INFINITE妄想小説☆彡 -2ページ目

INFINITE妄想小説☆彡

INFINITEの妄想小説☆彡

初めての小説に挑戦しています。
名前やキャスティングなど全て個人的趣向での
人物としています。
ファンの皆様の御理解をお願いします。

※最近の動画は作ったものです。



みなすわんっ!!!

やっと・・・やっとドンウ編最終話の2爪の動画ふぁぅt!!

あ。。。2つ目の動画がっ!!

完成でございますっ!!!

最終回の最終回であり、
とても苦労したので、
たくさんの方に見て頂こうと
思いました。

ドンウ編最終回の最後の動画は、ピニの最終回でもあり
総まとめでもふぉざいます。←

あぁ・・・

アメンバーも募集しておりますので、どうぞよろしくお願い致します♥

アメンバーを増やしたいだけのコメントは
ご遠慮願います。

即、抹消でごさいますぅ~\(//∇//)\ホホホ・・・



では、ドンウ編最終話に戻って、是非動画を見てくださいね!!

ヴぁにヴぁにワールド全開ですっ!!

MUSIC START!! 








誰にも見せたことのない顔を
君にだけは見せたって、信じてくれるよね?

例えどんなことがあっても・・・

うん・・・。

どんなことっていうのって、言うのは簡単なんだよね。
ほんとに・・・ほんとに辛かったね。
もう何度諦めようかって思ったし・・・
半分は死にかけてたのかも知れない。


遠くに見える何かも判断できなかったあの日。

今はくっきりと色鮮やかに見えて。
やっと僕の恋の話ができるようになったかもしれない。
聞いてくれるかな?
君と出会った日の事から・・・・

僕達は本当に多くを学んだ。
それがこれからの僕達にとってプラスになったかどうかは分からないけど。
でも、大切な事が何なのか、見えていなかった頃より
今はとても幸せだよ?
だって・・・君が傍に居ることが分かったからさ。


僕の胸の中にはいつも君がいて・・・
だから、君の心にも僕を入れてよ。
そうしたら、きっと明日も頑張れる気がするんだ。

だから・・・今日は、最後まで僕の話を聞いてね・・・・?



--------------------------------------------------------------------------





ソンヨルは手を伸ばした。

ドンウへ・・・

少しだけ視線を逸らしながらも、
ソンヨルはドンウの手を引き上げて言った。

「・・・・・・ごめん。」

「いいんだ・・・・俺の方こそ、ごめん。」
ドンウは腕を後ろに回し、シャツの裾を下げながら言った。

ソンヨルの小さなため息で意識的に変えていった空気が
ドンウの溜め込んだ気持ちを押し出すように慰めた。


「ドンウヒョン・・・いつまでそうしてんだよ・・・。」

ソンヨルはそう呟いて、ドンウの背中をギュッと締め付けた。
ドンウは一瞬驚いた後、次第に目を細めて
ソンヨルの背中にしがみつくように泣き出した・・・。

「うっ・・・ぅうっ・・・ソンヨラァ~・・・ごめんっ・・・ごめんっ・・・」

「ドンウヒョン・・・良かったよ・・・ドンウヒョンが
泣いてくれて・・・。」

「ふぇっ?なんでだよぉ~・・・なんで俺が泣くといいんだよぉ~・・・」
ドンウは泣きながら聞いた。

「あははっ・・・だってさ、ドンウヒョンこの頃ずっと変だったのに
全然泣かないんだもんw だからさっ、今やっといつものドンウヒョンに
戻って来てくれたんだなぁ~って思ってw」

「あんだよそれぇ~・・ひっく・・・っく・・・」

するとソンギュが近くに現れて名前を呼んだ。
「ソンヨラ・・・」

「あ・・・うん・・・。」

ソンギュが顎をクィッと上げて、あっちへ行ってやれと合図してくれた。

「サンキュ・・・」

そう言うと、ソンヨルはヌナの後ろ姿に視線を移した。

ソンギュはドンウに近づき、力強く抱擁してから離し、
もう一度顔を見てから、今度は肩を組んで話掛けた。

「おっまえは馬鹿だなぁ~・・・ハハハッ!!
何だよ、そのみっともない顔はぁ~・・・」

「だって・・・だって・・・」
ドンウはまだグスッと鼻を鳴らして泣きぐずっていた。

「ドンウやぁ・・・俺にも相談できなかったのか?ぅん?」

「俺・・・言えなかった。言えなかった・・・。」

「そっかそっか・・・分かった分かったw
ほんと、不器用だなぁ~ウリドンウはぁ~フハハッ!」

ソンギュの優しい三日月の目がドンウの心を温める。
暖かくて、暖かくて・・・・益々涙が止まらなくなるんだ。

それでも、何故か自分がどうにでもなれっていう
気持ちが薄れない気がして怖かった。

ドンウの涙がその場の空気に溶け出した頃、
ユカリンのお父さんがペタリと
腰を抜かしたまま座っているのが分かった。


それからやっと我に返ったのか、ユカリンのお父さんは
たった数歩先にいるヌナの所までふらつきながら
傍へ寄っていった・・・。


ヌナの元気な顔が見えるまでの数秒間、ユカリンのお父さんも
自分の代わりに怪我をしたのではないかと気が気ではなかった。
自分が怪我を負うとばかり思っていたから尚更の事だった。


「お嬢さん、本当に大丈夫なのかい?」

「あっ!ユカさんのお父さんですか?初めましてぇ^^」

「あっ・・・はい・・・。どうも初めま・・して。」

「おいっ!!ヌナ、何が初めましてだよっ!!
それより早く説明しろってのっ!!」

「ソンヨリはせっかちだなぁ~wwwあははぁ~」

「ヌナがドン臭いだけなんだっ!!ったくぅ~・・・」

「ソンヨリ、それを言うならトロ臭いじゃなくて・・・?」

「うっ!!・・・・どっどっちだっていいじゃん!それよりもさ、あれでしょ?
何っ!!いいから説明してって!」

「なぁ~に怒ってんだか・・・」

「まぁまぁ・・・ソンヨルが怒るのも無理ないでしょっw
ヌナ、来ちゃ駄目って言われたんでしょ?
人一倍好奇心旺盛なのにっwwww」
と、ソンギュが笑って言った。

「そーだよ、ねぇ?ソンギュ。私の事それこそ人一倍知ってる癖にさぁ・・・
来るなってのがおかしいのよねっ!」

「いや、おかしくないぞっ?!そこは、俺も譲れねぇ・・・」

「ほぉ~・・・ぅ・・・ソンヨルはヌナの事を人一倍知ってるのかぁ~・・・」
とソンギュが茶化すと

「ばっ!!んなわけないじゃん!!おいっ!変なこと言うなよ!!
ただでさえわけ分かんない事だらけだってのに・・・」

「えっ?何?最後の方聞こえなぁ~いw」
ソンギュは耳に手を充てて、大袈裟にポーズをとった。

「えぇ~い・・・ソンギュヒョンもういいっての。やぁ~めてっ!」

「クククッ・・・」

「ちっ・・・惜しかった。」
とヌナが舌打ちをしてソンヨルに冗談を言う。

「やぁっ・・何が惜しかっ・・・」
まだ言い終わってもいなのに、ヌナの反撃が
ソンヨルの噴火を一気に早めた。

「んべぇ~~~っ・・・」

「う~~わっ!あいつっ!!見た?ミョンスっ、ねぇ、今見たよねっ?!
クッ~~~~~ッ!!にくったらしぃ~~!!!」

「プハッ!!w 何・・・今、痴話喧嘩はいいからさ、
ちゃんと説明しくれるっ?ヌナ。」
とミョンスは吹き出しながら片目で言った。

「痴話喧嘩ってっ!ミョ・・・」

「ソンヨリはいいからこっち来て?」

「もぉ~・・・ぅ」
そう言いつつソンヨルはミョンスの隣に
膝を抱えるようにして、つま先を交差して座った。

「おいおい・・・んで?結局、ヌナはなんでこんな?」
ウヒョンが煮え切らない二人を見て、聞いてみる。

「あ・・・うん。あのね?実はさ、ドンウが部屋から出る前に
私、偶然ナイフをポッケに仕舞ってるとこ見ちゃったのね?」

「うん・・・。」

「部屋のドア開いてたの?」

「そう・・・少しだけなんだけどね?」

「うん。それで?」

「で、なんでだろうって思ってさ・・・。
で、暫く考えてたら、みんなバタバタしだしたからさ、
あ、何かあったんじゃないか・・・って思ったの。
嫌な予感もしたし、なんて言うか・・・色々っ!!
そっ!色々あって、お腹に雑誌入れてケチャップ
も入れたのっ!!」

「だぁ~からなぁ~んでケチャップなのぉ~w」
ウヒョンは苦笑しながら、代表で聞き出した。

多分、みんなもそこだけなんだろうけど・・・
と、内心ツッコミたくなるウヒョンだった。

「えぇ~・・・と。もし、刺されたらって想像して・・・あっ!
でもまさかそんな事しないよね?って思いながらも
やっぱり、もしもを考えたのね?そしたら冷蔵庫にケチャップあったから
お腹に入れといたの。クッションになるし・・・と思って。」

「そこまで一瞬で考えるなんて凄いな・・・。
てか、クッションにはならないだろうね・・・。」
と、ウヒョン。

「わわわっ!そう言う事言う??クッションに少しはなるでしょっ。」

「いや・・・残念だけどならないと思うよ?www」

「はー・・・そうですかぁー・・・・。」

「何、その脱力した言い方はっwww」
ソンギュが笑うとヌナは真剣な眼差しでこう言った。

「あたしは絶対、クッションになるって思ったんだよ。
ただ、弱点は範囲が狭いっていうね・・・。」

「どんな想像力してるの・・・。」
と、ソンギュ。

「だろっ・・・・?」
とソンヨルも呆れた様子で言った。

「あ、それより話しの続きねっ!?
その時にねっ?・・・そしたらさっ!プクククッ・・・・」

「いや、お前、笑い事じゃないだろ・・・」
とソンヨルは引き気味にヌナに言った。

「あたし、気絶しちゃってっ・・・あはははっ!!
てか、お前って言うなっ!!」

「はぁ?お前なんてお前で十分だろ・・・。
ヌナなんて、もう呼ばねぇよ・・・。マジ呆れるわ。」

「いやいや・・あははじゃないでしょ。ははっ!!」
と、言いながらホヤも思わず吹き出してしまった。

「アイグ~~・・でも、ほんとに大丈夫?」
ウヒョンはヌナの体を気遣った。

「うんっ凄い衝撃だったけど、大丈夫だよ。^^
ありがとっ!!ウヒョンはやっさしーなぁー!!」

「・・・・なんだよその目は。」
と、ソンヨルはヌナに挙動不審な苦笑いで言った。

「べっつにぃ~?」
ソンヨルを横目で見ながら
ヌナは口を尖らせている。

「あっあのぉ~みんな・・・」
ユカリンのお父さんが小声で言うが
誰も聞いていない・・・。

「あっ!そんでね?ウヒョンとソンギュがあたしのお腹を
ぐーるぐーると巻くからケチャップが押されて
余計出ちゃってwwwあたしはクッションの代わりと思ったんだけど・・・」

「あっははっ!!ヌナァ~何それぇ~クッションだったのぉ~?」
ソンジョンはヌナの行動変だと言いながら笑った。

みんながこの場を和ませてくれているのが分かる・・・
俺はまだ苦笑いで、ただみんなのを会話を見ているしかできなかった。
俺は・・・未遂だったにしろ、ヌナを刺してしまったという
罪悪感で手も足も震えたまま、怖くて笑うことが出来ない。

みんながこんな酷い事をした自分に笑顔を向けてくれて
申し訳ないし、手の感触と言うか・・・ヌナの顔がハッキリと
見えないままに倒れていくのを見ちゃったら・・・怖くなって・・・。
俺はとにかくもう一度謝った。

