セルロア王国の首都エサイアの西側には巨大湖であるアスール湖から流れ出すアスール川が流れている。
東のトーレス川と共に、エサイアにとって天然の堀割となっていた。
当然、橋は架かっておらず、船で渡河することになる。
よってテルルス同様、船を予約して渡河できるまで3ないし4日かかることになる。
仁、エルザと別れたラインハルトは、4月10日はそこの関所で留め置かれたため4月11日にダリに着き、船を待つこととなった。唯美OB蛋白痩身素第4代
そして翌12日、ラインハルトはダリ見物をしていた。
「あら、ラインハルト様」
そう声を掛けられたラインハルトが振り向くとそこには銅色の髪、赤茶色の瞳が魅力的なセルロア王国屈指の魔法工作士マギクラフトマン、ステアリーナ・ガンマがいた。
「これは、ステアリーナ殿」
ラインハルトがそう挨拶すると、ステアリーナは上目遣いでラインハルトを睨む。
「あら、そんな他人行儀な言葉づかいされるなんて寂しいですわ」
色っぽい仕草だがラインハルトは動じない。
「これは失礼、ステアリーナ『さん』」
「ええ、それなら許して差し上げます」
そう言ったステアリーナは、きょろきょろと辺りを見回すと、ラインハルトに尋ねる。
「今日はお一人? ジン君は一緒じゃないのですか?」
「ええ、ジンとはしばらくの間別行動をしてまして」
ややぼかして答えるラインハルト。それを聞いたステアリーナは肩を落として言う。
「そうなんですの? ちょっと残念ですわ。ゆっくりお話したかったのに」
ラインハルトは苦笑し、
「済みませんね、僕しかいなくて」
と言う。するとステアリーナは笑ってラインハルトにお辞儀をした。
「冗談ですわ、ラインハルト様。今日、お暇ですか? もし時間がございましたら、わたくしにお付き合い下さいませんこと?」
特に予定もなかったラインハルトは肯いた。
「いいですよ。どこか面白い場所をご存じなんですか?」
「うふふ、着いてからのお楽しみです」
そう言ってステアリーナはラインハルトの右腕に自分の左腕を自然に絡ませ、そのまま歩いて行くのであった。
「どうぞ」
ステアリーナがラインハルトを案内していった先は普通の住宅であった。
セルロア王国標準と言っていい、石造り2階建て。窓は大きめに取られており、一部はガラスがはめ込まれている。
家の裏手には水路があって、アスール川に続いているようだ。
「わたくしの別宅ですわ」
ステアリーナの本宅はアスール川の向こうなのだが、首都を訪れた際、帰りはいつも3日4日待たされるのでここに家を借りたのだそうだ。
「年に50日以上使いますから、宿よりも安上がりですの」
そう言ってドアを開け、ラインハルトを招き入れた。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
出迎えたのは初老の執事風にした自動人形オートマタである。
「ただいま。ザフィオ、お客様だからよろしくね。あとそのお嬢様ってのやめて」
「かしこまりました、お嬢様」
自動人形オートマタはそう言って何か準備をするのであろう、家の奥へ姿を消した。
「もう!」
執事風自動人形オートマタはザフィオというようだ。
「まったく。いくら言ってもわたくしのことお嬢様、って言うのよ、こんな三十路のおばさんなのに、ねえ」
だがラインハルトは首を振って、
「いえいえ、ステアリーナさんはまだまだお嬢様、ですよ」
と言ったのである。
ザフィオが「お嬢様」と呼んでいるのは仕様の筈だ。ステアリーナがそうプログラムしたからに他ならない。そうラインハルトは看破していた。
看破していて、なおかつステアリーナの軽口に乗ったのである。
「あらあら、お上手ね。ラインハルト様はジン君と違って女を口説き慣れてるのかしら?」
「さて、どうでしょう」
さらりとかわすラインハルト。軽く睨むステアリーナ。
「まあ、にくらしい」
そんなやり取りをしていると、ザフィオが戻ってきた。
