台湾某所、我々取材班の前に突如として現れたそれは、まるで生きとし生ける者を死者の国へといざなうかのように、ぽっかりと口を開けていた……
禍々しくも憂いを感じさせるこの場所は、死者達の魂が眠っているとでもいうのだろうか……我々は寒々しい恐怖を感じつつも、不思議と地下の暗闇に続く階段へと吸い込まれていくのであった……
階段を下りるとひなびた臭いが鼻をつくが、人の気配がまったくないわけではない。ほの暗い闇を照らす弱々しい照明がところどころ、まるで消えゆく命のように我々の足元だけを照らす……少なくとも今の我々にとって、このわずかに残された文明の利器だけが頼りである……
もともとはとても栄えていたであろうその地下街には、過去の栄光を連想させる光景は何もない。ただ、無限に続く商店街のその規模の大きさから、かつての姿を想像するしかなかった……
ほとんどの店はシャッターに閉ざされ、そうでない店は退廃した姿を我々へとさらしている。かつての人々の活気と喧騒が、まるで亡霊のように我々の脳裏をかすめるのであった……
ほこりっぽい広場を抜けて地下街の奥へと歩みを進めると、暗闇がいっそう色濃くなってくる。一部の壁ははがれ、また一部のガラス扉は割れ、一歩を踏みしめるごとに増えていく悲しい障害物が、前進を試みようとする我々の意志を阻もうとするのであった……
お気づきだろうか?
右手奥の暗闇の中に、まるで人の顔のようなものが浮かび上がっているとかいないとか、そう見ようと思えばそう見えるというか、その気になればそういう目で見れるだろう雰囲気であるということに……
日本でこのような光景を目にすることはまずないだろう。廃墟と化しつつもまだ生きながらえようとするその姿は、自らの死を理解しようとしない地縛霊そのものとでもいうのだろうか……
物語はまだ始まったばかりであるが、我々は強烈な不安とノスタルジーに駆られながら、この暗闇に呑み込まれそうになっているのを実感せざるを得なかった。やがて我々自身も、この暗闇の住人と化してしまうかもしれない。そんな不安に駆られながらも、我々はこの地下墓地のような悲しみの牢獄から抜け出す術を既に奪われていたことに、この時はまだ気が付いていなかったのである……
あ、シッキーでした。




















