相対的な孤独と、絶対的な孤独 | セルロイド保管庫

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柔らかな盾の中で

ユトリロは、私の叔母が好きな画家の、一人だった。
 
子どもの私でもパースの描き方が一目で理解できて、画面の奥行きにビックリして、
子どもの私でも、寂しそうな絵。。。と思った。
 
モーリス・ユトリロ 「サン・ルスティック通り」(1910年)
 
 
(そしてその後私は、
中学校の美術担当の先生が「ユリトロ」って言ったのを訂正するイヤな学生になりました)
 
家が密集していて、窓もたくさん見えて、
なのに、人の気配がない町。
 
勿論全部がそうではないけど、ユトリロの作品にはずっとそういうイメージを持っていて、
でももしかしたらそれは、私が持つ叔母のイメージなのかもしれないと、思った。
 
必要なものは全てあるはずなのに、満たされない人。
これ以上彼女に与えられる誰かは、もう居なくなってしまった。
しっかり立っているようなのに、いつもどことなく不安定で、
無目的なまま、どこにも行けない。
 
ユトリロの町並みは、必ず叔母とセットで思い出す。
 
 
ただ個人的には、
叔母×ユトリロから感じる寂しさは、穏やかで暖かくて、柔らかい。
 
絵を見て、記憶を辿って、寂しいと感じる感覚が、在る。
その全てが、誰のものでもなく自分自身のものなのだという確信に満ちて、
その絶対的な孤独に満たされて、
繰り返し味わいたくなる。