「仕度が調いました、お嬢様。お客様、こちらへどうぞ」
そう告げたザフィオの後に付いてステアリーナとラインハルトは進んでいった。
廊下の奥の部屋、そのドアを開けてザフィオは、紐斯葆OB蛋白痩身素
「どうぞ」
と2人を部屋へと招き入れた。
そこは広い部屋で、正面に大きな窓があり、そこから手入れの行き届いた庭が見える。南向きなのだろう、光もたっぷりと差し込んで明るい。
中央にはシンプルだが形のよい丸テーブルが置かれ、お茶テエエが2つ、ほのかに湯気を上げていた。
「いろいろとお話聞かせて下さいな。エゲレア王国では周りの耳もあってかなり限られたお話しかできませんでしたものね?」
その言葉の意図を測りかねたラインハルトは、言葉を濁して誤魔化すことにする。
「さて、それほど深いお付き合いでもありませんしね、そこそこお話はしたと記憶しているのですが」
するとステアリーナは悪戯っぽく笑って言った。
「あら、警戒してらっしゃるの?」
更に続けて、
「統一党ユニファイラーについてはまだよくお話してないじゃないですか」
と言ったのにはラインハルトも驚いたのである。
「先日、わたくしが統一党ユニファイラーに誘われたと言うお話しましたでしょう?」
「ええ、でもエゲレア王国の人たちにのみ話してたじゃないですか」
「そうですわね。でも、ラインハルト様やジン君にも話しておいた方がいいと思って。ここはセルロア王国ですから、エゲレア王国に配慮する必要ありませんしね」
そうステアリーナが言うのでラインハルトも聞く気になった。
「統一党ユニファイラーがわたくしに接触してきたのは1年くらい前でした。この世界を変えたいから力を貸せ、というようなことを言われた憶えがあります」
お茶テエエをすすり、一息入れたステアリーナは話を続ける。
「考えさせて下さい、と言うと一旦帰ったんですが、5日後くらいにまたやってきまして、それからは毎日来るように」
仁が聞いたらインチキ宗教の勧誘みたいだ、とでも言っただろうか。
「そのたびに勧誘の言葉も違いましたわ。『金』『権力』それから……ああそうそう、『男性』なんてのも報酬にちらつかされましたわね。わたくし、男性を報酬に欲しいなんて思いませんことよ」
そう言ってステアリーナは笑った。
「はっきりと断ったのは5回目くらいの時でした。そうしたらその人は来なくなったんですが、帰りしなに『後悔するぞ』って……」
「何て言いますか、典型的な脅迫ですね」
ラインハルトもお茶テエエを一口飲む。なかなか香りがいい。
「その後、一度誘拐されかけましたのよ」
「えっ?」
「詳しくは恥になりますので勘弁して下さいね。その時は王国騎士の方に助けていただいたのでこうして無事でいますの」
「そうだったんですか……」
ラインハルトもエルザの事があったので他人事ではない。
「今日だって王国騎士の方が2人、わたくしを陰ながら守って下さっていたはずです」
「気が付きませんでした」
武官ではないラインハルトにはまあ無理であろう。
「ですので、ラインハルト様、あなたもご自分の置かれた立場をもう少し自覚なさって下さいまし」
「そう、ですね……」
それから後は他愛のない話が続けられた。言葉の端々に、ステアリーナは仁ともう一度会っていろいろ話がしたかった事が透けて見えるようだった。
「と、いうわけさ」
ラインハルトからの長い話はそれで終わった。
「気をつけてくれよ?」
「ああ、これからは1人で出歩かないようにする」
「うん、そうしてくれ」
ラインハルトとのホットライン(?)はそれで一旦切られたのである。日本秀身堂救急箱
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第5列クインタのデネブ1にエルザとミーネに買ってきてもらった服を着せ、他の者達の服を買いに行かせた。
アンの助言により新品では目立ちすぎるというので、古着を買うことにした。
