variety0116のブログ

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翌日、24日。
 朝食を大急ぎで済ませた仁は、まずカイナ村へ跳んだ。報告のためである。
 マーサの家へ行くと、ちょうど起きたハンナが顔を洗いに出てきたところだった。
「おにーちゃん!」
 仁を見つけたハンナが駆けてきて飛び付いた。仁はそんなハンナを抱き上げる。
「おはよう、ハンナ。ちゃんと終わらせてきたよ」
「おはよう、おにーちゃん! じゃあ、もうどこへも行かない?」FITXスーパー脂肪解消カプセル
 仁はハンナをそっと地面に降ろすと、
「うーん、後片付けがあるから、あと1日、待っていてくれるかい?」
「えー……」
 そんな話をしていると、声を聞きつけてマーサ、エルザ、ミーネも出てきた。
「お帰り、ジン」
「マーサさん、ただいま。エルザ、ミーネ、ただいま」
「お帰りなさい」
「お帰りなさいませ。ご無事で何よりです」
 仁は、全員に向かって、統一党ユニファイラーを無力化したこと等を簡潔に説明する。
「あとは、統一党ユニファイラーの再編成というか、無力化した統一党ユニファイラーに償いをさせようと思うんだ」
 主席、第2席が洗脳されていたことを説明する。エルザは多少知識があったのですぐに納得したし、ミーネも心当たりがあったので理解は早かった。
 マーサはなんとなくしかわからなかったようで、ハンナに到っては言わずもがな。
「まあ、とにかく今日1日、いろいろと後片付けをしてこようと思うんだ」
 そんな仁の説明に、ハンナも渋々頷いたのである。

      

「さて、それじゃあまずエレナ、お前の役割だ」
 蓬莱島に舞い戻った仁はエレナを呼んだ。
「はい、ごしゅじんさま。何をすればいいでしょうか」
「お前はこれからしばらく、統一党ユニファイラーの顧問として、その組織の解体と再生をだな……」
『エレナさん、必要に応じて私も手伝いますので……』
 と、老君にも補足してもらいながら指示を出した。

「それではごしゅじんさま、行ってまいります」
 ファルコン4に乗り、アスール湖の浮沈来基地経由でエレナは統一党ユニファイラー本部に戻る。
 そこには(元)主席ジュール・ロランと第2席ドナルド・カロー・アルファがいる。
 2人とも死にかけたり衝撃ショックの魔法を受けたりで洗脳は解けている。
 また、元破壊姫であるエレナの記憶には潜在意識誘導サブリミナルの魔法についての情報もあった。もちろんその解き方も。
「うまくやってくれよ……」
 研究所裏手の巨大転移門ワープゲートに消えるファルコン4を見て、仁は成功を祈った。
 仁の目算としては、以下のようになる。

 元々統一党ユニファイラーの理念は魔導大戦前のディナール王国を再現することだった。それが黄金の破壊姫によって、大陸の統一へとすり替えられたのである。
 そこで、TOP2が正気に戻った事を使い、幹部から平党員にいたるまでの洗脳を解き、無害な集団にしてしまおうというのだ。
 その際、破壊姫が教えた過去の技術以外にも幾つかを与えて求心力にするつもりであった。
 具体的には『魔素通話器マナフォン』を考えている。これは言うなれば魔素通信機マナカムの劣化版で、無線ではあるが、特定の相手とだけ通話できる通信機である。
 その大きさも、だいたい大きな机くらいで持ち運び出来るものではない。魔素通信機マナカムのように相手を選択することも出来ない。が、各国首脳間のホットラインになら十分使える。
 これの更に劣化版というか、小型だが有効距離の短いものは統一党ユニファイラーでも破壊姫と主席の間で使われていたようだ。だから特に広めて不味い技術というわけでもない。
 こういった技術は、新生統一党の求心力にすると共に、周辺国家への詫びも兼ねることとなる。
 ジュールやドナルドがどんな形で謝罪をするつもりかまではわからないが、その時にこの技術を供出することで、少しは罪滅ぼしになるだろう。
「しかし、でかいな……」
 老君が試作したという魔素通話器マナフォンは本当に机くらいある大きさであった。
「長距離を繋ぐと言うことは大変なんだな」
 大きくなっている原因は、たくさんのパートに分かれているからである。そのパートの一つ一つが高度な魔導具なのだ。
 あらためて、自分が作った魔素通信機マナカムの到達距離に感心する仁であった。何せこの星の裏側まで届くのだから。
「そうしてみると、俺の作った方は魔力素マナでなく自由魔力素エーテルを使っているんだろうな……」
 古代遺物アーティファクトである魔導投影窓マジックスクリーンを解析してその方法を応用した時には気が付かず、うっかり魔素通信機マナカムと名付けてしまったが、実際には自由魔力素通信機エーテルカムとでも言うべきだった。まあ、語呂が悪いので今のままでいいと思っているのだが。
 余談だが、小型化には、漢字使用が大きな貢献をしている。言霊でもある魔法語マギランゲージは、表音文字よりも表語文字で書くと効果が数倍になるのだから。