「みんな・・・ほんとにごめん・・・。なんて言ったらいいか・・・
それに、ユカリンの・・・お父さんにこんな酷い事して・・・
俺っ・・・俺っ・・・・」

「こんな事って?何もなかったじゃない。ねぇ?おじさん。」

救急車の音に紛れて、ヌナは全てなかった事だと
ユカリンのお父さんにも、同意を求めるように投げかけた。


あとは・・おじさんの答えで結果が出るから。
ヌナの機転によってドンウのした事について
どうするべきか決められる事になった。

「そうだな・・・ユカリンのお父さんの答えを聞いて
どうするか決めよう。それでいいな?ドンウ。」
ソンギュがそう言うと、ドンウは黙って頷いた。

するとユカリンのお父さんはゆっくりと目を閉じてから
また開き、ふぅ~っと息を吐き出してから話し始めた。

「ドンウ君・・・いつもユカの心配をして見に来てくれて
ありがとう・・・。」

「いえ・・・俺が言うのも、へっ・・変っ変っかもしれないですけど・・・
それよりも、自首して下さい・・・。いやっあのっ俺、ぁあ~・・・・
もう、わけが分からないんです。
お父さんがどうぉ~してっ!そうしなきゃいけなかったのかっ。
俺は・・・それが知りたいんです・・・・。」

「分かった・・・。ユカは・・・目が覚めても動けなかった・・・。
なんの後遺症なんだって事故を起こした相手側を恨んだよ。
ユカの人生が台無しになったからね・・・。やっと目が覚めてもすぐには
歩けなくて・・・。最初はそんな不憫なユカを見ていられなかったんだ。
それで・・・ユカを連れて山へ行ったのさ。」

「だけど・・・ユカリンの人生はユカリンの物ですっ!!
それを歩けないからって・・・話せないかもしれないって
嘆いていたら駄目なんです。家族なんだから・・・支えなくちゃ。
それなのに、命を・・命をっ・・・奪う・・・なんって・・・・・・・。」

ドンウは堪えきれずに目頭を熱くさせた。
指で抑えても、またとめどなく溢れてくる。

「ドンウ君・・・・・・。本当に済まない・・・・。実は・・・」

「そうやって、何度謝ってもらったってユカリンは
帰っては来ないんですっ!!」

ドンウは涙を拭っても拭っても自分でも止める事ができず、
上ずった声でしゃくりあげて泣いた。

上手く喋る事が出来ない自分にドンウは苛立った・・・
それでもどうにも呼吸が速くなってしまうもどかしさ。
まるで・・・子供がこれでもかというくらい、泣かされているみたいだ。

泣きじゃくる俺の横にソンギュヒョンとウヒョンがいてくれて、
ミョンスは背中から支えているかのようにいてくれてる・・・。

ヒカリちゃんはユカリンのお父さんの横で何故か手を握っていて・・・

ホヤはその横でヒカリちゃんの肩に手を置いてる。

ソンヨルはソンギュヒョンの外側に立ってて、口を開けてるよ。

ヌナは・・・・あれ?

ヌナがいつの間にかいない・・・・・・

俺は泣きながら聞いてみた。

「はれっ・・?ヌッ・・ヌッ・・ヌナはっ?・・っっく・・・。」

「なんだ急に・・・ドンウ、どした?」
ソンギュはドンウの顔を覗き込んで、頭に手を置いた。

「あっ・・・ヌナ??何処いったんだろ・・・ケチャップだらけなのに?」
と、ウヒョン。

「トイレ・・とか?」
と、ミョンス。
その瞬間に振り返るソンヨル。

「えぇ~い・・・こんな時に?まさかだろ・・・。」

「ヌナっていつも急にいなくなるよね。」
と、ソンジョンは真顔でいつもの事だと言う。


すると突然何処からかあの声が聞こえて来た。
「ソンギュー!ソンギュヤー!」

「げっ!!まさか・・・ヌナがいるのか??」
とソンギュ。

「えっ??どっちのヌナ?」
とミョンス。

「あの、おっかない方ね・・・。」
と、冷や汗タラタラのソンギュ。

「でもなんで?ここに居る筈ないよね?」
と、ホヤの目がクルリと回った。

「ソンギュー!そこにいるのぉ~?」

「うーん、いるよーっ」
焦ったような照れているようなとにかく
落ち着き無く返事をするソンギュ・・・。

「手伝ってぇーーー!!早くぅ~!早くっ!早くっ!!」

「わっ・・分かったからそんな大きな声で・・・」
いそいそとソンギュは言われるままに、ユカリンの家に入って行った。

「ちょっと・・・ソンギュヒョンッ!!」
ウヒョンがそう言った時、
すでにソンギュには聞こえてはいなかった。

「どゆことっ??」
ホヤもウヒョンも首をかしげて、
その後ろ姿を見送るだけだった。

すると、ユカリンのお父さんが立ち上がった。

「今度こそ最後まで聞いてくれるかい?」

振り返るメンバーと落ち着いた様子のドンウ。

「ドンウ君・・・それから、もうみんなに聞いて欲しい。
実は話しの続きがあるんだよ。でも、ドンウ君も興奮してたから
言いそびれてしまって。」

「えぇっ??!!今更?」
ソンヨルの驚く声の方にみんな驚いてビクッっとしてしまった。

「まぁ・・・もう、話すまでもないんだけど・・・。
実は、ユカを突き落としてはいないんだよ・・・・・。
そのっ・・・なかなか言い出せなくて・・・。」

「ぅええええええええええええ????!!!!!!」
何故かやっぱりソンヨルの雄叫びの方が早かった。

「・・・・・・・えっ・・・・えっ??
ホントですか?じゃっ、じゃっ、じゃっ、ユカリンは・・・・」
驚きを隠せないドンウ。

ユカのお父さんはニッコリ笑って頷いた。


『生きてるぅーーーー!!!』
ドンウとソンヨルがお互いを指差して同時に叫んだ。

「ハハハッ・・・・」
やっぱりミョンスは小さく笑って。

「フフッ・・・よぉ~かったぁ~ん」
ウヒョンは独特のイントネーションで言う。


「でもぉ・・・何処に?」
またドンウの目からホロホロと涙がこぼれそうに
なっているのを見て、ソンヨルはドンウの肩を組んだ。

「えぇ~い・・まぁ~たすぐ泣くぅ~・・・ほんっと
情緒不安定だなぁ~っ。」
ドンウを揺すりながら顔を覗き込んで言うが、
元気になって欲しい気持ちはあった。

しかし、ソンヨルには今、どうすることも出来ない・・・。
それでも傍にいるだけで救いたかった。

「良かった・・・ユカリンが生きてて・・・・。
それが分かっただけで、俺はもういい・・・。
これ以上はもう何も望まないよ・・・。」

その時・・・・
疲れてへたりこむ瞬間、ドンウを呼ぶ声が聞こえた。

まぁた、誰だよ・・・もう疲れたのに・・・。


「ドンウちゃんっ・・・。」

「・・・?」

顔を上げて前を見ると、誰かがそこに立っていた。
そこには眩しくてそうなのか、顔だけがよく見えなくて、俺は目を細めた。
慣れてきた目を凝らしてみれば、
ソンギュヒョンとヌナに支えられて歩くユカリンだった。

以前と変わらないその笑顔に、俺は足から崩れそうになったけど、
もう、これ以上その笑顔を失いたくなくて、
必死に足が言うことを聞くように言い聞かせた。

ソンヨルの手を振りほどき、ユカリンへと体が自然に流れて行く。
その背中をソンヨルが見つめて、その視線の先の人へ向けた。

もう枯れ果てた冷たい涙が、今度は温水シャワーのように
暖かく、浴びるほど泣いた。

「ドンウちゃぁ~ん・・・そんなに泣いたら
目ぇ溶けるよぉ~?ゥフフッ」

「ユッ・・ユカッ・・リンッ・・ユカリンッ!!!」

俺は・・・もうずっとドンウでいることを止めていたのだろうか?
涙が暖かく感じるんだ。
涙も出ない日もあったのに・・・
さっきまでの冷たい涙なんてもう思い出せないよ。

ソンギュは、ドンウにユカリンの体を預け、ヌナもそこから離れた。

「ユカリンっ・・・あぁ~・・・ユカリンがっ・・・うぅっ・・・っひっ・・
はぁあ・・・・なんっでっ?なんっっでいるの?俺・・俺・・・」

ドンウはユカリンを支えなきゃいけないのに、泣きっぱなしで
周りが笑ってしまうくらいだ。

ソンギュもユカリンのヌナもハラハラするなぁ・・と
思ったその矢先、
「あぁっ!!」
ソンジョンがそう声を出した時にはドンウとユカリンは
ドンウがちゃんと支えてなくて倒れてしまった。

「うぅ~~っ痛いぃ~~~・・・」
そういいながら泣いてるドンウにユカリンは笑った。

「あははっ!!ドンウちゃんと一緒に転んじゃったねっ?」
涙を拭うのはユカリンで・・・笑って許してくれるのもユカリンで。

ドンウは仰向けになったまま膝を立てて、腕で目を覆った。

「ユカリ~~ン・・ぅあ~~~っ・・・」

「ほらほら・・・ドンウや起きろって。そんなんじゃ
ユカリン起きれないだろ?それに、もう泣くなっw」
ソンギュが腕を組みながらドンウを見下ろしている。

それでも泣き止まないドンウ。

そんなドンウにユカリンは這いつくばった状態のまま
近づいて、その頬にキスをした。
ピタッと泣くのを止めて、目をパチパチさせて起き上がった。
ユカリンを抱き上げて自分の足の上に
座らせたドンウ。

ユカリンは困った顔で、だけど愛おしそうにドンウの涙を
指で拭ってあげた時・・・・

チュッ!

さっきまで泣いてたドンウは無言でユカリンの唇に
キスをした。

「わっ!」
思わずソンジョンが声を上げてしまい、ミョンスに後ろから
口を抑えられてしまった。
そのままの状態で振り返りミョンスを見上げるソンジョン。
落ち着いたところろで、ミョンスは手をどけて、
ソンジョンの肩に顎を乗せて二人を暖かく見守った。

「ドンウちゃんって、ほんと勘違い多いよねー。」

「だっだって!ユカリンっ!」

「あははっでも私が悪かったの・・・ごめんね?」

「んーん・・・大丈夫!!だって、ユカリンがここにいるんだもんっ!」

すると、ユカリンのお父さんが来て言った。

「ドンウ君は、ほんと私に喋られせてくれないんだよ・・・
参ったよ、ほんとw 気が付けばもういないこと多かったし。」

「ちょっと、あっぱぁ~それはドンウちゃんだけの責任じゃないでしょー。
オンニだってちゃんと連絡とかしてないでしょ・・・?
後でいいや・・・とかいって。」

「あっ・・・・ははは・・・」
と、ヌナがは笑って誤魔化した。

「えぇっ???なんでよー。目ぇ覚めたの知ってたの?ヌナ!」
と、ドンウが聞くと、またしても笑って誤魔化した。

「ちょっと・・・。」
と、ソンギュ。

「まぁ~・・・なんつーか。ユカとドンウの劇的再会を期待してですねぇ・・・」
ヌナがとんでもないことを口にする。

「そんなっ!!俺、危うくお父さん殺しちゃうとこだったのに!!」
ドンウは真面目に興奮している。

「そそそっ!!あれには参ったなぁ~あはっw」

「おいっ・・・」
と、ソンギュ。

「あぁ~でも助かった。リナっちのおかげでぇ~あはっw」

「あはっwじゃねぇーっつの!」

「わー暴力はんたぁ~い!ついでにソンギュの
寝顔もやばぁ~い!」
そう言いながら、ヌナはソンギュに手首を掴まれて
別の場所に連れて行かれた・・・。

「なっ・・・なんなんだ・・またあのヌナは・・・」
ソンヨルの気持ちの悪い、良かったんだか、悪かったんだか
分からない冷や汗が耳の裏を伝っていく。

「リナヌナ?」

「うん・・・?」

「知ってたのか?この事。それでケチャップ??」
既に半分怒っているソンヨルが壁にリナを押し付けて問い詰める。

すると、ヒカリがリナの前に飛び出して来た。
「あぁっ!ソンヨルオッパごめんなさいっ!!」

「えっ!?」

「えぇっっ!!????」
ホヤが急に大声を出した。
もちろんみんなも驚いたが、ホヤが格別の驚き方だった。

「ホヤも・・・そんな顔するんだねっw」
そんなウヒョンをチラッと見て目が合うが、口を開けたまま
直ぐにまたヒカリを見つめた。

「ヒカリなの・・・リナオンニは何も知らない・・・。ごめんなさい・・・。」

「どういう事なの?」
ミョンスが続けて聞く。
その横でソンジョンは2度頷いて、おとなしく待っていた。

「リナオンニはほんとに何も知らなくて、ユカリンのヌナとみんなの
知ってる衣装持ってくるヌナは同じ人でね・・・?」

「うぇええええっ??そこだけでも衝撃なんだけどっ!」
と、ソンヨル。

「マァ~ジかぁーっははっ!!」
ウヒョンもそれなりにウケながら納得した。

「はぁ~・・・」
ホヤはまだ黙って聞いている。

「あのね?私最近、偶然見つけたミョンスオッパの持ち物に惹かれて
ある物を持ってたのね?そしたら、みんなの事・・・ホヤちゃんの事・・・
その・・・・・ヒカルだった自分を思い出して・・・・・あはは・・・
私、転生したのかな?って分かったというか思ったの。ここまででも、みんな口を
パクパクしてるみたいですね・・・。混乱すると思うけど、話しますねっ?w

