ねあ
「冥漠」 眼窩を転がるさいころの、目。(2019)
※
浮遊するやわらかいもの。から流れ出していく輪郭と、そこからつくり出される形、その質量。
いつも圧倒されて、重たさに息づまる。
どんなに心を遊ばせて逃れようとしても、物が在るという現実感にはかなわない。
見えすぎて視えないもの。
見えないから視えるもの。
瞼を閉じても眠りに落ちてもキリなく浮かび上がってくるそれらにがんじがらめになって、
逃げ場がどこにもなくて、もう何も見えないようになれたら、と思ってきた。
でもきっと、瞳をえぐって空っぽにしたとしても、わたしは何かをみて、
しまうんだろうと想像する。
そしてそれらに、救われるのだとも思う。
眼が、対象を見つけるのか。
見られているものが、眼を見つけるのか。
ファインダーを覗いていると、見るもの見られるものが溶け合うような感覚に酔う。
主体と客体の反転、統一、融合。
瞬間、ふっと軽くなる。
対象から離れるのではなく、むしろ一体化することで解き放たれるものがあることを、
この世にいる間に、1枚撮るごとに、思い出していけたなら。
こちらに来たことの目的に、生きていくことの目的に、できるのなら。
互いの瞳を合わせた途端、あえかに揺らぎ始める虚空の中に、
あなたと一緒に落ち込めるのなら。