夜王なので遅くになればなるほどご機嫌で活発になる。

昨日も、駆け回って、叫んで、ひとりロックフェスのような夜更けを過ごしていた。

お気に入りの「ぞうさん」の歌を鳴らしながら、上半身を左右に揺らす。ぞうさんの長い鼻を表現するように、右腕を振り回して、大きな8の字を宙に描く。これぞ僕のロックンロール。

さらにママに甘えるように近づき、乱暴を働く。なぜならロックンロールだからだ。髪を引っ張る、肩に噛み付く、頭突きする。すごい、内田裕也も真っ青だろ?ロックンロール。
一番強烈なのは、ママの腹の上でのストンピングだ。ロックからプロレスへのコンビネーションジャンプ。

これ、やがて弟か妹ができたとしたら、致命傷になるので、やめさせないと! みかねたパパ、ママから息子をひっぱがす。謝りなさい、ごめんしなさいと諭す。ちなみにものすごーくやさしくだ。

彼は謝らない。そのときは分からなかったが、そりゃロックンロールは謝るはずがない。にひひと笑ってごまかしている。

呆れる両親の冷たい視線の中、ごまかしのいないいないばあが始まった。カーテンに隠れる。使える舞台装置はなんでも使うというステージパフォーマンス。

沈黙に耐えられなくなったか、ばぁ、とか一人で言ってる。だれも見ていない。でも笑ってる。底抜けに明るいのはいいことだ。

そして、再びママの元へ。謝っていないから、ママの無視は続いている。横からパパが「ごめんねって言ったら?」と助け舟を出すが、ロッカーの辞書に謝罪はない。いや、本当に忘れ去ったのかもしれない。すごい。

ママに甘えるように、再び暴力。
そしてアンコールが彼にだけは聞こえたかのか、腹上ストンピング。with笑顔。

はい、撤収。
手負いのパパに抱えられて寝室へ連行された。で、人生で初めて閉じ込めの仕置きを食らう。

もちろん号泣。
ママあっち!あっち!
…そんなことはわかっている。それより反省しろい!

ドアノブもパパに固定されては、さすがのレスラーもなす術なし。彼には永く感じられたであろうが約一分後、ドアノブの固定が解除される。

一目散に暗闇の寝室を脱出しようとするが、まだそこにはパパが立ちはだかっている。「俊が悪い。出してもいいけど、ママにごめんしなさい」と伝えたものの半分パニックのロッカーは聞いていたのかどうか。

ママの膝の上にまた全力で駆けていき、一言。

「ママ、めんね!」

はやっ。ロックが暗闇に負けた。古今東西、子供の指導に効くのは閉じ込め作戦か。
しかし予想外の展開に少し泣きそうになる両親。ママは謝られたことにより、堰を切ったように頭を撫で回す。

「ママ、めんね」「めんね」
覚えたての他の言葉と同じように連発が始まった。
やがて、謝れば何してもいいという誤解も起こるだろう。いわゆる安売り。

でもまずはごめんねが言えなければその次はない訳だから。謝罪すらできないロックンロールの先に待ってるのは破滅だ。

今宵のロックフェスが終わった。祭りのあとは何事もなかったように電車で遊んでいる。

明日も踊り明かそう。ロックンロール。



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