え~っと、それで・・・私、以前のような力はないんだけど、
思い出してからは少しだけ未来を予知って言うか、
映像を見る感じで見えるようになっちゃったんです・・・。
ミョンスオッパの勾玉のせいかもなんですけど・・・。」

「ん・・・?んぁああ~~~~!!!そう言えばあれ最近
見かけなかったわっ!!」
と、なぜか手を叩いてウケまくるミョンス。

「おっそ!ミョンス!!てか、なくしちゃ駄目だろっwwww」
と、ウヒョンにつっこまれた。

「それから、ドンウちゃんが勘違いするのも分かったし、
ナイフ持ち出すのも見えて・・・
いろんな事と繋がっているからって
ユカリンのオンニに相談したの。」

「分かったよ・・・・。ヒカリちゃん、そーれーでっ!
あのヌナが色々俺達で遊び出したな?」
ソンギュがそう言いながら戻ってきた。

「遊び出しただなんて失礼なぁ~・・・
私はただ、みんなの心がバラバラだなぁって思ってただけよ?
みんな自分で精一杯でさ、普段全然相手を見てないじゃん。
まぁ、男同士ってそうなのかもしれないけど・・・
でもさ、ソンヨルにもイライラするし、ドンウの早とちりも毎度毎度だし、
ホヤもまぁ~た、ボケぇ~~っとしてて、ヒカリの事
全然気づかないみたいだってヒカリから聞いたしさ、何やってんの?
だったんだもん。なのでっ!私がいっちょ動いたわけよっ^^」

「だからって俺のリナにまで危ない事やらせるなんておかしいだろっ!!?」
と、ソンヨルは我を忘れて言ってしまった。

「俺・・・の?プフッーーーっ!!
やーい聞ぃ~ちゃぁ~ったぁ~wwww」
ウヒョンは口にグーを充ててニヤニヤとしている。
そのニヤけて緩んだ顔がソンヨルを益々焦らせた。

「あ・・・・。おっ!間違えた?いや、俺達のだよ。」

「ウハハハハッ!!焦ってるぅ~~w」

「ちぃ~がうしっ!」

「何も違うとか言うのも変じゃないの?プククッ」
ミョンスのツッコミで大当たりしてしまうソンヨル。

「ソンヨルヒョンっ?もう、行ったことは取り消せないよ?」
クフッっと含み笑いをした悪戯なソンジョンも
きっとあの人を思い出しているのだろう・・・

「あ、リナオンニが例え間に合わなくても、
私がなんとかするつもりだったし、ユカリンのパパにも
お腹に防具入れておいてもらってたから・・・でも、予知では
リナオンニが倒れるのが見えたから、
やっておいて欲しいことだけ伝えたのっ!」
と、ヒカリは言った。

「あぁ~それでさっきリナヌナの言い方が変だったのか。
あのヌナがお腹に何か入れておいたり、ケチャップで
刺されたフリとか絶対思いつきそうにないのにさ、変だなぁ~って
思ってたんだよね。なるほど・・・やっぱりかっ!
まさか、ヒカリちゃんとヌナに操られていたとは・・・・。」
と、ソンヨルはリナヌナのおでこを指で弾きながら
ヒカリちゃんとヌナに言った。


いつものドンウの笑顔がそこにはあった・・・・
やっといつもの俺達に戻れた気がした。

それから・・・
ホヤの目からも静かに涙がこぼれた。
忘れようとしていた彼女を思い出して。

心の奥にずっといたんだ・・・・
ヒカリちゃんに良く似たヒカちゃんなのか、ヒカちゃんに良く似た
ヒカリちゃんなのか・・・

本当はもうどちらでも良かった筈なんだ。
だけど、今は・・・ヒカリが好きだから。
でも、思い出したらやっぱり嬉しくて、やっぱりそうかって
直ぐに納得できた。
今の今まで、ヒカリちゃんは昔の記憶を
思い出した事を教えてくれなかった。
そんな心の駆け引きが続いて、苦しかったけどいいんだ・・・

だって、今生きている『ヒカちゃん』は俺を選んでくれたから。
そして、耳元で『でも、ケチャップは持たせなくても良かったんじゃない?』
と、耳元で囁いてから、目を閉じてヒカリとその気持ちを抱きしめた。


そして、目を開けるとドンウヒョンの泣きすぎて、
ついでに殴られて腫らした顔が目に写った。

俺の恋もやっと実った気がするよ・・・・
俺は改めて自分の気持ちを伝えた。

「ヒカリ?俺は今ここにいる君が好きだよ?」

「うんっ!ヒカリもですっ!!」


長い長い、500年以上も前の恋の話しが、今やっと終えようとしている。

いや・・・もしかしたら俺が始めたのかもしれない。

もう・・・あの深く刻まれた悲しみの表情は見えない。



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「ユカリン、とにかく良かった。無事で。」

「うん^^ドンウちゃんありがとうぉ~」

「あのさ・・・俺やっと言えるっ!!へへっw」

「ん?なぁに?w」

「あのっ・・・さ・・・すっ!好きだよっ?」

「あっ・・・うんっw・・・もちろん、ユカもだよっ」
照れくさくて俺の方がユカリンの後ろに隠れてしまった。

そんなユカリンも恥ずかしくて直立不動だった。
あ、実際には松葉杖だけど・・・。

そんな俺達をみんなが指を指して笑うけど、
これでいいんだって思った。
だって、俺は恋愛にだけは不器用なチャン・ドンウなんだからっ!!


『俺達はとても自由で可愛らしいカップルになればいいよね?』

『うんっ!』

会えない時間が長すぎて、沢山失敗して、沢山後悔した。

これから、ユカリンはリハビリをする・・・
本当に奇跡としか言いようがない位、後遺症が殆ど残っていなかった。
目を覚ましたきっかけはなんだったんだろう・・・?

科学的には良く分からないみたい。

「ねぇ、ユカリン。目が覚めた時、最初に何を思ったの?」
俺はとても気になっていた。

「ん~・・まずは今日は何日なのかって事とね?
後は、あぁ、ずっとドンウちゃんが話しかけてくれてたんだなぁ~って
分かったの。なんだかずっと聞いていた声だって認識してるみたいw」

「あははっそうなんだ?ん~もしかしてそれは本当かもっ!
だってさ、毎日は行けなかったけど、その代わりに
INFINITEと、特にHの曲を毎日聞かせていたからかねっ!!w」

「なるほどっ!!だから目を覚ましたのかもしれないよねっwwww」

「え・・・ユカリン、それってどういう・・・」

「あ、うるさくてっ!?wwwwあはっ」

「あはははははっ!!あははははっ!!そうかもっ!w」


それから、長い長いマフラーを二人で巻いて
あの桜の動画を一緒に見たんだ。

春になったら一緒に行こうねって約束して。













俺達7人は・・・ずっと、ずっと
いつの間にか心が離れてしまっていたのかもしれない。
誰にもどうすることもできない溝ができてしまっていたから、
余計に言えなかった言葉があった。

普通の事なのに・・・
照れくさくて言えなかった。

それを理由にして、後回しにした。
きっと・・・わかってくれるって勘違いして。

『ありがとう_______。』

だからいつもわざわざ遠回りをしていたんだ。

それは・・・恋も同じで。
相手を思いやれなくて、追いかけっこのように
お互いを遠目で見ているような、
近づけば突き飛ばすようにしたりもした。

素直になれないのは、自分に自信がないからだと
髪をグシャグシャにした毎日だった。
だけどそれは人生の中のほんの一瞬のトキなんだろう・・・

若い僕等は、後悔の上に立っている。
それから、本当は僕等は失敗と後悔で出来ているのかもしれない・・・。

生きた年月が僕等を大人にしてくれるんじゃない。
君と話した分だけ、僕を大人にしてくれるんだ。

いつか・・・そんな歌を歌いたい。
忘れないために・・・それを、みんなにも伝えたいから。

時が経てば、忘れられてしまう記憶を、
僕等はいつかまた、思い出す日が来るのだろうか。


時々、ふと思い出して歌うあの歌のように。


その時、君の横にいるのが、
どうか僕でありますようにと願って・・・




-----------------------------------------------------------------------------------


~あとがき~


とうとう7人のstoryが終わってしまいましたね・・・
読んでくださった皆さん、長い間本当にありがとうございました。
早くも、半年位書き続けたことに自分で驚いています・・・

本当に書きたいことはたくさんあるのに、文字で
表現することの難しさを痛感しました。

途中から動画にもハマってしまい、段々と更新が遅れがちに
なりましたが・・・w

もっと丁寧に時間をかければ良かったところは
たくさんあります・・・
ですが、なんとか次のメンバーへとそれを引き継いで
やれたかな・・・と。。。

なうやアメーバのメールで応援してくださった
皆さん・・・本当に嬉しかったです。
゚.+:。(〃ω〃)゚.+:。照れ屋の皆さんが
ヒョッコリ応援メッセージしてくれるのを見て
いつも感激してました。
本当に力になったんです・・・

それから、個人的に長い付き合いのある
ウリチングたち・・・spiさま、mikiたま、muskaっち、シュナッち。
普段の会話だけでも癒されましたー(ノД`)

感謝以外の言葉は見つかりません。。。

ただ、ひたすら読んでくださった方々にも
本当に感謝しています。
いつも数百名の方がいると思うと、変なこと書けない・・・
そうプルプルと指を震わせながら、
頑張れたのも、ずっと読んでいてくれた方がいるのが
信じられなかったのですが、いるんですっ!!
あ、何言ってるのか分からなくなりました。ハハハ・・・


時々、誤打で笑っていただけたかとも思いますw

では、皆さん、本当にありがとうございました。
まだ知らない方がいらっしゃいましたら
声をかけてくださいね~
読んでミソーと・・・w\(//∇//)\

また始めたらよろしくお願いします♥

Vanilla7


2つ目の動画が見れていないことに暫く気がつきませんでした。

すみません・・・

試行錯誤して繰り返し作り直してやっと出来上がりました。
とても大変だったので、しかも最後ということで
特別に全ての人が見れるようにしました。

アメンバーの方々のご理解の程を宜しくお願い致します。

しかしながら、これを機にアメンバーになって最終回を
見ていただけると幸いです^^

これからもまた頑張っていこうと決心しました。

今回の動画チェックにご協力していただいた
special☆special☆thank's to komuさん
本当にありがとうございました!!

♥パダラッ!!





 




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 近づいては遠のいて・・・

近づいては遠のいて。

今俺はブランコに座ってゆっくりと揺れだしたところ。

幼い頃もよく乗ったっけ・・・

「オンマー!オンマー!見て見てぇ!ほらぁ~
こんなにたくさんこげたよぉ~!!」

「わぁ~ほんとだっ!凄いね!ドンウ~^^」

オンマの声が幼い俺の頬を染めてくれた。

嬉しくって嬉しくってたまらなかった。
だから、俺はもっともっとこいでやる!って、立ってこいだりもしたんだ。

「オンマー!スゴイでしょっ!!?」

「わぁ~ほんと高く上がって凄いねぇ~^^
でも、危ないからしっかり鎖持ってるのよぉ~!」

「はーい、オンマー!」


「あっ!!ドンウっ!!!!!!!」

ドサッ!!