 閑話休題。
 統一党ユニファイラーについてのサポートは老君に頼むとして、各国への補助が残っている。
 これは別に仁が悩むことではないのであるが、介入が遅くなったために犠牲者や被害が出ていることから、何らかの援助をしたいと思っているのだ。
「偽善でもやらないよりいいよな……」
 ということで、まずは一番の被害国と思われるエゲレア王国に、資材として溶けたゴーレムから作ったインゴットを贈ることにしたのである。
 その量、鋼鉄がおよそ200トン、青銅が200トン、軽銀が50トン。アダマンタイトとミスリル少々。時価にして約1500億トール。
 同様に、クライン王国テトラダにもその半分を寄贈する予定。
 加えて、押収したエルラドライトの中で、国の刻印が刻まれているものはその国に返す事にした。エゲレア王国へは15個、クライン王国には10個である。
 セルロア王国とフランツ王国、それにエリアス王国の刻印はなかった。簡約痩身
 これら全て、溶けたゴーレムからの素材なので、蓬莱島の懐は痛まない。かかる手間だけである。
 エルラドライトも、刻印無しのものが41個、仁の手元に残った。十分である。
 夜中に、消身ステルス機能を追加したペリカン数機を使って運び込んでしまう予定。
 朝になって驚く資材倉庫管理官の顔を思うと笑いがこみ上げてくる仁であった。

      

「……いつになったら出発できるんだ」
 帰国途上のラインハルトとフリッツ達は、セルロア王国内のごたごたとかで、更に足止めされていた。

      

『御主人様マイロード、統一党ユニファイラーの傀儡を教えた各国首脳部の対応ですが』
 今、仁は老君からの報告を聞いている。今朝、第5列クインタからもたらされた最新の情報だ。
『クライン王国、エゲレア王国は傀儡とみなされた者をとりあえず更迭しました。セルロア王国はまだもめているようです』
 セルロア王国は統一党ユニファイラーが最も深く根を下ろしていた国であるから無理もない。
『派遣した軍は全てそれぞれの国へ引き上げました。国境線は元に戻ったようです』
 それでも、侵略したされたと言う事実は消えるものではない。謝罪や賠償金などのやりとりは各国でやってもらうとして、仁が気にしているのは一般人のこと。
「庶民の被害状況は?」
『はい、僅少だそうです。事前に避難を始めていたので庶民には死者はいません。重傷者が計24名、軽傷者が249名』
「重傷者にはこっそり回復薬与えたいな」
『はい、可能です。今夜第5列クインタに指示を出しましょう』
「うん、そうしてくれ」
 これで仁もかなり気が楽になった。
「あとは、やっぱり知り合いの様子が知りたいかな?」
 そう呟くと、老君はすぐに反応。
『はい。わかっている範囲ですと、クライン王国のリシア・ファールハイトさんはテトラダにいらっしゃいます。救護騎士隊として頑張ってらっしゃいます』
 あのリシアが、と仁は思う。やりたいことが見つかったのだろうか。
『ビーナさんとクズマ伯爵ですが、伯爵は出兵に加わってらっしゃいましたものの、紛争が終結しましたのでブルーランドに戻られたそうです』
 そろそろ結婚式だろうか、と考える仁。
『ポトロックのあるエリアス王国は今回の騒動とは無縁なようです』
 マルシアは頑張っているだろうな、と仁はポトロックでの日々を懐かしく思い出す。
『エゲレア王国首都アスントの混乱はまだ続いているようですが、収束に向かい始めているとのこと』
 アーネスト王子やライラとのやり取りは楽しかったなあ、と仁は思い出して笑顔になる。
『以上です。なお、セルロア王国のテルルスは今のところ封鎖されており、人の出入りは出来ません』
 テルルスと言えば、治癒師のサリィはどうしているだろうか、と思い出す。
「そういえば、シーデたち一家もまだいるんだろうか」
『あ、その方達でしたら紛争前に帰国されているようです。第5列クインタのカペラ3がディジールで見かけたそうですので』
「そうか、それなら良かった」
 まだいろいろ気になることはあるが、とりあえず打てる手は打った、と仁は肩の力を抜く。
 そこへ礼子がシトランジュースを持ってやって来た。
「お父さま、一休みして下さい」
「ああ、ありがとう」
 良く冷えたジュースを飲みながら、ようやく訪れそうな平穏と、これからのことに思いを馳せる仁であった。