ブルーランドにも買いに行ったりさせ、これを繰り返してその日のうちに全員が服を手に入れたことで人間の町で暮らしてもわからないようになったので送り出す。
「それじゃあ頼むぞ」
「了解しました、チーフ」
ポトロック、ブルーランド、砦跡のように転移門ワープゲートのある場所を起点に、各地へ散らばらせる。
全員、朝と夜に老子へ定時連絡を入れることになっている。
適当な地点には小型の転移門ワープゲートも設置したりする計画だ。
「これでひとまずはよし、と」
全員転移していったのを見届け、仁は深呼吸する。
「さあ、次は何をするかな?」
それに答えたのはもちろんアン。
「ごしゅじんさま、先日薬を研究されたようですが、使った血液はどうやって保存していますか?」
「ん? 冷凍だけど」
「それって、元の血のままですか?」
「ああ、そうだが」
するとアンは慌てた様子で、
「いけません! 血液というものは保存が難しいのです!」
と言ったので仁も、
「老子、アンがこう言ってるが?」
と言うと、老子が答えた。
「はい、その通りです。アンからコピーした情報の整理がついたのが昨夜でして、すぐに対応しました。御主人様マイロードへの連絡が遅れて申し訳ございません」
仁はほっとした。
「そうか、それならいいんだ。あれだけのレア素材、駄目にしたらもったいないからな。……で、冷凍が駄目だとするとどういう保存をするんだ?」
これに答えたのはアン。
「必要なのは赤いところではなく、液体成分です。分離してしまえば、魔力庫エーテルストッカーでほぼ劣化無しに保存できます」
「魔力庫エーテルストッカー?」
仁も知らない単語であった。
「魔力庫エーテルストッカーとは、空気中の自由魔力素エーテルを20パーセント以上に上げた貯蔵庫です。魔力を持つ素材を半永久的に劣化させずに保存できます」
アンが説明する。これは朗報だ。
「昨夜のうちに貯蔵庫を作り、血液を移し替えておきました」
老子も報告する。事後になったが、こういう事であれば仁も咎めるつもりはない。むしろよくやった、と賞賛する。
「そうか、それなら安心だ。そうしたら老子、正式な回復薬の作り方は解析済みか?」
「はい。曖昧だった部分も補完が終わり、手順はわかっております」
ということなので、さっそく回復薬の生産に入る。回復薬の有効性はミーネで実証済、これから需要が増えるだろう、との判断からだ。
遠心分離はその通りだった。但し亜音速でやる必要は無いが、結果としてその次の濾過工程が短縮されることになった。
「普通なら分離した血清を濾過するのか」
「はい。3度に分けて濾過します。けれど礼子さんのおかげで最後の濾過だけで済みますね」
礼子による亜音速遠心分離は濾過の手間も2段階省いてしまっていた。
今回は10リットルほどを処理していく。
真血清は3リットルほどになった。残りは残りで、いろいろな薬品や、毒薬にまで使えるというので魔力庫エーテルストッカーに保存しておく。
「これってほぼ液体状の自由魔力素エーテルといっていいよな」
仁の問いかけにアンも肯く。
「はい。魔結晶マギクリスタルが結晶した自由魔力素エーテルなら、これは液体状の自由魔力素エーテルと言えるでしょう」簡約痩身
純度は70パーセント以上。アンのいうところでは30パーセントを超えれば十分実用的と言うことなので、期待できる。
「一度自由魔力素エーテルを浴びせると、不純物が沈殿して更に純度が上がります。それを薬剤基ドラッグベースと言います」
自由魔力素エーテルを取り込むもしくは結びつくような成分が真血清の中に存在するようだ。これは魔力の高い魔物ほどその成分が多いらしい。
「それでしたらお父さまの血液はどうなるのでしょう?」
今まで黙っていた礼子が口を出した。
「お父さまはおそらく海竜シードラゴンよりも魔力が高い筈です」
「なんだって……うーむ」