ガッ・・・

「ってぇ~・・・・」

「大丈夫?ドンウ!?」

「うん・・・あぁ~~痛いよぉ~・・・」

「ほらぁ・・血が出てるじゃないの・・・
言ったそばからこうなんだから、ほんと危なっかしいわね・・・」

「ごめんね?オンマ・・・」

「ふふっ・・・^^いいのよ。オンマに見せたかったんだよね?
でも、危ないから漕ぎ過ぎないようにしようね?」

「うんっ!!分かったよ!」


ブランコが前に後ろに揺れる度に、
オンマの顔も近づいては遠のいて近づいては
遠のいてと繰り返す。

その顔をずっと見ているのが好きだった。
笑顔で手を振ってくれるオンマが優しくて・・・

何故かそんな事を思い出しながら、俺はブランコに
暫く揺れていた。
揺れながら色々考えた。
結局、もう駄目なんだなって思ってしまったら
自分でもどうにも身動きがとれなくなってしまっていたんだ。

俺は・・・あのブランコのように継続的に揺れていたのに、
最後には落ちてしまったみたい。
決意したというよりもこうするしか仕方がないというように
俺はブランコから飛び降りて、少しずつあの家に向かう・・・。
そのブランコという名のステージから、俺は自ら足を踏み外した。

次に足を向けたのは、あの桜並木の遊歩道。
自然に足が動いて・・・もう一度歩いておこうと思った。
もう自分でいられるのが、最後かもしれないから・・・

あの桜の動画・・・見せたかったな・・・。

もう散ってしまった桜の木を見上げると、涙の洪水。
大きく肩が震えて、止めることもできずに、俺はその洪水の中で
ユカリンとの思い出を見ていた。

今日・・・今、見ているこの川もあの時の川じゃない。

あの桜は手さえ伸ばせばいつでも届きそうだったな・・・
でも、俺はそれを動画に収めただけで、桜に
触れようとはしなかった。
手を伸ばせば・・・届くのに。

もう、桜は散ってしまった。

何度も何度もそう思ってしまう。
桜はもう散ってしまったと・・・・。

桜もなくて、川も何処か寂しげなのに、

あぁ・・・なんか穏やかな日だなぁ・・・

そっと目を閉じて暖かな夜の日差しを体中に浴びた。
洪水の涙が止まると今度は体の中が乾き切ったのか、
全てが無に感じてどうでもよくなっていた。

月が・・・俺を笑ってるみたいだ。
でも、もうすぐだ・・・もうすぐ終わる・・・全て。
俺はまるで順を追うようにして、電話を掛け始めていた。


「もしもし・・・。僕です、ドンウですが・・・お話があるんです・・・。」

「そうか・・・分かった。」

「ユカリンの家の前で待ってます。」

「あぁ・・・行くよ。」
電話をして俺だと分かると何かを察したように
すぐに返事が帰って来た。
この人・・・きっと俺が何をしようとしてるのか
分かってるんだな・・・。

昔からオンマはこう言ってた。
『真っ直ぐに行きなさい。真っ直ぐに・・・』

オンマ・・・真っ直ぐって案外難しいんだね。
行きなさいって生きなさいって事でしょ?
でも、ユカリンのお父さんは真っ直ぐじゃないよね?

オンマ・・・俺、まだ真っ直ぐかなぁ・・・?
・・・自信が・・・ないよ。
だって、ポケットにはさ・・・。

俺はポケットの中に忍ばせた物を手で確認して、
気持ちがもうブレないように決心する準備をした。

ごめんね?オンマ。

死ななくてもいい命が絶たれたんだ・・・。
俺はそれが許せないよ。
俺の大切な・・・大切な花だったんだ。
一緒に見るはずだった桜も散ってしまったし。

だから・・・ね・・・?


「叔父さん・・・。」

「ドンウ君・・・すまない。
まずは謝らせてくれ・・・それから話を聞いて欲しいんだ・・・。」


俺は・・・叔父さんの話を聞く気など、一寸たりともなかった。

叔父さんの顔を見る瞬間までの間に、俺はもう俺じゃなくなっていたのかもしれない。


そして、俺は顔を上げた・・・・。


---------------------------------------------------------------------------


「ヒョンっ!!今ね、ドンウヒョンは公園のブランコに乗ってる!そっちは?」


「うん、もうすぐ追いつくからっ!ソンジョン、絶対に見つかるなよ?」

「うん・・分かってるよ。任せて!」

「慎重にな?」

「分かった、じゃぁ、また!」

ソンジョンは木陰に身を潜めながら、ドンウの様子をみんなに伝えた。


---------------------------------------------------------------------



「ソンギュヒョン、ソンジョンなんて?」
ソンジョンと電話のやり取りをしたソンギュの肩に
手を置いて、身を乗り出して聞くホヤ。
その反対の手にはヒカリの手と繋がっていた。

「あぁ・・今ドンウは公園らしい。でも、また直ぐに動くだろう。」

「そっか・・・ドンウヒョン・・・大丈夫かな。」

「だぁ~い丈夫だって!俺達が迎に行けばきっと
元気出る筈だよっ。」
そう言ってウヒョンはこれ以上、気持ちが暗くならないように
努めて明るく振舞った。

「だなっ!俺達、いつもドンウヒョンの明るさに助けられてる所
あるし、今度は俺達がドンウヒョンを助ける番だよなっ!」
と、ソンヨルはミョンスとウヒョンの肩に手を回しながら
努めて明るく振舞った。

「うん・・・。ドンウヒョンが笑うとさ・・いつも俺達も笑ってさっ・・・
ドンウヒョンがいなかったら、俺達・・・もっとぎこちなかった時期が長かったかもって
思う時あるんだよね。ドンウヒョンは・・・やっぱり俺達にとっては
いなくちゃならないムードメーカーだよなっ。」
ソンヨルに並ぶようにミョンスも言った。


「よしっ!じゃぁ急ごう!!」

珍しくホヤがソンギュより先に号令を掛けた。
不思議と何も変に思わずに、走り出した。
皆・・・みんなドンウがただ心配だったから・・・

騒がしい街の間を掻い潜って、大通りを越え
住宅街の中を右へ左へくねりながら、
迷路のゴールを知っているかのように走り続けた。

「いたっ!いたいたっ!!ソンジョンだ!」
気持ちばかりが焦るソンヨル。俺達さえ行けば
きっとドンウヒョンだっていつも通りに戻ると信じて流行る気持ちを
抑えられなかった・・・。

「ソンヨラっ!声でかいって!!」
そんなソンヨルの気持ちを分かっていても
今見つかるわけには行かなかった。

「ごめんっ・・・」

早る気持ちをホヤに注意されて、冷や汗が出るソンヨル。
そんなソンヨルを気にかけてか、後ろを走るミョンスが背中を軽く2回叩いた。

”ケンチャナ”

そんな風に言ってくれるようで、ソンヨルの背中の汗が
少し引いていくようだった。
それから間もなくして、ソンジョンの所までようやく追いついた。

「ぉいっ!ソンジョンっ!様子はどうだ?」

「あっ、ヒョン!」
ソンギュとソンジョンは小声で声を掛け合った。

そこは既に桜並木を通り過ぎて、ユカリンの自宅前に
ドンウが立っているようだった。

俺達はソンジョンと合流し、川の向こうの橋からそっと
ドンウを見つめた。

「ソンギュヒョン、どのタイミングで声かける?」

「ソンジョン、焦るな・・・ちょっと様子を見よう・・・。
まだドンウはユカリンの家を眺めていたいんだろう・・・」

「ホヒョン、ホヒョンが先に声かけるよね?」
と、ソンジョンが言うと、すぐにソンギュも賛成した。
「うん。それがいいと思う。」

「うん・・・。だね。」
ミョンスもホヤに視線を移して何度も頷きながら言った。

「分かった、そうする。」
そう言って頬を膨らませて深呼吸をするホヤ。
視線はドンウに集中しているようだ・・・。

「あ・・・ちょっと!あれ見て!?」
ソンヨルが急に声を上げた。

「んっ?!あれ、ユカリンのお父さん??」
ミョンスの裏返った声に皆が振り向く。
直ぐにみんなはその視線の先へ、ソンヨルだけは
下を一瞬見てから顔をあげた。

「何話してるんだろう・・・」
ウヒョンが呟くと、ソンジョンがそれに答える。

「なんか深刻そうだよね・・・。」

黙ったままじっと見つめるホヤとソンギュ。

「もう少し・・・近づいてみる・・・。」

「ヒカリも行くっ」

「んーん・・・ヒカリちゃんはここで。
ソンギュヒョン、ヒカリ・・ちょっといいかな・・・?」
ホヤはソンギュにヒカリを任せた。

「分かった・・。ヒカリちゃん、オッパと一緒にいよっ?」

「・・・・はぁ。」
ため息をこぼすヒカリを預けて、ホヤはゆっくりと近づいて行った。

「じゃぁ、俺も行くよ。」

「あ、僕も・・。」
そう言ってウヒョンとソンジョンも
そっと近づいて行った。

一軒一軒お店の影に隠れながら、次第に近づいて
とうとう手の届きそうなくらい近くまで来ることが出来た・・・。

3人はそっと店の影から覗き込んでみた。
すると、目に写った物に驚いて、冷えた汗が
ツッーっとシャツの中を流れていくのを感じた。


しっとりとしていくシャツが気持ち悪いのか
その光景が信じられなくてそうなのか、何とも言えない
気分の悪さと焦る鼓動で体がおかしくなりそうだった。

その3人とは対照的に、残された4人・・・・。
今にも走り出しそうに見えるヒカリの腕を
ソンヨルが感づいて掴んだ。

パシッ!

「痛いよっオッパ!」

「駄目だよ・・・。」
ソンヨルは1度だけ瞬きをして、首を横に振った。
ソンヨルの真剣な眼差しにヒカリは一瞬たじろくが
キッと睨み返すように、見つめ返した。

「ヒカリちゃん?オッパ達と一緒にいてよ。
ただ、心配なだけだから・・・。ねっ?」

するとヒカリはソンヨルの気持ちを悟って
睨むのを止めた。

ミョンスはソンヨルとの間にヒカリを挟んで
頭を撫でながらいつもの笑顔で頷いた。
その手はヒカリの気持ちを落ち着かせたが
張り詰めるような空気が変わることはなかった。


「だけど・・・やっぱり心配だな・・・。」
と、ソンギュが呟くと、本当は気になって仕方がないソンヨルが
「じゃぁ、もう少し近寄れる場所はないかな?」
と、迷いつつも言った。

「あっ、ねぇ。あそこはどう?あそこの本屋と雑貨屋が並んでるの見える?」
と、ミョンスが指を差した。

「ん?あ~その隣がカフェ?」
と、ソンギュ。

「うん。見える・・・あのメニューの看板みたいな所は?」
とソンヨルが言うと、

「そうそう・・・あそこに移動しない?」
とミョンスが言った。

「O.K.分かった。」
と、ソンギュが言い、距離を図るようにじっと見つめた。

「俺とソンヨルの間にヒカリちゃんを
挟んで、あそこの看板まで行こうっ」
と、ミョンスが提案を出すと、

「うん。あのカフェの看板の裏ね?」
と、ソンヨルが指を差しながら答えた。

「そう・・・あのメニューの看板みたい所。
ヒカリちゃん、分かる?」
と、ミョンスはヒカリの背中に手を当てながら
しゃがみこみ、目線を合わせて言った。

「うん。大丈夫だよ。分かる・・・。」

「ん・・・じゃぁ、ヒカリちゃん付いて来てっ行くよっ?!」

ソンヨルがそう言った瞬間に一斉に走り出した。

走っている間、心臓が飛び出るようだった。
全速力という理由だけではなく、見つかるかもしれないという
不安と緊張感で、一杯だった・・・。

一人・・・また一人と無事に見つからずに
到着し、上がった息を整えるのに
暫く誰も口を開く事が出来なかった・・・。

ヒカリがいることを確認する3人のオッパが
取り敢えず胸をなでおろして、直ぐの時・・・


叫びながら飛び出したヒカルを、誰も止めることが出来なかった。

一瞬の出来事に、誰も開いた口が塞がらなかった。




------------------------------------------------------------------------------




俺は今・・・ユカリンのお父さんを目の前にして
冷静に考え・・・心静かに話している・・・。
その・・・つもりだ。

本当に?
本当にそうだろうか・・・?

