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トラえもん!?

十代前半の和泉式部、定子、紫式部の三人に二十代の清少納言を加えた四人が中心の百合的日常。史実とは異なりますが、平安時代の女の子たちなので頻繁に和歌を詠みます。
『マーシュの魔術労働』はオリジナルの魔法学園もの

※昨日の続き

日が暮れるころ、なんだか蒸し暑くて外へ出た。風に当たるついでに中庭で魔術の練習でもしようかと思って…
「マーシュちゃん」
急に名前を呼ばれて、ちょっとびっくりしたけど…落ち着いた優しい声。蓬子さんだ。
「蓬子さん…どうしたの?」
「見回りしてたんだわ」
今日は世界食糧デー。畑の作物を守るため、教師と生徒が交代で見回りを続けてる。
夜は教師と上級生が担当するから、蓬子さんたちは帰ってきたところか…
「したら、裏山のほうから変な声が聞こえて…」
もっとも、一流の魔女がたくさんいる学園の敷地内だから、生徒が夜に出歩いても危険な目に遭うようなことはそうそうないはず。
「…変な声?」
うなずく蓬子さん。
「動物か何かの鳴き声みたいな…」
大きな鳥か、ウシガエルとか?
「ちょっと行ってみようか?」
「でも…」
蓬子さんも怖いのかな?
「畑の見回りなら大丈夫だよ」
夜に裏山に入るのは私もちょっと怖いけど、畑のそばなら先生か上級生が見回りに来るはずだし。
「蓬子さんはもう帰る?」
「ううん、一緒に行くわ」
寮から近い順に畑のそばを通って、裏山に一番近い畑まで行ってみよう。
「暗くなってきたね…」
魔術の練習するつもりだったから、灯りを持ってない。
先生や上級生が夜に見回りするのは、みんな自分の魔術で灯りを出せるから。
「…やってみよう」
3級試験を受けるなら、それくらいできるようにしなきゃいけない。
「ホタル!」
闇夜に光る虫をイメージして、唱える。
小さな光が一瞬見えた気がした…けど、灯りになるほどの光量はなく、すぐ消えてしまう。
「ダメか(ノ∀`)」
蓬子さんが紙を取り出して、何か書いてる…式神?
「…それ何?」
「提灯さ」
見たことあるかも…?
「あ、わかった!…ちょっと貸して」
提灯が描かれた紙を持って、あらためて唱える。
「ゴヨーダ!」
すると、紙を持っていた左手に“御用”と書かれた本物の提灯が現れ、私たちの周りをぼんやりと照らした。
「ふふっ、マーシュちゃんったら…」
確か泥棒を捕まえるときはこうするんだよねw
「裏山は…よく見えないね」
今は虫の声くらいしか聞こえない。
「んん…?」
風もないのに、畑で何かが揺れた気がした。
「マーシュちゃん…」
蓬子さんが指さした辺りで、がさがさっと音がして…何者かが畑から出て行く。
「泥棒!?」
提灯で照らそうとしたけど、動きが速くて捉えられない。

(つづく)