さて、今回は前回に引き続き、「ニコチンって実際、どういうものなの?」という疑問にお答えいたします。
写真をご覧ください。これが濃縮された高純度(99.9%)のUSPグレードニコチンです。


形状はやや黄色がかっており、かなりの刺激臭がします。保存用の瓶のフタを開け、およそ20cm程度に鼻を近づけただけで刺激がきて危険を感じるほどのレベル。アンモニアもなかなかひどいですが、違うベクトルでそれ以上に凶悪な印象を受けます。
ニコチンと言えばタバコですよね。
この液状ニコチンはおそらく合成されたものかと思いますが、ほんの少量で人を殺す劇物です。タバコ葉には天然由来のアルカロイドとして含まれており、高い依存性があるとされています。
WHOによると、ニコチンはヘロインやコカイン、アンフェタミン(覚醒剤)と同等の依存性があるとのこと。そしてニコチンには、依存性が非常に高い割に自覚症状が小さいという特徴があります。
ちなみに“依存性”というのは、いわゆる「やめようと思ってもやめられない」といった症状を引き起こすもので、依存性そのものが体に毒なわけではありません。依存することにより常習性が高まり、常習する事によって有害物質を摂取する頻度が多くなった結果、その有害物質から人体ダメージが生まれます。
ヘロインは例外的で、身体依存が生じて禁断症状が起こりますが、ニコチンのそれは「イライラする」「落ち着かない」といった程度の軽度なものです。
さて、ニコチンがなぜ危険なのかというと、まずはそれ自体が猛烈が毒物だからです。実際僕は、この純度100%のニコチンを一滴舐めてみました(※絶対に真似しないでください!)。
一滴舐めてどうなったかというと、まずは舌先から後頭部へと痺れるような感覚が広がり、やがては頭全体が痺れる状態に。それが十秒程度続きました。明らかに危険です。やっちゃいけないことだと分かっていてもやらずにいられないのは、物を創る人間の好奇心とでもいいましょうか。知識ではなく実体験でしか満足・納得できない悪い癖があります。ですから僕は色々なことに体を張りますが、そんなことをするのは僕だけで十分。念を押すようですが、本当に危険なので絶対に真似しないでください。
ニコチン一滴を舐めただけでかなり強い影響がありましたから、わずか10-60mg程度で致死量に至るというのも頷けます。ニコチンをリキッドに使用する際は、これを何百倍にも薄めて使用するわけです。
液状ニコチンが欲しいからといって、タバコ葉を水で抽出するというようなことをしてはいけません。これも同様にとても危険な液体が出来上がります。必要以上に濃縮される可能性がある上に、ニコチン以外の有毒物質や不純物まで抽出されるわけですから、なおさらたちが悪いかもしれません。管理コントロールできない分、リスクは増すもの。ですから、タバコ葉からニコチンを抽出しようとしてはいけないのです。
ちなみに、これがタバコ葉から抽出したニコチンです。


高純度のニコチンと比較すれば一目瞭然ですが、色合いからしてもう不健康です。なぜこのような色合いになるかというと、ニコチン以外の不純物まで抽出されているから。
タバコには数千もの化学物質が含まれていると言われています。実際、タバコおよびタバコの煙から、3000から4000程度の化学物質を分離したという厚生労働省の報告があります。もし純粋なニコチンが欲しければ、この液体から余計な物質を分離し、ニコチンだけを抽出しなければなりません。そのためにはおそらく、大規模な資金とマシンが必要でしょう。
では、タバコ葉にはどのような化学物質が含まれているのか。主たるものとしてはまずニコチン(有害物質)、そしてタール(発癌性物質)、ナフチルアミン(発癌性物質、発癌性の強さから1972年以降、製造や使用が禁止されている危険物質)、アンモニア(有害物質、タバコの煙が目に入って痛みを感じる原因。液状アンモニアが目に入ると失明の危険も)、ニトロソアミン(発癌性物質、タバコから生じる発癌性物質の中で最も強力と言われる)、カドミウム(発癌性物質、四大公害病の一つであるイタイタイ病の原因となった有害物質)、ベンゾピレン(発癌性物質、肺がんや皮膚がん、変異原性や催奇形性が報告されており、国際がん研究機関では発癌性リスク一覧でグループ1に分類されている非常に危険な物質)など。この他にもまだまだたくさんあります。読んでいるだけで禁煙効果に期待できそうなほどの顔ぶれです。
ニコチンは入手が簡単ではありません。英語が分からなかったりクレジットカードを持っていなかったりするとなおさらです。だから安易に「タバコから抽出すればいいじゃん」という発想が生まれるのも分からなくもありませんが、今回お話ししたように、タバコ葉からニコチンを抽出しようとすると、おまけでついてくる付属品が凶悪過ぎるのです。減煙に期待してVapeを楽しむのならなおさら、タバコよりも体に悪いかもしれない謎液に挑戦するメリットなんて何もありません。
今後、ニコチンユーザーがさらに増えてくる可能性があります。危険物が活躍の場を増やすとどうなるか。事故が起こるというのが世の常。
ニコチンは、単体だと本当に危険な物質です。ニコチン入りリキッドも然り。子供やペットの手の届かないところで保管するだけでなく、その危険性を熟知していない人間からも遠ざけておくべきでしょう。命に関わる重大な事故を起こしたくないのなら、扱いには神経質になるべきです。
むやみに危機感をあおりたいわけではありませんが、ニコチンユーザーであればこのくらいシビアな感覚を持っておいて足りないということはありません。
次回は、Vape用フレーバーリキッド(E-Juice)の正体についてお話しします。