もしもエレナを見つけたのが仁だったら

ある日、各地に派遣した第5列クインタの1体から耳寄りな情報がもたらされたと老君から報告があった。
『御主人様マイロード、アスール湖西岸に観光地化した古代遺跡があるのですが、その地下に大きな空洞がある模様です』
「うん、そこはまだ発見されていないんだな?」
『はい。御主人様マイロード』
「うーん、面白そうだな。たまには行ってみるか」
 仁がそう呟くと、礼子がそれに異を唱える。
「お父さま、何があるかわからないそんな場所に自ら行かれるなんて危険です」
「んー、礼子もいるし、遺跡だから今回はアンも一緒に行って貰おう。で、強化服と『正宗』『村正』も持っていくから」
 礼子はまだ少し渋い顔をしていたが、
「仕方ないですね。私も桃花と魔力砲マギカノンを持っていきますから。それと隠密機動部隊SPには麻痺銃パラライザー、超高速振動剣バイブレーションソード、電磁誘導放射器インダクションラジエータをそれぞれに持たせましょう」
 と言った。それを聞いた仁は、いったい何と戦うつもりだ、とは思ったが、それを言うとやっぱり危険なので行かないで下さい、と礼子が言いそうなので口を噤んでおいた。
「アスール湖の浮沈基地を経由すれば時間はかからない。向こうの夜中に着くよう時間調整しよう」

      

 仁専用垂直離着陸機VTOL、ペガサス1でアスール湖の浮沈基地から飛び立った仁は、3分ほどで目的の遺跡上空に達した。
「第5列クインタが出迎えています。地上に人影は見あたりません」紐斯葆濃縮藤黄果カプセル
 遺跡を発見した第5列クインタがいる上、赤外線及び目視で探知した結果、人影は皆無。
 目撃される危険は僅少と判断し、ペガサス1は遺跡前広場に着陸した。おあつらえ向きに石畳なので砂埃も立たず、着陸は楽であった。
 まず隠密機動部隊SPが出、あたりを警戒。1分後、礼子が、続いてアンが。最後に仁が降り立った。
「遠路お疲れ様です、チーフ」
 アスール湖西岸担当の第5列クインタが頭を下げた。
「出迎えご苦労さん。で、問題の遺跡だが、どこなんだ?」
「はい、こちらです」
 光の玉ライトボールであたりを照らしてみる。そこには魔法で強化された石材で組まれた柱、建物が点在している。ただ、強化の魔法も切れかかっており、建造物は風化が始まっていたが。