いや・・・違う。
怒りで我を忘れたまま話してるんだ。
静かに・・・静かに・・・
あまりの怒りに大声すら出せなくて、
その怒りに対する罪を償ってもらおうとしているんだ。

だから、今の俺は通常運転じゃないね・・・。
もう、色んな人の顔も置いてきた。
思い出の中の人達を・・・。


「どうして・・・。」

「・・・・・・・。」

「どうしてユカリンをこんな目に合わせたんですか?」

「ちっ違うんだっ。」

「違う事なんてないじゃないですか・・・ありのままですよ。
俺は叔父さんに失望したんです・・・。」

「ユカが目を覚ましたって、完全に元に戻る
保証はないんだよ?それに・・・」

「おじさん、サヨナラ・・・・」

ユカの父親がまだ全てを話終える前に、
一気に感情が吹き出してしまったドンウ・・・。

ポケットから素早く出したナイフを・・・振りかざした。


ドンウがポケットに手を入れるのを見た瞬間
みんな一斉に走り出した。

嫌な予感は当たるものだ。


「ドンウちゃんっ!!駄目っ!!」
ヒカリの叫ぶ声・・・飛び出した体。

「ドンウッ!!」
ソンギュも叫ぶと、ウヒョン・ホヤも同時に叫びながら
ドンウを止めようとした。


伸ばした手がもどかしい・・・

ユカリンのお父さんは、出されたナイフに驚いて、後ろにのけぞった・・・

そしてヒカリが叔父さんに飛びついて・・・


「ヒカリーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

ホヤの叫び声が、ユカリンの家の前の歩道にまでこだました。

ソンギュとウヒョンの手はドンウに届かなかった。

ヒカリはおじさんの足元に倒れ込んでいた・・・

「あっ・・・あ・・・あぁ・・・」
ホヤが倒れ込んだヒカリを見て、震えが止まらなくなった。
なんてことだよ・・・なんでヒカリが・・・
また・・・君を失うのか?

沢山の想いが重なって蘇る記憶。
もう二度とあんな思いはしたくないと、自分でも分からないまま
心がそう叫んだ。

思い出した・・・ヒカリは・・・もしかして・・・

今はそれだけしか思い浮かばなかった。
それ以上の事は何も考えられない所で、ヒカリがホヤを呼ぶ声がした。

「ホヤちゃん!」
ヒカリはムクッと体を起こし、第一声がホヤの名前だった。

「ヒカリ?お前・・・大丈夫なのか・・・?」
ニカッと笑うヒカリにホヤはちょっと目が点になった。

「ぅん・・・ヒカリは大丈夫っ!」

「はぁ~・・・よかっ・・・」


そして、気が付けばまた誰かが叫び出した。



「ぅっ・・・うぁっ・・・うわぁああああああああああああああああ!!!!!!」



ホヤの後ろでソンヨルが顔面蒼白で
叫び出していた。

声も出せないソンジョンの横でソンヨルは、
翼を真っ黒に染めてしまったルシファーのように叫び続ける。

「嘘だっ!嘘だっ!!嘘だっ!!!!
なんで・・・なんでお前がここにっ!!!!!!!!!」


そして、方向転換してドンウに飛び乗り、何度も何度も殴り続けた。

「ソンヨルヒョンっ!!」
ソンジョンの声など届くはずもなく、
ソンヨルは我を忘れた。


何故・・・?

何故ソンヨルが・・・・・・・

俺を殴る・・・・?

ドンウは分けも分からなかったが、それでもソンヨルに殴られ続けた。
自分のした事が、取り返しのつかないことには
代わりはなかったからだ。


それから・・・それからソンギュヒョンの声が聞こえたなぁ。
それに、ウヒョンも・・・。ミョンスは・・・
ソンヨルを止めようとしてたっけ・・・

ホヤはヒカリを抱きしめた後に、ユカリンのお父さんの横に
付き添っているようにと座らせた。

それよりも・・・それよりも・・・・

もう一人の・・・ユカリンのヌナじゃないヌナが
そこに倒れてたんだよ。

ははっ・・・まさか・・・?おかしいだろ?

なんでヌナがここに?

「うあああああああああああああ!!!なんでっ!!
どうしてっ!?どうしてだよっ!!ヒョンっ!!答えろよっ!!」

「ソンヨラっ!やめろっ!!それより、ヌナがっ!!」
ミョンスがようやくソンヨルを羽交い絞めにして
殴るのを止めさせた。

「ヌナッ!!聞こえるか?ウヒョナっ、そっち持って。」
ソンギュが自分の着ていたシャツを破き、ヌナの腰に
当てながら回し付けるとウヒョンに手渡した。

「O.K.回すぞ?」
ソンギュがヌナの体を支えてる間に、ウヒョンは
そのシャツを体に巻きつけて止血した。

「ソンギュヒョン!僕、救急車呼んだよっ!」

「分かったっ。よし、ソンジョンも手伝って?」

「うん、僕のカーディガン使えるかな?」
ソンジョンは急いでカーディガンを脱いだ。

「よし、それ真っ直ぐにするようにして、この上から縛ってっ」
ウヒョンが1枚目のシャツを結び終えて、ソンジョンに
指示を出す。

「分かったっ。」
ソンジョンは袖と胴体部分を真っ直ぐにするようにして、お腹を覆った。

ソンジョンの細くて白い肌が半袖からのぞく・・・
その腕が少しぎこちなく動きながら手当を必死にしていた。


「うっ・・・うぅ・・・」

ヌナの声が聞こえた瞬間、我に返ったソンヨルが
駆けつけた。

「ヌナッ!!ヌナッ!!」

「あ・・ソンヨル・・・。」

「なんで・・・なんで・・・来るなって・・・言っただろ?」
泣き虫なソンヨルにヌナはクスッっと笑った。

「私は大丈夫だよ?衝撃でちょっと気絶したみたいだけど・・・。」

「ちょっと気絶したみたいじゃないだろっ!?」

「ほんとに大丈夫なんだってば!ほら、見てっ!?」

「えっ・・・・?」

「へへっ・・実はこれケチャップ・・・なの・・・ごめんっw」

「えええええええええええええええええええええっっっ!!!!????
嘘だろ???なんで???なんでケチャップなんかっ!!?」

「ヌナ・・・やってくれたな・・・」
直ぐに状況を理解したソンギュが、頭に手を置いて首を振る。

「マジかっ!!wwwwwwうははっ」
ウヒョンももう、笑うしかない・・・・

「えぇっ??あ・・・ホントだ・・・ヒョン、
これほんとにケチャップだよっ!?」
ソンジョンは指ですくって舐めてみると、
やっぱりケチャップだった。

「ありえねぇし・・・・なんの冗談?ヌナッ!
こんなの・・こんなのっ冗談になんないよっ!!」
ソンヨルの興奮がただでは収まる筈もなかった。

「えぇ~っと・・・これには深い訳があってですねぇ・・・ヘヘッ」
そんなソンヨルを見ても、ヌナは動揺する事もなく
少し笑って和ませようとしたつもりだった。

「はぁ・・・なんにしても誰も怪我はないんだな?」
ソンギュはとにかく理由は後で構わなかった。
みんなが無事だと分かると、ホッと胸を撫で下ろした。










 





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もう・・・終わりにしょう。

全てを・・・。

終わりにしたって何も変わらない日常が
残るだけだから。

別にいいさ・・・

何も変わらないんだから。

変わるのはこの傷付いた心だけで、その他は
1つも・・・1つも・・・変わらないんだから。


暗い部屋の中にはいくつもの俺の抜け殻があって、
時々その扉を開いて確認してみると・・・

今まで殺してきた感情達が、折り重なるように
そこにあるだけだった・・・。

沢山の悲しみや怒り、欲求・・・沢山の
感情がそこに転がっていた。

今の俺は一体その抜け殻を見てどうするつもりなんだろうと
自分自身に問いかけていた。
それが無意味だと分かっていても、事実は違うんだって
分かっていても、皆本当は違うだろ?
って疑心になっていくのを必至で抑えながら、
最後にはその抜け殻を残して逃げていた。

今・・・俺はそこに立たされているのかもしれない・・・。

何かに試されているような、何かに追い立てられたように
そこにいるんだろうね・・・。

みんなの視線が痛いのはそのせいなんでしょ?

なんだか疲れたんだ。
俺の物語なんてどうでも良くなったんだよ・・・。

俺が終わればこの世界も終わって、過去も全て
思い出さなくても良くてさ。
だけど、その勇気がないから生きなくちゃいけない。

ノロマなカメやノロマなカタツムリが俺を苛立たせるんだ。
そんな目で見るなよ・・・
お前だって醜いだろ?・・・・・。

体に黒い空気を身にまとったら最後。

どんどん押し寄せてくるモノクロが、遂には
焼け落ちた屋根のように急に自分に落ちてくるんだ。
風で巻き上がった炎に、俺はもう自分でさえも
抑制できずに、怯えながら叫んぶんだ。
それから・・・白黒になって・・・何も心を動かさなくなる。
まるで毎日がお葬式だ。

俺から光を奪えばこんなもんさ・・・。
きっと俺だけじゃない。
光を失ったらみんなこんなふうに一気に押し寄せる
黒い炎に包まれるんだ。

俺は・・・夢を選んでしまった。

きっとその十字架を背負ってしまうのだろう。

まるで・・・自分が殺めてしまったかのように感じてまた
俺は堕ちてしまうんだろう・・・


プツッ・・・

誰かが針を刺してきた。

それは、誰にでもが起こる日常での小さな傷。

その痛みが収まったと思ったら、また違う誰かに
傷を受けるんだ。

チクチクと痛むのはそのせいだろう。

あまりにも小さな傷は他人からは見えない。

針で空けたような心の傷は、誰も気がつかないんだよ。

だからチクチクと音がするようだろう?

あのチクチクは、針で指す音だから。

風船がしぼんで見栄えも悪くなって、空にも飛ばなくなって
どうにも身動きができなくなった、ただの抜け殻。


だから俺は、


『・・・ちゃんっ・・・ドンウちゃん!!』


「?!」


「ドンウヒョン、大丈夫?心ここに在らずだった
みたいだけど・・・・」

「えっ・・・ホヤ・・・っとヒカリちゃん・・・」

「ドンウちゃん、駄目だよ。闇に囚われないで?」

「ははっなぁ~に言ってんのw俺はだいじょぉ~ぶっ!なのだっw」

「大丈夫な顔じゃなかったのっ!目が・・・
なんかっ目が違う世界に行ってたよ?」

「ヒカリちゃん・・・心配してくれてるの?ありがとう^^」

俺はそう言ってヒカリちゃんの頭を撫でると、また
一人で楽屋に戻った。

なに?

そうだよ。今日はHの最終日だから・・・ね。

頑張らなくちゃいけないんだ。
誰に向かって歌えばいいかって・・・
そりゃファンのみんなだよ。
当たり前じゃないか。
いつだって俺はそうしてきたし、これからだってファンの為だけに
歌うんだってば。

「死んだ魚の目・・・」
ヒカリはホヤにそう呟いた。

「うん・・・。」

「ドンウちゃん・・・あぁ・・でも今の私には
何もできないよ・・・」

「今の私?今の私って?」

「ん?なんでもないよ?」

「いや、絶対に今言ったよね?もしかして・・・」

「さぁ、さぁ!ホヤちゃんも準備しないとぉ~!」
そうヒカリに背中を押されて答えてもらえなかった。


-----------------------------------------------------------------------



ヒカリちゃんはきっと俺の悶々と考えてしまうのを
遮ってくれたんだな・・・

俺が考えすぎておかしくならないように・・・

でも・・・ごめん。

何も思わないんだ・・・何も感じない。
ユカリンしか感じ取れない・・・。
今だってほら・・ユカリンの顔さえ思い出せば
涙が溢れてくるんだ。

でも、もう君はいない・・・

まさか身内に殺されるなんて思っても見なかっただろうね。

俺はユカリンの父親が許せなかった。
せっかく意識が戻ったというのに何故?
理解出来ないよ・・・。
俺からユカリンを奪った・・・俺から大切な人を奪った。
だけど、その考えが浮かばない。
何を思って?

