おうい!!
と、誰かに呼ばれた気がする。
後ろを振り返ると、夏草が揺れ、風だけが吹いている。
風の声だろうか。それとも夏草が談笑しているのだろうか。
帰り道、西の空に夕日が沈む頃、不思議な体験をよくした。
今となっては、一人で道を歩くなんてことはなくなってしまった。
今では街に行けば、誰かしら、人とすれ違う。
夏が始まり、そして終わりに向かって一方向だけに進んでいる。
おうい!!!
先刻より、強くはっきりとした声が、鼓膜を震わせる。
もう一度振り返ると、そこには誰もいなかった。
一方向を見つめた夕日が沈み、次の季節を呼んでいるのだ。
また、風が吹いた。
夏草たちはおしゃべりをやめ、夕日と同じ一方向を見ている。
おうい!
先刻よりは弱いが、深く鼓膜を震わせた。
また、誰かが呼んでいるのだ。次の季節を呼んでいるのだ。
最後にもう一度振り返り、道を挟む田んぼ見ていると、おじさんとおばさんがいた。
「おおーい!!」
おじさんがおばさんを呼んでいる声だった。
なんだか妙に切なくなった。。