 第5列クインタに案内され、遺跡の端へ向かう仁。大きな柱と柱の間で立ち止まった第5列クインタは、
「この地下に大きな空洞があります」
 と地面を指差して言った。
 音響探査ソナー魔法で地面を調べた仁は、間違いなく地下に大きな空間があることを知る。そこで礼子に指示を出す仁。
「礼子、ここを30パーセントの力で殴ってみろ」
「はい、お父さま」
 仁達が少し離れたのを確認した礼子はその可愛らしい拳を振るい、地面に叩き付けた。
 同時に轟音が響き、地面がひび割れ、陥没する。礼子は身軽に飛び退き、落下を回避した。
 土埃が収まると、そこには大きな穴が開いていたのである。
「暗いな。『明かりライト』」
 明かり魔法で照らしても、底は見えない。そこで第5列クインタが、
「チーフ、私がまず降りてみます」
 と言って穴に飛び込んだ。
 しばらくして、魔素通信機マナカムで報告が入る。
『大丈夫です、異常有りません。どうぞ下りてきて下さい』
 そこで仁達一行は穴の中へと向かった。仁は礼子に抱えられて、アンや隠密機動部隊SPは自力で。
 下り立った遺跡の穴は小広く、通路が左右に伸びていた。どちらでも良かったが、仁は小さい方の通路へ向かう。
 少し行くと通路は下りになる。通路の壁には薄暗いながらも自由魔力素エーテルによる永久発光素子が埋め込まれていた。
「研究所のものより低級ですね」
 薄暗い光を見て礼子がそう評した。
 やがて扉が現れる。鉄製で、赤く錆び付いていたそれを前に、アンがぽつりと言った。
「ごしゅじんさま、ここは昔の砦、その非常用避難部屋のようですね」
「ふうん、それじゃあこの奥には何かありそうかな?」
 仁がアンに尋ねる。
「はい、非常用の魔導具とか、武器とかがある可能性が高いと思います」
「よし、開けてみよう」
 仁が押してみたが重くてほとんど動かない。代わって礼子が押す。蝶番が軋んでいたが、途中で壊れ、扉は大きな音と共に室内へ倒れこんだ。埃が舞い上がる。
「ぷぷっ、こりゃひどい。『強風ウインド』」
 風魔法で埃を室外に追い出す仁。これでようやく室内を見渡す余裕ができた。
 室内には、アンが言っていたとおり、かなりの数の魔導具があった。年月を経て壊れているものもあったが、3分の1はまだ使えそうに見える。
 隠密機動部隊SP達に回収を命じる仁。そして一番奥に見つけたもの。
「あれは……」
 それは1体の人形であった。仁にはすぐ、それが自動人形オートマタであるとわかる。姿形は少女。だが生気はなく、床に座り壁にもたれかかっている。左腕は壊れ、肘から先が無い。
「これは、まさか……『黄金の破壊姫』?」
 そう言ったのはアン。
「アン?」
「おそらくですが、この自動人形オートマタは『黄金の破壊姫』です。魔導大戦初期、私の兄弟姉妹を破壊して回った、謎の自動人形オートマタ」
「ふうん、なるほど……」
 それを聞いた仁は触れないようにして自動人形オートマタを調べていく。
「まあまあの出来だな」
 それを聞いた礼子が頬を膨らませたのを横目で見た仁は慌てて言い添える。
「……とはいえ、礼子の足元にも及ばないが」
 礼子の顔が元に戻る。
「うーん、古い魔導具は回収するとして、この自動人形オートマタも惜しいと言えば惜しいな。よし、礼子、お前が持ち帰ってくれ」SUPER FAT BURNING
「はい、わかりました」
 背中に魔力砲マギカノンを背負い、腰に桃花を提げた礼子がその自動人形オートマタを担ぎ上げた。
 礼子が発するわずかな魔力を感じ取り、自動人形オートマタの目が開く。
「あなたが……私を起こしたの? ……ちょ、ちょっと、なにやってるのですか!?」
「あ、起きたな。やっぱり魔力を検知して目を覚ますよう自己設定してあったか」
「ちょ、ちょっと、放しなさい! 私は自動人形オートマタの女王! 女王の命令が聞けないの!」
 じたばた暴れてはいるが、がっちりと抱えた礼子の腕は万力のようで、いくら自動人形オートマタが振り解こうとしてもまるで意味をなさない。
「あ、あなたは、もしかして、アドリアナの……!!」
「うるさいですね。確かに私のお母さまはアドリアナ・バルボラ・ツェツィと申します」
「や、やっぱり! は、放しなさいいいいい!」
「うるさいですってば」
 礼子は自動人形オートマタを抱える手の力を強めた。
 バキバキと音がして、自動人形オートマタの骨格が歪んでいく。
「ぎゃあああああ!」
 ある程度の感覚を持っているのだろう、自動人形オートマタの悲鳴が響いた。
「うるさすぎます。お父さま、黙らせて下さい」
 礼子に頼まれた仁は自動人形オートマタに近づき、その首筋に手を当てた。そして、
「『停止スタンドスティル』」
 半ば強引に自動人形オートマタを停止させた。
「あ、静かになりました」
「やっぱり、この自動人形オートマタは黄金の破壊姫らしいですね」
 アンが、礼子に抱えられている自動人形オートマタを見下ろしながら言った。
「うーん、なんでこんな性格になっているんだろう。ちょっと興味あるな」
 仁はそう言いながらぐったりしている自動人形オートマタを見下ろした。

      

 帰り道は何事も無く、遺跡を出ることが出来た。穴から出るときは、隠密機動部隊SPが先に上へ登り、綱を垂らして仁を引っ張り上げたのである。
 そしてペガサス1に乗り込み、浮沈基地経由で蓬莱島に帰った。

