ディエゴ・ベラスケス
「道化ディエゴ・デ・アセド “エル・プリモ”」(1644)(プラド美術館)
小人症の人物を描いたこの作品。
当時のスペイン宮廷には、先天的障害を持った人々が多くいた。
貴族たちの慰みものとして、道化として仕えていた彼らはしかし、
知能が高い者や優れた才能を持つ者、誇り高い精神を持つ者であれば、
王に認められ出世していった。
ここに描かれたディエゴ・デ・アセドは、国王の書記官にまで登りつめた男である。
※
気品とか誇りが感じられるものが大好きだ。
そう在れたらいいな、という憧れもある。
醜さをも内包した美しさ、は私の判断基準のトップであるけれど、
その美的感覚は気高さとも相通ずる部分がある。
日常的に人と関わる中で、美しさとか気高さは、誰もが持つものだと実感する。
その人が観取するもの・表出するもの、ともに、
誰にも何にも侵されない部分が屹立している様を、漏らさず掬えるようになりたい。
目と心を養って、感じ取れるようになりたい。
他人に否定され、おさえこまれてきたこと。
そんな自分を恥じて閉じ込めてきただけで、守ってやってはこれなかったこと。
それらを受け容れて、では私はどうするか、どんな世界が理想なのか......
と考えていった時、
人々が何も恥じることなく、正々堂々として、自分に嘘をつかず正直にいる世界が浮かんだ。
そこでは誰もが自分が自分であることの矜恃を持ち、気高く気品に満ちている。
そんな人間の姿を自分自身も含めて意識していけたら、
「私は・あなたは美しい」と、日々生きていく中で実感できたなら、
それこそが、私の生きる喜びなのかもしれない。