雪崩れ
ドロシーは恐怖に立ちすくんだ。あたりは真っ暗で、二人のほかには誰一人いなかった。
彼女の額からは汗が流れ落ちた。
「あ、あなたのお父さんのこと、KGBのスパイだってみんなに言いふらしたから私を、に
憎んでるの? だけどあれも言ってみれば冗談みたいなものよ。私、気にしないで、って
言わなかったけど、あれは本気じゃないわ。」
ポールはドロシーの腕をいきなり掴んだ。
「キャッ!」彼女は鋭い悲鳴をあげる。そして、今までポールにした数々の意地悪を思い
浮かべた。ポールなんて放っておけばよかったと唇をかんだ。ドロシーは人生でやり残した
ことについても思いをはせた。まだ、公開になってない映画を見ないといけないのに。
他にもまだまだしたいことがあるのよ、と後悔した。
ポールは、真剣な顔のまま口を開いた。
「昨日、君は僕のことを宇宙人呼ばわりして、NASAに通告するなんて言っていたね。
だけど、僕はほんとうに宇宙から来たんだよ。」
「エイリアン!」ドロシーは叫んだ。
「でも、僕は危険じゃないから大丈夫だよ。」
「そう・・。」
彼女は、ポールが安全だとわかったので落ち着いた。彼女はかえって、ポールがエイリアン
なんて突拍子も無いことを言い出してくれてよかったと思った。
「とはいえ、」ポールはドロシーの腕をさらに強くつかんで言った。
「このことは、誰にも言ってはいけないんだ。そうしないと宇宙に連れて行かなくちゃいけなく
なるんだ。」
ドロシーは誰にも言わないと約束した。
彼女はそれ以来、ポールに悪口を言わなくなった。それどころか彼女は彼にとても親切になった。