 今、蓬莱島の研究所にある工房では、持ち帰った自動人形オートマタの解析が行われていた。
「うーん、骨格は軽銀、筋肉は魔法繊維マジカルファイバー。魔力炉マナドライバーはあるけど、魔素変換器エーテルコンバーターは無いんだな」
「お父さま、ということは?」
 危険防止のため、礼子が自動人形オートマタを押さえつけながら聞いた。
「うん、礼子達は魔素変換器エーテルコンバーターで空気中の自由魔力素エーテルを魔力素マナに変換して、その魔力素マナを魔力炉マナドライバーでエネルギーに変えているだろう?」
「はい」
「この自動人形オートマタは、魔素変換器エーテルコンバーターが無い代わりに魔素貯蔵庫エーテルタンクを持っていて、それを自由魔力炉エーテルドライバーでエネルギーに変えているようだな」
「そうするとどうなるのですか?」
 礼子は構造の違いを理解できるだけの知識を持っているが、効率などの事まではわからない。
「普通は魔力貯蔵庫マナタンクと魔力炉マナドライバーの組み合わせにするんだが、こっちの自動人形オートマタの組み合わせだと効率を犠牲にして代わりに出力を稼げるようだ」
「なるほど、自由魔力炉エーテルドライバーというのは初めて聞きました。自由魔力素エーテルを直接エネルギーに変えるため効率が悪いということですね?」
「そうだ。考えてみれば、魔素暴走エーテル・スタンピードが起きる前は空気中の自由魔力素エーテルが今より濃かったのだろうから、これでも良かったんだろうな」OB蛋白の繊型曲痩 Ⅲ
 仁が推測を述べる。
「でも、お母さまは私を今のような方式で作って下さいましたけど?」
 それに対して礼子の疑問が。
「ああ、それは当然、先代の方が技術的にも設計思想的にも上だと言うことだよ」
 力技で出力を稼ぐ構造と、繊細な制御で効率良く出力を得る構造。どちらが上かは言うまでもない。

「あとは、この制御核コントロールコアなんだが、どうもおかしい」
「どういうことでしょう?」
「うん、中古品に上書きしたみたいなんだ。うっすらと、所々に古い魔導式マギフォーミュラが消え残っている」
 仁は比較的大きめの制御核コントロールコアを眺めながら言った。
「これがこの自動人形オートマタが狂った原因の1つなんじゃないかなあ」
 そう言いながら仁はその古い魔導式マギフォーミュラを完全消去した。
「あとは、やっぱり製作者の遺言が何かやらかしている可能性だ」
 そう言いながら、仁は読み出しリードと読み取りデコンパイルの工学魔法を駆使して、その部分を探していった。そして探すこと30分、それは見つかった。
「ここだな。『あなたが一番』、か」
「『あなたが一番』、ですか、それは確かに、1つ間違えたらおかしくなってしまいますね」
 同じく1度は製作者を亡くした自動人形オートマタである礼子にはその危うさを理解することができた。
「うーん、『あなたが一番』、か」
 仁は首をかしげる。
「どうとでも取れる言葉だな。あなたが一番『になりなさい』とか、あなたが一番『素晴らしい』とか」
 いろいろ考える仁。そして、
「私でしたら、あなたが一番『好きだった』と言って貰いたいです」
 と礼子。
「まあ、普通ならそう言うかもなあ」
 仁も礼子に同意した。
「まあ、一応ガタが来たところや劣化した部品を修理してやるか」
 仁は自動人形オートマタの不具合箇所を修理した。そして再起動してみる。もちろん礼子の監視付き。というより礼子が拘束した状態で、だ。
「……ここは、どこですか」
 目を開けた自動人形オートマタ。
「あなたが私の腕を直して下さったのですか?」
 その口調に狂気はない。
「ああ、そうだよ。まだおかしなところはあるかな?」
 そう言って仁は礼子の拘束をゆっくりと解かせた。すると自動人形オートマタは身体を動かしてみて、
「いえ、どこも。とてもいい調子です。ありがとうございました」
 そう言ってお辞儀をした。
「直していただいたお礼に、あなたにお仕えしたく思います。どうか私に名前を付けて下さいませんでしょうか」
 そう言ってもう一度お辞儀をする。
 仁は少し考える。と、不意に名前が頭に浮かんだ。仁にしては珍しいことである。
「うーん、そうだなあ、それじゃあ、『エレナ』というのはどうだろう?」
 と言った。
「はい、私はエレナです。これからもよろしくお願いしますね、ごしゅじんさま」
 そう言ってエレナは深くお辞儀をし、礼子とアンに向き直って、
「お姉さま方もどうぞよろしく」
 と頭を下げた。

 これは、「もし」が許された世界。仁がエレナを見つけていたら、の世界。エレナにとって、幸せなその後を送れたであろう「もし」の世界の物語である。瑞徳夢減肥茶