そして…
祐希の胸の中で 美幸は意識を失った




あれから どれくらいの月日が祐希を孤独の闇に 突き落としたのか


そして
坊主頭だった祐希の髪の毛は スポーツ刈り程度にまで伸びていた


あの頃 抗がん剤の副作用で 髪の毛が抜けてなくなった美幸の為に 自分も坊主にしていたのだ

「みゆ ペアルックだよ」
と 帽子を取っておどけて見せた


そんな 祐希に

「ぜ~んぜん 似合わないじゃん」
と 言いながら 美幸は祐希の気持ちがうれしくて泣いていた


あれから3ヶ月

9月も終わりに近いというのに 夏が名残惜しんでいるかのような 汗ばむ陽気だった


「みゆ 見てるか~ 俺 今日は 約束通り がんばるからな~」

祐希は左手を空に向けて 大きく振った

手首に巻かれた あの ミサンガが太陽に照らされて
そして

青空に溶け込んだ

一瞬

美幸の笑顔が青空の中に浮かんで消えた





おわり
ジーンズにTシャツ姿で 駆け寄ってくる男の子がいた 

坊主頭でニキビが多少あるが 真っ白い歯がまぶしいほどに 少女に向けた その笑顔は 清々しかった


「遅くなってごめん」

「大丈夫 今日はお天気がいいから お外 気持ちいいんだ~
それに ラベンダーの香りの中に ずっといたいくらい」


少女は高校三年生白血病で倒れて この病院に入院している

もう 何度も抗がん剤治療をしているため 髪の毛は抜け落ち それを隠すためのバンダナを頭に巻いていた

目は大きくて 少し彫りの深いその顔は こじんまりと整っていて ハーフっぽい顔立ちをしている


「ねぇ 試合まであと 3ヶ月だね」

「うん 絶対に 勝たないとなぁ みゆに又 馬鹿にされるからな」

「そうだよ~ 今度こそ 絶対に 勝ってね」

少女の名前は美幸
男の子は祐希 美幸の一つ年下の高校二年生

祐希はサッカー部で 練習中 転んで骨折した

その時 この病院に入院して 車椅子で中庭を散歩している祐希と ベンチに腰掛けていた美幸は 出会った


今から半年前の事だ

車椅子で散歩中 膝に掛けていた 膝かけが 落ちて それを拾って 膝に掛け治してくれたのが美幸だった



「今日はね、祐希にプレゼントがあるんだ~」

「えっ? 何?」

「目を閉じて~」 
「なんだよ~ 気になるな~」

「いいから~
目を閉じて 手を出して~」


美幸はパンダの絵が描いてある 小さな袋をポケットから取り出した

そして 中身を取出し 祐希の手首に巻き付けて 解けないように 結んだ

「は~い もう いいよ~」

「え~ うれしいな~ やった~!何だと思ったよ~
ほんとに うれしいな~」

「祐希が試合に勝ちますように…って
毎日 祈りながら 編んだんだよ
だから 頑張ってよ」

「うれしいけど 凄いプレッシャーだなぁ~(笑)」


それは、美幸が抗がん剤治療をうけながらも 気分が回復した合間に少しずつ 編んでいた ミサンガだった


「みゆ ありがとう  俺 がんばるよ

だから みゆも早く体治して 応援にきてくれよな」

「うん わかった 元気になって 祐希の転ぶ姿 見に行ってあげるよ(笑)」

「お~ また 骨折して 病院にいっても その頃は みゆは 退院してるんだろ

そしたら つまんねえから 絶対に 転ばねーよ (笑)」



「そろそろ お部屋に戻りましょうか」
 年配の小太りの看護師が 心配になって 美幸を迎えに来た


中庭にくるときには歩いてきた美幸だったが 看護師は気を使って 車椅子をもってきた
「乗って行く?」

看護師の栄子が 聞いた

「うん 祐希に押してもらう
ねっ 祐希 部屋まで 一緒に行って?」


「じゃ 私はお邪魔虫みたいだから 先に戻ってるからね」
と 栄子が 行きかけた その時 美幸の鼻から 血が…




つづく…
ラベンダー畑に 癒しを求めに 行ってきやした~

もう 一面むらさきのじゅうたん

身も心も

癒しの香りに包まれて…



以下
妄想の世界へ ようこそ



多分 このラベンダーを見れるのは 今年が最後

そう、少女はわずか 17歳で 命の終わりがくることを薄々知っていた


病院の中庭には、毎年、この時期にはラベンダーが咲き、患者らを癒してくれている


久しぶりに 青空が広がって 少し 汗ばむくらいだ


少女は白いベンチに腰掛けて 小さな袋の中身を何度も何度ものぞいては

その小さな袋を胸にあて 空を見上げては、目を閉じ 祈るようにしていた


暫らくすると 立ち上がって 恥ずかしそうに微笑みながら 手を振った


その先には…



次回につづく