国産み ~其の肆~ | 神々の東雲

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わたくしたちの美しい国日本の成立を、記紀や神様のはなしを中心にまとめました。

二回続けて不具の子が生まれてしまったイザナキさまイザナミさま。

一体なにがよくなかったのかと、別天神のところにお尋ねに参ります。

この箇所には、古事記の持つ世界観が満載しております。

これから記紀を読んでいく上でもとても重要なポイントになります。

まずは原文を読んでみます。

 

※古事記の原文

於是、二柱神議云「今吾所生之子、不良。猶宜白天神之御所。」

卽共參上、請天神之命、爾天神之命以、布斗麻邇爾上此五字以音

ト相而詔之「因女先言而不良、亦還降改言。」

故爾反降、更往廻其天之御柱如先、於是伊邪那岐命先言「阿那邇夜志愛袁登賣袁。」

後妹伊邪那美命言「阿那邇夜志愛袁登古袁。」

如此言竟而御合生子、淡道之穗之狹別嶋。訓別、云和氣。下效此。

 

※現代語訳

そこで二柱の神は相談して

「今私たちが生んだ子は良くなかった。

もう一度天つ神の処へ行ってどうすべきか申し上げよう」といい、

ただちにいっしょに高天原へ参上して天つ神の御意見を仰がれた。

天つ神は鹿の骨を焼いて占い、

「女が先に言ったのが良くない。もう一度帰って言い直しなさい」

と仰せになった。

そこで帰り降って、もう一度、天の御柱を先のようにお回りになった。

そこでイザナキが先に

「あなたはなんてすばらしい女なのでしょう」と仰せになり、

つぎにイザナミが「あなたはなんてすばらしい男なのでしょう」と仰せになった。

このように言い終えて、男女の交わりをしてお生みになった子は、

淡路之穂之狭別島(アワジノホノサワケ、淡路島)である。

 

 

3つポイントがあります。

① 天津神の世界観

② 神さまと占い

③ 男尊女卑と近親結婚

 

①まず、ここで古事記の世界観がかなりはっきりしてきます。

イザナキさま、イザナミさまも神様ですが、その上に別天神さまが

いらっしゃることが分かります。

ちなみにこれは今後色々なところでご紹介しますが、古事記に出てくる神様は

「天つ神」と「国つ神」に分かれます。

「天つ神」の中でも「別天神」は別格です。

古事記の文面では、天地開闢で現れたもののすぐに姿を消したという

表記ですが、姿がみえないだけで存在はしているのです。

 

②別天神は最高の位置にある神さまたちですが、興味深いのは、

ここで自分たちで決定するのではなく占いを使っています。

古代の占法で「太占」(フトマニ)を用いてこの回答を出しているのは興味深い部分です。

これは、日本の神様は基本的に順列はなく、また、全知全能の神も存在しない、

判断が必要なときは「占い」を用いるということを物語っており、

まさにこれは日本で最初の占いであったことがわかります。

 

③「女から先に声をかけたのがいけない」

これは、一見「男尊女卑」だという説がありますが、はたしてそれはどうかと思います。

この後、天照大御神さまが出て参りますが、このかたは皇祖神となりますし、

その後、卑弥呼や神功皇后という女性で素晴らしい指導者が出てきます。

いずれも、古事記が執筆される前の話です。

ですから、これは「男尊女卑」ではありません。

実は気になる表記として、後妹伊邪那美命言」とありますが、

イザナミさまはイザナキさまと夫婦であると同時に兄妹であった

可能性を含んでおり、近親結婚だった故、最初は不具の子が生まれたという考えかたです。

これはなにをさしているのかというと、古事記執筆当時に

「儒教」的発想が可なり入りこんできたことにも影響しています。

だとすれば、「女から先に声をかけた」も、同じ理由で解明しますが、

前述したようにアマテラスさま以下、このあと古事記で多くの女性が活躍をされるので、

男尊女卑を正統化することはできずに、隠喩表現として用いていると考えられます。

 

 

いずれにしても、このお蔭でやっと、「淡路島」という立派は国が産まれます。

そしてこの後、日本の国土が誕生するのです。

 

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