もういいや・・・これで・・・終わりにしよう。

俺は・・・このステージには似合わないから。

INFINITEを・・・やめよう。


俺は・・・その前にどうしてもやらなきゃいけないことがあるんだ。


ごめんね?みんな。

俺は俺じゃなくなってしまったから・・・。
もう笑えないんだ。

チャン・ドンウって男はもうここにはいないんだ・・・。

俺はただの鬼だ。

愛する人を奪われて、ただの恨みの塊と
なってしまったから・・・。

みんな・・・さよなら・・・。





------------------------------------------------------------------



俺は機会を待った・・・


コンサートは最後までやったけど、俺の目は
白目を向いてなんの感情も出てこない。
これが最後の仕事だと、思い入れることすら出来なかった。

ホヤには・・・申し訳ないけど。


コンサートの最後の曲を歌い終わると、俺はマイクを投げて
すぐにステージから捌けた。

もう、これで終わった。

ホヤの顔だけは潰さずに済んでよかったな・・・。

さて・・・始めようか・・・チャン・ドンウとして最後の夜だな。

俺は手初めてにナイフをポケットに仕舞い込んだ。
それから、ユカリンのお父さんに電話をかける・・・


ゆっくりと数字を押して・・・
その指はなんの迷いもなかった。
呼び出し音が惨劇をこまねいて死の旋律を
奏でているようだった。
それでも俺は何も思わずに、睨みつける目もせずに
電話を掛けていた。

Plulululu......

Plulululu.......pu.

「もしもし・・・。」



------------------------------------------------------------


ホヤが落ち着かなく家に到着して、靴を脱いで手も洗わずに
ソンギュのところへ真っ直ぐに来た。

「ソンギュヒョンっ・・・ソンギュヒョン、なんかおかしいんだ。」

「ん?何が?ってかあれ?ドンウは?」

「うん・・・そのドンウヒョンなんだけど、ライヴ終わってすぐに
ファンの子達に笑いかけたりもしないで、
すぐにステージからいなくなったんだ。」

「なっ・・・まぁ・・でもユカリンの事がさ・・・。」

「うん。分かるよ。でもさ、なんか変なんだよ。
急いで帰りたいって言うからさ、マネージャーが途中まで
送ったらしいんだけどね。俺は少しお疲れ様って軽い食事とかあったから
残ってたんだけどさ・・・。その・・・途中、どっかで降りたらしいんだよ。」

「えぇっ??マネージャーは?」

「なんか駅の近くだったらしいけど、その先も言わずに行っちゃったって・・・。」

「ホヤちゃん、なんか嫌な予感がするよっ。
なんだか・・・分からないけど・・・。」
ヒカリが横から心配そうな顔で言ってきた。

「ん・・・そうだな・・・でも、ヒカリちゃんは心配しないで?
俺とヒョン達でなんとか探すから。」

「・・・・・ホヤちゃん、私はまた蚊帳の外?」
ヒカリの潤んだ瞳に焦るホヤ。

「ホヤ、ヒカリちゃんを泣かすなよ。ヒカリちゃん、君も一緒に
考えてくれる?」

「ソンギュオッパ・・・ありがとう。」

「ウヒョニオッパもいるよんっw」

「あっ!ウヒョニオッパ大丈夫?」

「何が?大丈夫に決まってるだろ?w」
ウヒョンがヒカリへウィンクをした。

「あ・・・。うん、そうだねっ!」

「ソンヨリオッパもいるですよぉ~~っ」

「ぅわっ!お前どっから湧いて来たんだよっ!!」
ホヤがのけぞって驚くと、クスクスとヒカリは笑った。

「湧いたって失礼だなぁ・・・ねぇ?ヒカリちゃんw
ソンヨリオッパがいれば、もう大丈夫!!
大船に乗ったつもりでまっかせなさいっ!!」

「おいおい・・・沈没しそうだけど?その船・・・」
とホヤ。

「なっ!何言ってんだよ~ひどいなぁ・・・なぁ?ミョンスも
何か言ってやれ~?」

「クハハッ!」

「ガクッ・・・笑っただけじゃねぇか・・・まぁ、いいや。」

「フハッ!いいのかよっwww」
そう言ってウヒョンも笑った。

「よしっ、揃ったところで行くか。」
ソンギュの声で皆家を飛び出した。

玄関でさっきまで笑って冗談を言っていたソンヨルが
彼女の手を握って『来るな』と言った・・・。

「どうして?私も・・・」

「駄目だって言ってるだろ?」

「なんでよ!いいでしょ?こんな時ばっかり
真面目に言うなんてっ!変よ!!」

「ヌナ・・・俺は・・・」
首を横に振って思い直したソンヨル・・・・
今じゃない・・・今じゃないんだと言い聞かせて
眉間に皺を寄せてまた彼女を見た。

「ソンヨル・・・」
そう言って彼女はソンヨルの首に腕を回して
抱きついた。

「ソンヨラッ!!」
ウヒョンが呼ぶ声がする・・・

「ごめん・・・今は何も言えない・・・」
ソンヨルは彼女の手を片方づつ外してそっと
元に戻した。

泣き崩れた彼女をソンヨルは振り返らずに走った。

仕方がない・・・今は・・仕方がないんだ。

「もしもし?ソンジョンか?」

「うんっ!ヒョン、今川沿いを歩いてるよ!
早く来てっ!!」

「分かった、そのまま見張っとけよっ!?」

「O.K、分かった。」

街に出掛けていたソンジョンにソンギュが連絡をして、
ソンジョンは先回りしてドンウを見つけ出していた。

電話を切ったソンギュはみんなにそれを伝えた。

「ヒカリ?ヒカリは俺の傍に居てね?」

見上げたホヤがとてもかっこよかった。

「うん。ホヤちゃん。」
初めて呼び捨てにしてくれた・・・
なんだかくすぐったくて嬉しかったけど、
今はその気持ちを大切にしまっておこうと思った。
それよりもドンウオッパが心配だったから・・・。

「馬鹿な事・・・しないでくれよ・・・ドンウヤ。」

「ソンギュヒョン・・・大丈夫だって、きっと
間に合うさ。^^」

ウヒョンがソンギュの肩に手を置くと、ソンギュも
頷いて、それから遠くを見つめた。
電車に飛び乗りみんな黙ったままだった。
そしてミョンスは近づくなオーラを全身に出している。

近づけば、睨み返して追いやった。
ウヒョンも決して笑顔を出さなかった。

きっとうまくいく・・・みんながついてるから・・・

ホヤは強く心で思った。
そう言い聞かせないと、不安で仕方がなかった。

その頃、ソンヨルに抱きついていた彼女が
玄関を出て、そっと後を追っていた。

同じ電車にギリギリの所で乗り込み、違う車両で
ひっそりと様子を伺っていた。
駄目だと分かっていながら、じっとしてなどいられなかった。

何か変ね・・・

どうして、オンニがいないの?
オンニは何処へ行ったんだろう・・・
証明できたとしても信用できないかもしれない。
そんな事を彼女は考えながらホヤ達をそっと
見ていた・・・。



ガタガタと揺れる電車に身を任せながら、
それぞれの不安と心配をその電車に
置いて行きたいと思っていた。

ドンウに限って変な真似などしないと
信じたい気持ちだけを持って・・・

ふとミョンスはヒカリを見つめた。
ジ~っとジ~っと穴が空くほどに。

「何?ミョンス。ヒカリに穴空くから止めて?」

「あ、うんっ・・・ねぇ、ヒカリちゃん?」

「うん?なぁにミョンスオッパ・・・。」
ギクリとしたように目を合わさないヒカリ。

「こっち見て?」

「う・・・うん。」
暫くミョンスは目を細めたりしながら
ヒカリの顔を見て突然指を揺らしながらヒカリに
指を差した。

「あのぉ~・・・さ?ヒカリちゃん、俺と以前何処かで会った?」

「そっそりゃぁそうだろっ!だってヒカリは元々空港とかで出待ちしたり
してたんだからさっw」

「ホヒョン・・・ホヒョンには聞いてない。」

「うっ・・・」

「あ・・・あの・・気のせいじゃないかな?へへっ・・・」

「んーん・・・何か隠してるでしょ?」
と、ミョンスは首を振って答えた。

「あっ!もう駅着くよ!ミョンスオッパ!行こっ!」

「・・・・。」

ヒカリはチラリとミョンスを見てからホヤと
ソンギュの腕を組んで、タタッと足早に歩いた。

「おい、ミョンスどうしたんだよっははっ・・・」
ソンヨルはミョンスに並んで歩き出して言った。

ニコッと笑ったミョンスにソンヨルも笑った。

そこでソンジョンからの電話が鳴り出した・・・

一瞬で和やかだった空気が変わっていくようだった。
ソンギュが携帯を耳に当てて、視線が下から
上に上がる瞬間まで俺達は緊張し、心音を高ぶらせた。

どうか・・・無事でいて欲しかった。

何も・・・何も起こらずに・・・・無事で。

ソンギュヒョンの表情から目が離せないまま、
俺達はその場に立ち止まった・・・・






 


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無残にも奪われた。

これ以上の何があるのかを知りたい。





「ドンウ!!どうしよう!!お父さんがっ!!」




それは突然の電話だった。

ヌナからの・・・・


最悪の知らせだった。

俺はこの時、イベントやらのスケジュールの
真っ只中にいたんだ。

忙しくてバタバタしてるのに、携帯の電話に
出たなんて幸運とでも言えるのだろうか・・・?

訃報なのに?


ヌナからの知らせを聞いた俺は、地獄を見るようだった。

全然ステージが輝いて見えない。
歓声も、俺に当たる照明さえもモノクロで、何の音も聞こえては来なかった。


ユカリンのお父さんが・・・
ユカリンを勝手に連れ出して失踪したらしい。

まさか・・・

嘘でしょ・・・?

そんな事をしたら、ユカリンが死んでしまう・・・。

なんで・・・・

膝が震えて来て何も考えられなくなった。
視界が・・・真っ暗になったんだ・・・。



「オイッ!!ドンウッ!!ドンウッ!!」


もう・・・マネージャーの声も俺には届かない。

神様が描いた俺の地図はこんなにも残酷だった。
これが俺の人生なのか?
俺にこんな試練を与えたのは何故?


意味があるようでないようなそんな遊びを
するのだろうか・・・?

白目を向いて倒れた俺をホヤが頬を叩いて
正気にしてくれた。

「ドンウヒョン!!しっかりしろっ!!ドンウヒョンッ!!」

「ん・・・っは!!ホヤ・・・ユカリンが・・・ユカリンが・・・」

「うん・・・ヌナに聞いたよ。もう、ヌナがここに到着したみたい。」

「はぁはぁはぁはぁ・・・・・・・ドンウッ!!」

「ヌナ・・・・。」

ヌナは汗だくになって俺の名前を呼んだ。


気が付けばもう秋だった・・・。

楓の葉が色づいて綺麗な風景を見せてくれる
代償はあまりにも大きかった。

どれだけ走ったら、そんなに汗が出るの?
どうでもいい考えが浮かんで、何も思わせないように
思考がこの状況から逃れようとしていた。


「ドンウ・・・今お母さんが心当たりを探してはいるんだけど
まだ見つからないみたい・・・」

「どうして・・・この間分かってくれたんじゃなかったの?」

「私も・・・そうだと思ってたよ・・・。こんな大事な時にごめんね・・?」

「いや、それはいいんだけど。言ってくれないよりはね。」

「うん・・・。」

ホヤは二人の会話する顔を、二人が話す度にその顔を
交互に見ていた・・・。

「ホヤぁ~~!!」

「ヒカリちゃん!!」
遠くから走って来てぶつかりそうになるヒカリをホヤが受け止めた。

「大丈夫?ヒカリちゃん。」

「うん。それより、ヌナ・・・」

「ヒカリ・・・私・・・私・・・」

ヌナらしくない顔とドンウらしくない顔を見ると、
その心を受け取るかのように、ホヤの胸も痛めた・・・。

本番直前になって、事態が急変した。

ユカリンからメールが来たんだ。

その瞬間に何故か俺の海馬から色んな記憶が
物凄い速さで駆け巡った。

見たこともない風景と、見たこともない人が俺に
笑いかけた。

『大丈夫だよ。ドンウなら大丈夫だよ・・・。』

笑うその人が俺にずっとそう言っているのが見えた。

一瞬しか見えなくて、顔がよく分からなかったけど、
誰かが俺を応援していた・・・。

でも、その人はもういないようだけど・・・。
頭が痛い・・・

『俺が行けと言ったじゃないか・・・。』

それは俺か?

