とりあえず書いてみる。


前回



 俺が移り住んだのは、田舎の中でも町のような様相を呈しているところだった。高い建物なんて殆どないが、かといって畑が広がるわけでもない。シャッター商店街の一画の、元は何だったのか分からないような建物の二階が俺の新居だ。中学から一人暮らしなので、この近くに住んでいる祖父母のコネを使って激安の家を手に入れたのだ。


 9月から俺は新しい学校に転入した。大きくも小さくもない公立中学校。俺にとってはそんなことどうでもよかった。新たなクラスメイトは転校生を初めこそ好奇の目で見ていたが、ロクに反応せずに窓の外ばかり見つめていた俺(=転校生)に徐々に興味を失っていった。


 俺の関心はラッキーだけに向けられていた。引っ越しに当たって不安だったのは、ラッキーも一緒に来られるか、という一点だけだった。俺は気付いていたのだ。いや、気付かない方がおかしい。ラッキーは幽霊だということに。人間でないことは昔から分かっていた。が、「では一体なんなのだ?」という疑問に答えが出たのは最近だった。


 ラッキーは霊体《エーテル》で、何故か俺に不幸をもたらす。外出中だろうがなんだろうが、いつも俺にくっついてるから、多分俺を寄り代としているのだろう。


 ただ、「俺を寄り代にしている」という点は微妙に確信をもてなかったから、家に憑いていたらどうしようもなかったのだが……。その心配は杞憂に終わった。ラッキー自身に確認をとったが正解だった。ラッキーはうるうるした瞳で


「私のこと…怖い?嫌いになった?」


と不安げに訪ねてきたが、そんなわけはない。たとえラッキーが悪魔だったとしても(似たようなものだが)、嫌いになることなんてありえない。そしてその旨を伝えると、これまた可愛らしく


「コウ……。ありがと。」


と言ってくれるのだ。これで嫌いになる奴は、もう男ではない。



 自称「世界一不幸な男」幸一と、凶運を運ぶ「ラッキー」。

 これほどに名前と境遇がミスマッチな俺達は、それぞれ通じるところがあったのだろう(ラッキーと名付けたのは他ならぬ俺だが)。俺は最凶に不幸であると同時に、最高に幸せ者だった。



 笑えることに、俺(とラッキー)が家を出てからすぐに、父の再就職が決まったそうだ。