考え込む仁。確かに仁の仮説では、自由魔力素エーテルは肺から取り込まれ、血液に溶けるという見解だ。ならば血液中の自由魔力素エーテルを取り込む能力が高いほど魔力が多いということになる。
酸素と赤血球の関係に似ている。赤血球が多いと酸素摂取能力が高いということになるのだ。
「よし、そのうちに俺の血でも試してみるか」
とは言ったものの、あまり気乗りはしない仁であった。
仕切り直して、仁は急いで自由魔力素エーテルボックスを作る。魔力庫エーテルストッカーの能力を4倍にしたものである。
「ここに入れておけばいいんだな」
大型冷蔵庫ほどの大きさにした自由魔力素エーテルボックスに薬剤基ドラッグベースを入れながら仁が言った。
「はい、1日で十分です。残った不純物も沈殿しますので、一石二鳥です」
この日はあと20リットル分の処理をし、計約10リットル分の薬剤基ドラッグベースを作ったのである。
この日の昼食はミーネ謹製焼きたてのパン、同じくシトランのマーマレード、ペルシカのジュース、野菜炒めであった。
仁は食事の後、ラインハルトの消息をエルザに話す。
「今度はアスール川だってさ。また待たなけりゃいけないとぼやいていたよ」
「ん。行きにもその2つの川を渡るのに1週間掛かった」
「ホントに、あの国は何考えているんですかね。ラインハルト様もよくよくお気を付けなさらないと危険ですよ」
仁も少し気になったが、一国の外交官を白昼堂々と襲うことはないだろうと思い、その日はそれで蓬莱島へ戻ったのである。
「さて、ゴーレムスーツ研究用の鎧は第5列クインタに探させるとして、午後は何を作るかな」
仁は早速やることを考える。
「陸上の移動手段があまりありませんね。先日拝見しましたが、自動車、ですか? ああいった移動手段を陸軍用に開発すべきかと」
アンの助言に仁は肯く。戦車、装甲車、軍用トラックなどが頭に浮かぶ。
「そうだな、懸架装置は馬車を作ったからな。あのゴーレムアームを使えばいいだろう」
早速構想を練り始める。SUPER FAT
BURNING
キャタピラは面倒なのでその分車輪を増やして8輪。ゴムは保たないだろうと、海竜シードラゴンの革を代わりに張る。
8輪独立懸架、エンジンは8気筒、いや8連ゴーレムエンジン。各車輪に一基ずつ。フレームと装甲板はアダマンタイト。
外を見るのには非常時に開閉式の窓を使うが、普段は魔導投影窓マジックスクリーンを展開、まるで壁がないかのように外が360度見える。望遠にもなる優れ物である。もちろん暗視も可能。
武装はレーザー砲1門、レールガン(砲)1門、ウォータージェット1門。
定員4名。魔素通信機マナカム搭載、バリア展開可能。
泥地に嵌り込んだ時のためにワイヤーロープとウインチ装備。
更に補助の魔法型噴流推進機関マギジェットエンジンを4基備え、車重を5分の1程度まで軽くする事が出来る。
室内は空調完備、狭いながらも交代で仮眠が取れるよう折り畳み寝台2台。
仁は思いつくまま装備を付け足していく。とんでもない仕様である。
「よし、こんなものかな」
「ごしゅじんさま、飲料水と食料庫、薬品も必要です。それに投光器」
アンが足りない分を指摘してくれた。投光器は可視光以外にも赤外線、紫外線を出せるようにすることにした。
基本設計を老子に伝えれば、仁にしか作れない重要部品以外は用意してくれるので仁の負担は軽い。
このようにして3日目は暮れていった。
夜、ラインハルトとの会話。
「ダリにいる。テルルスと同じように賑わっている。胡散臭い奴らがうろついているようだ」
「大丈夫なのか?」
「ああ、この街にもショウロ皇国からの派遣兵がいるので護衛を頼んであるから心配するな」
「それならいいが」
「あ、そうそう、意外な人に会ったよ」
「誰だい?」
「ジンも知ってる人さ」
「俺が知ってるセルロア王国の人っていうと……ステアリーナさんかい?」
「あたり。彼女は王宮への報告をした帰りだってさ」韓国痩身一号
