月のゆりかご | セルロイド保管庫

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柔らかな盾の中で

 

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月の引力。     揺らぎ、溢れて震える。 ただれたように濡れた月。

 

どことも誰とも繋がらない月。

だから自分自身にしか感応できない。

自分自身を引き寄せるしかない。

 

でもそんな月がわたしの居場所。だとしたら。

 

繋がっているはずの胴体もはるかに先で見えなくて、行方が、不明。

切断された体。という体感。

足元だけの頼りなさはいつもわたしを現実から浮遊させていき、

「なんでここにいるんだろう」  という問いになる。

 

どことも誰とも繋がれない月。

 

あの彼女と愛を受け取り合い、この彼と愛を与え合い、

そうして誰かに繋がろうとすればするほど、月はひとり、膨らむように肥大して、

空を満たしてしまったのか、覆い隠してしまったのか。

 

そうなるともう、わたしの存在に気づく人は誰もなく、だから、

どこからも、誰からも振り向いてもらえなかった月。

 

呼吸の気配すらなく、ここにはいつも、誰もいない。何もない。