そんな会話まで聞こえてくるようだった。

『君がそう願ったんだじゃないか・・・。』

変な会話だ・・・。

な・・・んだ・・・・・・?
頭が割れそうだ。


『・・・るさん・・?あぁ・・・でも俺、駄目かもしれないんだよ・・・。』


『・・・・・ドン・・・ウ・・・いつも笑顔で、
とても素直なところが素敵だと思うよ?・・・。』

『俺が?・・・・そうかな・・・素直かな・・・?』

俺は白昼夢の中でその誰かにそう言った気がした。

自分では否定したい心境だったから。

俺はちっとも素直なんかじゃないんだよ・・・
俺は言おうと決心さえ出来なかったんだ。
好きだって・・・。
だから・・・だから今こうして苦しんでるんだ。

遠くで微かに聞こえてくるオルゴールの音が
やけに悲しげで俺に何かを伝えたがってるようだった。

俺の記憶が何かを伝えようとしている・・・
でも、それは夢なのかもしれない。

そう思って瞬きをしたら、俺は正気に戻った。
一瞬の夢を見た・・・
それはきっと数秒間の間だったのだろう。
だけど、俺にはとても長い・・・とても長い夢だったんだよ。

悲しくて恋しくて何か大切なものだった。

忘れられない深い悲しみと忘れてはいけない記憶。

それでも今は思い出せずに、
ユカリンからのメールを開いた。



『ドンウちゃん・・・私だよ?ユカ・・・。
分かるかな・・・もう、忘れちゃった?w』

『私ね・・・長い・・長い夢を見ていたみたい。
お父さんに連れられたここはどこなんだろう?
分からないけど、とてもいい景色よ・・・。』

『でもね・・なんかお父さん変なの。
ソワソワしてて・・・私目覚めたばかりで
今日が何日なのか分からないの。』

『ドンウちゃん・・・今何してるの?』



それで終わってた。


その時間は数時間前を示していた。

俺は数時間もユカリンをほっておいたことになる。
どうすればいいか分からない。
ヌナが連絡をくれたのはさっきだ・・・

ユカリンが目を覚ました。
嘘みたいだ!信じられない!奇跡だ!!って、
本当ならなんて喜ばしい日なんだって
はしゃいだ筈・・・。

その機会を父親自ら切り捨てようとしているなんて・・・

誰も気がつかなかった・・・
ユカリンのお父さんはもう決めていたのだろうか・・・?

でも、ユカリンは目覚めたんだからいいんじゃないか?

どうして、失踪なんかしたんだろう?

「ヌナ・・・どういうことだろう?ユカリンが目覚めたのなら
良かったって喜ぶ筈なのに・・・」

「うん。そうなのよ・・・どうしてだろう・・・。
電話したけど出ないのよ・・・。お母さんも探してるけど
まだ見つからないって。」

「ユカリンのお父さん・・・何か知ってる筈だね・・・
きっと何か思う事がある筈だよ。」

「うん。そうだよ・・・おかしいよ・・・。」

するとそこへお父さんからヌナの携帯に
電話が鳴った。

「!!お父さんからだっ!」

俺はゴクリと生唾を飲み込んだ・・・


「もしもし??お父さんっ??今どこ!?
ユカは?無事なのっ!?」

「すまない・・・・ユカを連れて行くよ。
こんな体じゃ・・・生きていけないだろう?」

「ちょっ!ちょっと待ってよ!!なんで?
なんでそんな事勝手に言うの?まさか死ぬつもり???」

「・・・・すまない。弱いお父さんを許してくれ・・・。
こうするしかない・・・こうするしか・・・。」

「お父さんっ!!」

プッ・・・・ツーツーツー・・・

たったそれだけを残して、電話は切れてしまった。

俺は急いでユカリンにメールをした。


『ユカリン!!ドンウだよ!
ユカリン、逃げるんだ!
今すぐお父さんから逃げて!!』


でも・・・それからユカリンから返事が来ることは
なかった・・・。

「ヌナ、もう一度お父さんに電話して!」

「うっ・・・うん分かった。」

「INFINITE Hさぁ~ん、そろそろ本番でぇーす!」
スタッフの声が同時にかかり、俺は気が気じゃなかった。

この状態でライブをやれって?
冗談じゃない!!
無理だ!!
俺はやらない!やりたくない!!
嫌だっ嫌だっ嫌だっ!!!

心の中ではそう叫んでいた・・・

だけど、弱虫なのか、そんな事ができない俺は、
電話をかけるヌナを横目にステージへ足を向けた。

今にも泣きそうなヌナ・・・
寄り添うヒカリ。
俺を見ながら電話を掛けている・・・・。
その涙がこぼれ落ちる瞬間に誰かがその顔を
隠した・・・。
ヌナはその胸の中で泣いた。

ヒカリちゃんはホヤに頭をもたげてため息をつく。
「馬鹿・・・。遅いよ。」
そんな事をその人に呟いて。

それから・・・
見たこともない顔で弱く・・弱く・・ヌナは囁くように泣いていた。

俺は初めてヌナの思い人を知った。
そして、初めて素直になれたヌナを見たんだ・・・

苦しかったね・・・ヌナ。
辛かったね・・・ヌナ・・・俺が頼ってばかりだったから
気を強く持っていたんだね。
その顔を誰にも知られないように、強く強く誰も寄せ付けずにさ。
本当はとてもとても優しいのに・・・
口調は強くても、人の事ばかり気遣って、あんたは優しいんだから頑張れって
応援するようなそんな人だ・・・。


その足で俺はステージに立った。

ヌナのように心を強く持って。
誰にも知られないように、今はファンだけを愛して。

全てが嫌になるけど・・・
全てが真っ黒か・・真っ白に見えるけど。

俺は、ステージを選んだ。

それがいいか悪いかなんて分からないよ。
俺はユカリンよりもステージを選んだんだよ。


でも、悲しいメロディは聞こえないよ。

だっていつでも俺の心には君がいるから・・・
そう、綺麗言を思いながらね。
ステージに立っている間に、どうなったかは
分からない。
でも、楽屋に戻ってもそこにヌナの姿はなかった。

俺は、愛する人より、ステージを選んでしまった・・・

それから・・・ステージが終わって、数十分して電話が鳴った。

「ドンウ・・・私よ?」

「うん・・・ヌナ。」

「崖から・・・遺書が見つかったわ・・・。
それから・・・崖の下から多分ユカを乗せていた
車椅子とひざ掛けも見つかったって・・・。」

「そんなっ・・・・」

「あんたのせいよ・・・あんたが・・ライブなんか
やってるから・・・あんたのせいよぉーーーーーー!!!」



ヌナの悲痛な叫びが・・・受話器を通して耳に響いた。


その言葉に俺は携帯を落としてしまった。
涙が溢れて止まらない。
でも・・・俺には泣く権利など何処にもなかった。
何処にも・・・どこを探しても見つからなかったんだ・・・

携帯を拾い上げて、さっきまでの涙を拭いて問った。
「ヌナ・・・遺体は?遺体は何処に・・・」

「遺体?遺体っ??はんっ・・・・最初の言葉がそれっ?
よくもそんな事が言えたわねっ?笑わせないでよっ!
あんたの中ではもうユカは何処にもいないのっ!?信じられない!!」

一方的にそう言われて電話を切られてしまった。

俺はきっと鬼に心を引き渡したのだろう・・・。
俺は夢を選んだのだから。
それなのに、無情にも遺体は何処かって聞くなんて。
だけど、俺は最期に一目だけでもユカリンに
ただ、会いたかっただけだったんだ・・・

俺は勝手に諦めてた。

ステージに上がらなくてはいけない時・・・
その電話でユカリンに起こっている事態を
耳にした時に・・・もう、諦めていたのかもしれない。


俺は今・・・一体どんな顔をして?

俺は今恐ろしい顔をして?


誰か俺を抱きしめてよ・・・誰か・・・
苦しいんだ・・・心臓がえぐられるように・・・苦しいんだよ・・・
いっそ・・・心臓を外せるなら・・・
ただの入れ物になれるならそうなりたい。
ただの・・・人形に。
何も感じない。
痛みもない・・・悲しくもならない人形に・・・・

俺はその後、ホヤの声もマネージャーの
静止も振り切って走り出した。
あのスタジオまで・・・

着いてすぐにストレッチもせずに早足で機材まで歩き、
一人、音楽を大音量で掛けた。
最初は床に大の字に寝転んで、何も考えずに音に溺れ続けた。
ふぃに思い立ったかのようにじっとしてはいられなくなって踊り続けた。

ずっとずっと踊り続けた。

ずっとずっと・・・

朝だと気がつかないで、踊り続けて倒れた・・・・

動かなかくなった足。
痛みで起き上がれない・・・

涙と汗が混じって、血になるような感覚に
陥りながら、床に吸い込まれていく感覚を体に感じた。


ドクンドクンと音がする。
ドクンドクンと響き渡る。

俺の身体がグルグルと回って、床に吸い込まれていくような
そんな感覚に陥りながら、闇に閉じ込められてしまった。

激しい眩暈に顔を歪めながら、動かない足を見つめた。

このままの俺を置いて行かないで・・・
もう駄目だって言わないで・・・

誰にも終わりになんて出来ないのに。

俺にはまだ、ユカリンのお父さんが理解出来なかった。

どうして可愛い筈の娘を死に追いやるの?
それは間違ってるよ。間違った愛だよ。
少しのチャンスも与えずにどうして奪うの?

俺のユカリンだよ・・・
この愛は永遠だと言えば、もう俺のものなのに・・・

でも、俺はヌナを傷つけてしまった。
行き場のない気持ちをヌナへぶつけてしまうかのように
傷つけてしまった。
ヌナを思うあいつの顔が目に浮かぶようだ・・・

でも・・・・何にしても、もう終わりだ。

俺は恋も失って、ユカリンも失ってそれから
友もきっとこれから失うのだろうか。

終わったんだ・・・
俺の全てが終わった。

もう、派手な服にも靴にも興味が無くなったよ。
葬列のような服ばかりを着て・・・俺はこの道を歩くんだろうな・・・

あれからヌナからの連絡が来なくなった。
あの電話を最後に俺は一人になった気がした。



-------------------------------------------------------------------------------------





「ドンウヒョンッ!!なっ・・・何やってんだよ・・・
こんなになるまで・・・くっ・・・」


ホヤがうっすらと見えた。

「あ・・あぁホヤ・・・どうした?こんなところまで来て・・・。」

「何言ってんだよっ!ドンウヒョン!
もう・・・もう2日も・・・2日も経ってるんだぞっ?」
今にも落ちてきそうな涙が、どうかただの汗でありますようにと
願うように、ホヤの顔を見つめた・・・。

「ごめん・・・。」

振り向けばそこにはみんなもいた・・・。

俺はここに二日もいたのか・・・そんな感覚だった。

「お前・・・何やって・・・何やってるんだよぉ・・・まったく・・・」
らしくもない声で俺を呼ぶソンギュヒョンが俺を癒してくれるようだった。

「ソンギュヒョン・・・ごめん・・・。また迷惑かけちゃったw」

「っかやろう・・・。いいから帰るぞっ!?」

「うん・・・。ほんとごめんっw」

「こんな時に笑うなよ・・・。」
ソンヨルが二度見するように俺に言った。

「ヒョン・・・僕にできることはない?
とにかく今は少し休まないと・・・。」

「ん・・・ありがとな?ソンジョンは大丈夫か?」

「そんな・・・僕の心配なんて・・・」

「ドンウヒョン・・・なんで言わなかったんだよ・・・
こんなになるまで・・・彼女の事・・・。」
ウヒョンが何故か申し訳なさそうに顔をしかめた。

「ははっ人の恋愛気にしてる場合じゃないでしょぉ~。」

「ドンウヒョン・・心と言う事が反対だよ・・・。
どうして俺達には悲しいなら悲しいと言ってくれないんだ?」

「うん・・・そうだな・・・なんでだろ。」

「ドンウヒョンは俺たちに隠し事が多すぎるよ。
顔に出るくせにさ・・・。」

「ミョンス、ごめんってばw そんなにみんなして俺を
責めるなよ。」

「そんなつもりはないけど・・・。でも・・・寂しいじゃないか。
俺達の存在はそんな程度なのか?相談もできないような・・・さ。」
ソンギュヒョンは静かにドンウに聞いた・・・

