお子さんがいるのは事実だし、向かいの人のパジャマが色褪せているのも事実だ。
そうして、俺の言っていることは事実だと話しを持って行くのだが、これは若いときからそうだった。
同調して貰うように細かい観察をすることは認知症にも可能なのか。
が、父に同調する時は気を付けなければならないことがあって、
以前、商品に延々と文句を言い続けるので面倒くさくて
「ああ、ホントだこれはおかしいね」
と言ったら父がメーカーにクレームの電話をし始めて
「家の者もおかしいと言っている、ほれ」
と言って私に電話を押し付けた。
引きずり込み方がえげつない。
これを、本人を目の前に病室でやられたら裁判沙汰である。
私はとてもじゃないが恐くて同調などできない