処刑遊戯 | Affection 記憶の旅

Affection 記憶の旅

Mianimiから創作小説や昔の映画や趣味を語ります・・・

処刑遊戯 なぜ、2006年最後に見たか・・・





処刑遊戯-1979年-

なぜ、2006年最後に見たか・・・それは、おでんくんです。
以前のエントリーで書きましたが、年末近くにリリーさんのおでんくんに優作が登場し、あまりハートフルな内容で、私は、久々にショックを受けました(良い意味です)。封印していた優作への思いが蘇えりました。そんな、おでんくん+リリーさんにお礼の意味で見ることにしたのです。
 





映画の冒頭・・・

暗いスタート、深手を負って吊るされている男・・・
やがて銃撃が開始される・・・
何が起きているのか見ている者はわからない・・・
12分以上の優作のアクションシーンが続くが

この間優作の台詞は一つもない。
(このあたりで、普通の人は飽きてくるでしょう)


いきなり引き込まれる鳴海ワールド・・・

そして再度捕らえられ、幽閉された鳴海昌平は
謎の行きずりの女の命と引き換えに、謎の組織から「殺し」を強制されるのだった・・・



正気に戻った鳴海は昨日、海辺を歩いたことを思い出していた。
「海で働く人が好きでね・・・」と、鳴海・・・
「あたしも小さい頃歌手になりたかった・・・」と女・・・
肉体で演じるのラブシーンのあと、精神的に似たもの同士を深く描く・・・
まるで俺達の勲章の横浜デートのよう・・・


 

このあと記憶が戻り、包帯を巻く様は、野性的でカッコイイ!
そして、可憐な森下の演じる時計屋に、懐中時計を修理に持っていく・・・
時計屋を出て行くときに、いったんスクリーンのこちら側とサングラスの瞳が合う・・・
このトレンチコート&サングラスの表情は、まさに、これぞ優作!

しかし、更に、バーに謎の女追って、店に入ってから回想するシーン。
間の取り方、暗い表情、しゃべり方、グラスの持ち方、そしてタバコ・・・
全てが松田優作ハードボイルド!久しぶりに味わいました。


ここで思ったのが、ああ、そう、理由はないってこと。
カッコ良いい、とにかく理屈なしにカッコ良い。
ハートに、ぐっと来るか、来ないか。
来ない人には、説明してもわからんでしょう。
来る人は、ただただ、画像を食い入るように見つめることでしょう。

ブラックレインでの、初めてスクリーンに登場する一連のシーンは
遊戯シリーズの延長、集大成であり、進化した自然な形って
これを見ていると感じます。
そのあとのダグラスとの初めてのファイトも、負けたのはシナリオとして
動作は、まさに、遊戯シリーズで鍛えたもでしょうね。
ちょっと、タイプは違いますが・・・
何か、佐藤が死なずに裏の世界で生きているようなイメージです。


まるでVSダグラスのブラックレインか・・・


結局、似たもの同士の女を助けるために、殺しの仕事を受ける鳴海。
しかし、片桐竜二もいる早朝の組織との駆け引き・・・
殺しのターゲットは、同じ殺し屋だった。

「死ぬも生きるもあんたの人生だから」

と最後に語尾があがるところ、痺れました。



その後、狙撃の準備で、銃を組み、特製の弾丸を作るシーン・・・
非常に丁寧であり、こだわりを感じるシーンです。

 

やがて、わかる女の正体・・・
鳴海の女への切ない心情と、やるせなさ・・・
女へバーでもらったテープを床を滑らせて返すシーン・・・
萌えます・・・私だけか・・・のちに重要なファクターになります。



そして、その思いは、一発の銃弾で過去のものへ・・・
更に女もそのスコープの中に捕らえるのだが・・・
あのテーマ曲とともに、鳴海は視線を落とし、その場を立ち去る・・・
そう、殺して欲しいと願う女を、鳴海は撃たなかったのである。



男を狙撃し、リリー演じる女に照準を絞る鳴海・・・


しかし、その瞳から凄みが消え、悲しく視線を落とす・・・


次の瞬間、強い瞬きで、サングラスをかける。
まるで、本心を覆うかのように・・・

女は組織の中で生きるしかなく、それを恨むことは意味がない・・・
鳴海は女の生い立ちを理解し、手をかけず、組織に戻したのである。
-心の奥底に優しさを持っている鳴海-
しかし、それは一度だけだった・・・
 

その後、森下の演じる時計屋に立ち寄る鳴海・・・
まるで、森下は天使のようである。
優しい言葉をかける鳴海・・・
立ち去る際に、不意に優しい言葉をかけられる鳴海・・・
「珍しい時計がある喫茶店・・・ご案内します」
その問いに、ごく自然に、「じゃあ、今度行こうか」
と答える鳴海・・・

この瞬間に、鳴海は、彼女の好意に僅かだか揺らぐ。
日常ではあり得ないプロのスナイパーの悲哀・・・
心にズドっとくるシーンでした。

*余談ですが、ここで、多少同感してくれた方は、きっと、あの優作が敬愛した、ロバート・デ・ニーロ(&パチーノ)の「ヒート」のイーディに対して「3分で立ち去る去るニール」や、唯一助かる相棒の、切ない妻との別れという、非日常の世界にも、似た思いを感じるのではないでしょうか・・・・


そして、いよいよ、組織との全面対決の準備を開始する鳴海の体を鍛える
シーンで、あの「おでんくん」を彷彿させるというか、逆に使われたシーンに
似たところがでるのです(ピンは、ここではないですが)



やがて、壮絶な銃撃戦のあと、組織を壊滅させた鳴海昌平・・・
しかし、それだけでは終わらなかった・・・組織の背景にはもっと大きな
力が潜んでいた。しかも、そこにいたのは、あの女だった・・・



最後に、鳴海が女に渡したのは、カセットではなく、拳銃だった!
そして、その渡し方は、あのカセットを床づたいに滑らせたのと同じ・・・!
ここが、ただのアクション映画ではない、ハートにズンと来る、優作の
こだわりだと思いました。わかる人にわかればいい・・・
そして、あのテーマ曲が流れる・・・


*この細い手の動きが素晴らしい・・・
握っても良いはずの拳を、あえて、指先まで軽く伸ばし
肩から腕全体、そして指先まで一直線になるとき、そこに「美」があります。
そう、ブラックレインのベンツから出るシーンを思い出しました。



ラスト、来るはずのない、時計屋に来た・・・!
そう、懐中時計の修理が残っていた・・・
時計を交換したのは、せめてもの鳴海のお礼でしょうか・・・
鳴海が店を立ち去り、その後姿を追う森下・・・
もう来ないのという予感を認めたくないような彼女の演技も光ました。



昔、昔見たときは、あまり、この時計屋のシーンは、つまらないと感じたのに、優作の歳を超えて見ると、とても心に響きます。
ハートにきます。何か萌えましたね・・・素直に不思議です。
若い頃には、わからなかった魅力が遊戯シリーズにあるような気がしてきました。残りの2作も見たいですね・・・

 

最後に、店を出る前に、森下に鳴海が言った言葉です。

「あっ、それからね、あんまり気安く男の人に声かけちゃ駄目だよ・・・
最も危険が・・・危ないよ」



では、良いお年を・・・

 

  • 処刑遊戯
    1979年
    監督/村川透
    脚本/丸山昇一
    撮影/仙元誠三
    音楽/大野雄二
    出演/松田優作、りりィ、青木義朗
         山本麟一、佐藤慶、森下愛子
    制作/東映セントラルフィルム


  •