13年ぶり | Varilog

13年ぶり

$Varilog-091003_2039~01.jpg

高校の時分、僕は演劇部に所属していた。


今じゃ知る人も少ないが、結構熱心にやってたもんだ。


そんな僕には忘れられない人がいた。



あれはそう、高3の折、


僕の通っていた高校は演劇大会で全道大会にまで進出していた。


そこに現れたひとりの男、


顔出ししておいて何だが、仮にS川くんとしよう。


彼は北海道の釧路シティーからやってきた。


全道大会の会場は網走。


ちょっと道外の人にはピンとこないだろうけど、


当時の高校生の行動範囲の常識からすれば、随分な遠出だ。


彼は、自分の高校が出場していないにも関わらず、やってきた。


そして、おそらく(個人としては)誰よりも目立っていた。


そりゃそうだ。彼はその大会に出場している誰よりも、演劇にアツい男だった。



2度目に会ったのは、その年か翌年の東京。


互いに示し合わせたか、全くの偶然かは忘れたが、


同じ大学を受験した折だ。


そのときは一緒に飯を食った。


なんの話をしたのか、それから何をどうしたかは忘れたが、


2人は互いに連絡先を告げず、それでも「いつかまたどこかで」と言って別れた気がする。





それから13年の月日が流れた。





俺には北海道釧路シティーには多数親戚がいる。


何年か前にS川くんのことを訪ねた時、僕の親戚は彼を知っていた。


彼はアツくて面白い先輩として有名だった。でも、その時はそれきりだった。



そして先月、僕は釧路シティーを訪れた時、彼の同級生に会った。


彼は「繋がるかどうかわからないけど」とS川くんの連絡先を教えてくれた。



正直、最初は困惑した。


さすがに13年だ。どんなに印象深いと言っても、記憶の風化は進行している。


お互いに街ですれ違ってもわからない可能性だってある。


それでも電話した。出なければそれまで、そんなつもりで。


彼は出た。元気だった。


そして、お互いまだピンとこないながらも、東京で一度飲もう、ということになった。



それが今日(2009年10月3日)。



彼は僕を忘れていた。僕も彼の顔をソレと見るまではおぼろげだった。


その後も2時間強、「知らない仲じゃないけど、知らない人」同士の会話は進んだ。


彼は芝居を続けていた。そして今は休んでいた。


彼は結婚していた。今は人に「ありがとう」と言ってもらえる仕事をしていた。



「北海道」「演劇」「東京」僕らのキーワードはこれだけ。


一緒に青春を謳歌したわけでも、


一緒に東京でつるんだわけでもない。



でも、少なくとも僕は、緊張しながらもこの再会を心の底から嬉しく思った。



別れ際に、お互いの詳しい連絡先を交換して、僕らは別れた。


またの再会を誓って。


彼も僕も、少しだけ大人に、自分の立場のある人間になっていたが、


彼は相変わらず、アツい男だった。