俺は首を振って答えた。
「ううん・・違うよ。問題をさ、俺の・・・一個人の問題をINFINITEに
持ち込みたくなかっただけw深い意味はないよ。」

「でも、結果的に問題大アリだろ?
倒れるまで踊り続けるなんて・・・。どうかしてるよっ!ほんとにっ!!」

「ははっ・・ほんとだな・・俺、どうかしてるのかも。」

「ソンヨルッ・・・!」
ミョンスがソンヨルが興奮するのを抑えるように、肩を揺すった。
顔を合わせたソンヨルにミョンスは目を優しく閉じてから
首を振った・・・。

駄目だよ・・・それ以上責めたら・・・
そんな風に言ってるみたいだった。
だけど、ソンヨルは責めるつもりで言ったわけじゃなかった。
分かっててミョンスはそれ以上の事にならないように
首を振って制止させたようだった。

「ごめん・・・。でも、俺、心配だったんだ。この頃のヒョンは
おかしかったよ。気がついてないの?俺だけじゃない・・・
みんな本当は気がついてたんだよ。」

「ソンヨラ・・・ごめん・・・俺ってそんなに分かり易い?」

「うん。ドンウヒョン程分かり易い人はいないと思うよ?」

「ソンジョンっ、言うようになったなw」

「笑い事じゃないんだってば・・・」

「まぁ、とにかく家に帰ろう・・・。平気か?ドンウ・・・。」

「うん・・ちょっと足が・・・」

「肩、貸すから掴まって?」
ウヒョンが俺を起こしてくれた。
その手が微かに震えているのが分かった。

「あぁ、いいよ。俺が肩貸すから。」
そう言ってすぐにソンギュヒョンが代わった。

「ヒョン。俺に気を使うなよw」
とウヒョンが笑った。

「うるせぇな・・お前は黙ってろよw」
ソンギュも少しだけ・・・笑った。

「年がさ・・・もう24歳過ぎただろ?」

「・・・なんだとっ?」

「きゃっ!wwwww」

「え~ぃ・・・二人でいちゃついてないて行くぞ?
早くしろよぉ~・・・」
とソンヨルが急かした。

そんな二人の会話を聞いても誰も
不思議に思わなかった。
ただの日常会話だとしか・・・。

家に帰ってから俺は疲れた体を休めるために
まずはシャワーを浴びた。

使い物にならないような足を、早く治さなくてはならなかった。

豆だらけの指。
あちこち捻挫と筋を伸ばしていて、もう何処が痛いのか
分からない程、痛みが今更こみ上げてきた。

俺は・・・強いと思ってた。

だけど、今の姿を見れば誰も強いなんて
思わないだろう。
やけになって対戦相手に立ち向かってK.Oされた
ボクサーと同じなんだろう、俺なんて・・・。

夢なら早く覚めて欲しい・・・
君のいない未来が俺を苦しめるから。
君がいなくても進むと誓ったあの夜も
今じゃ嘘みたいに簡単に消え去って惨めにさせるんだ。


教えてくれよ・・・どうしてなんだ?

そう思っても・・・
今はもう・・・過去になってしまったんだな。

シャワーから出ると、皆が俺を囲むように
座った。

「大丈夫か?」
ありふれた言葉でソンギュヒョンが俺を懸命に
癒そうとしてくれる。

でも・・・今の俺にはなんの音も耳には入らないんだ。
それでも、俺はまだ無理に笑おうとしてしまう。
いや・・・勝手に笑っちゃうんだよ。
こんな時なのに、俺は笑ってしまうんだ。
やめようと思っても勝手に・・・


教えてくれよ・・・どうしてなのさ?


ヌナが俺に叫んだあの言葉が頭から離れない。

『あんたのせいよ・・・。』

そうだなって思って笑いが出る。

それを思い出してまたニヤッとふてたような
笑が出た・・・。

「おい・・・ドンウヤ・・・」

俺が下から見上げ、睨みつけるように
ソンギュヒョンに向けた顔・・・。
その時、ソンギュヒョンはどう思ったのだろうか・・・
白と黒の心が交じり合う感情がうるさくて
耳を塞ぎたかった。

「自分を・・・責めるなよ?お前のせいでこうなった
わけじゃない・・・。仕方なかったんだよ。
お前がどうにかできることじゃなかったんだ。」

「はははっ!あはははははははははははっ!!!!!!!」


「!?」


「はぁ~~~ウケるわ。ヒョンに何が分かるのぉ?
そうだよ。俺は何もできなかったんだ。
それがどうしたんだよっw もう終わったことだろ?!
俺はステージがあったし、ヌナにあんたのせいだって
迫られたって俺がどうにかできる理由ないじゃないかっ!
ステージをホヤだけに任せてユカリンの元へ行けば良かった?
無理だろっ?無理だよねぇ?誰にそんなことができたの?」


「お前・・・。」
ソンギュはドンウの吐き出した言葉に
ドンウの堪えてきた一部を垣間見た気がした。

「俺は・・・ユカリンを助けることが出来なかった。
ただそれだけの事だ・・・。ユカリンは俺の所有物じゃない・・・。」

「おぃ・・・・。やめろよ・・・・。」
それでも、これ以上壊れないように止める義務がある。
でも・・・義務というよりも、そんなドンウをただ見たくなかった。

「ヒョンッ!!俺には・・・俺には何も言えないんだ!!
例え・・・例えユカリンのお父さんがユカリンを殺してもっ!俺には
何も言えない!!俺には・・・俺にはステージだって
空けることさえ出来なかったんだ!!あんなにも・・・会いたくて
会いたくて仕方がなかった人が危険な目に合うかもしれないって
分かっててもだっ!!」

一気に喋って息が上がる・・・

ねぇ・・・お願いだよ・・・教えてくれよ・・・。

静まり返った部屋。

ただ、夢であって欲しかったんだよ・・・。

受け止めきれない現実に・・・振り落とされそうになる。

ねぇ・・・・





<






本当は、ただ泣きたいよ。



でも何故か泣けなくて・・・



ただただ、泣きたいんだ・・・



理由なんかつけないで、泣きたい・・・。












 





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その船は突然に停まった。
その船は突然方向転換を始めて、僕達の
行く末を案じるかのように過去へ戻りたがった・・・

それが僕たちを苦しめて、僕達の舵を動かした。

僕等は気がつきもしない。

ソノカジヲ ニギッテイルノハ、ボクラダト イウコトヲ・・・

進め!進むんだ!
逆戻りなんかしていられない。

前を見て、怖がらなくてもいい。

でも、怖いんだ。
だって未来は何も見えないだろ?

それを進めというのは、先駆者や過去の追随たる革命者達が
旗を上げるそれと似たような事なのだろう・・・

若い僕らにそれが出来る旗など持っていなくて、
大人たちの声だけを聞いて盲目に舵を取るしか
出来なかったんだ。

例えそれが個人的な物語だとしても・・・

何も悪いことなどしていないのに、噂さえ流れれば
家から一歩も出るなという無茶苦茶な話なんだってば。
本当の事も言えずに、数々の先輩達も
苦しんで来た話を聞いた。

そんな世界に生きる僕等は、知らなくてもいい
苦しさを味わった。

まるで、孤独死したように。

それでも立ち上がれるのは、ステージから見る
キラキラと輝いたファンの笑顔のおかげなんだって
本当に身に染みた・・・
そこに辿り着くまでに、それに気がつくのに、
数年はかかった。

それでも僕等は船を漕いで、光を求める。

光のない孤独な世界に堕ちたくなくて・・・

暗闇でいかに笑えるのか、自ら光を出すのかは
自分次第なんだ。
だから、君の為に僕は笑う。
僕の為なんかじゃない。
君を笑顔にする為に僕が笑うんだ。


小さな光を託して、君からまた別の人へ・・・
そうやってつなぎとめた光がいつか
大きな川になり、海になり、大地や山を作り上げて
その全てを抱きしめるように登っていくんだ。

行こうよ。
一緒に行こう。

あの山へ・・・
あの海へ・・・

ひび割れた大地に蓋をして、渡ろう。
それでも駄目ならガムテームを貼ろう。

もしも、剥がれてしまうのなら、僕が埋めてあげる。

それでもいいでしょ?

僕を選んでも。


------------------------------------------------------------------------------



朝・・・・目覚めると、隣りでは子供のようにスヤスヤと
眠るミョンスの顔が見えた。

あ・・・家に戻ったのか・・・

俺は記憶でも失くしたかのように目覚めて
目を開けただけの状態で、そう思った。

嘘みたいな出来事が、昨日だけで一辺に起こったから・・・

俺は昨日の事を頭の中で整理しようとした。

寝ただけじゃ、どうやらまとまらなかったみたいだ・・・。

ヌナは・・・ヌナはまだ何か隠してる気がする・・・
でも、それはなんとなくしか感じなくて、これ以上の
不安を抱えることが出来ない俺は、考えないようにした。

いや・・・考えたくなかったのかもしれない。

「ヌナ・・・」

俺はミョンスの寝言に驚いて、首だけをミョンスに向けた。

「なんだ・・・寝言か・・・。」

新しいINFINITEの曲を練習しながら、Hの活動に力を入れた。

時々他のメンバーはフリーになって、
時間をゆっくりと過ごしていた。

ミョンスは写真集を出したり、ソンヨルはバラエティに出たり・・・
ソンギュヒョンはソロ活動に専念していたっけ・・・

少しだけ風の色を変えるように、俺達は活動をしている。
それを早く集結させてステージに立ちたい・・・
そんな夢を一歩ずつ歩んで、すごろくにゴールするかのように
みんなが丁寧に枝別れして進む。

寝起きに吐きそうなくらい気持ちが悪くたって
誰にも伝わらない・・・

練習という言葉に重みを感じない声が聞こえて
埋もれそうになって、馬鹿らしくなってしまいそうになる夜も、
俺達は7人で集まって震える肩を合わせて頑張った。
でも、俺達は弱虫なんかじゃない。

ただ、耐える時期なだけだって。
そう信じて、錆び付いた視線なんかに汚されない
心でいたかった。だから、寄り添って背中を合わせて
身を守った。

いちいち悩みなんか話したってどうにもならないと
強く心を持ちながら歩く人だって、苦悩はある・・・

成功するまでは何があっても文句は出さない。

他人なんかに左右されずに、ただ己を信じて
協力者達だけで話をする・・・
一切の妥協も許さず、前進する思いを打ち付けて、
焦る気持ちが間違いを引き起こさないように
ひたすら耐えるんだ。

そんな人が世の中には巨万といる・・・

だから成功するとかはまた別の話だけど・・・
高い水準で教育を受けて、高学歴で研究者でとか
お金持ちだとか性格がいいとか・・・
色んな恵まれた魅力を持っている人だって、
必ず欠点はあるって思うんだ。

それが悪い意味じゃなくて、それがあるから心で安心したり
時にはけなされるかもしれないけど、その欠点が
あるから近づけたり、理解できる要素になったりしてさ、
結局皆、どこに心を置くかによるんじゃないかな?

そうやって人を理解しあえたらいいよねって俺は思うんだ。

つまり・・・合う合わないってあるけど、
いきなり嫌だと言うのは簡単なんだ。
だけど、それじゃ一生理解は出来ないよね。
ん~・・理解っていうか分かり合えないって言うかね?
うんうん・・・

誰とでも仲良くしなきゃいけないわけじゃないけど
そこに立たされたのなら、それがきっかけで
仲良くなったりするもんじゃないかなぁって・・・さ。

ユカリンを見てたら、物凄く深い事まで考えるようになったり
人ってなんなんだよ!って投げ出したくなったりした。

ユカリンはいいよね・・・
何も知らずに・・・本当の俺の顔も分からないまま
ただ、眠ってる。
そんな気分の悪くなるような真っ黒な心でいると、
医者でもないのに、開胸手術でもしているような気持ちになるんだ。


俺はそれもひっくるめて起き上がった。

沢山考えて、グロテスクな物を体から追い出して
また元に戻ってくるような・・・
俺も・・・結構参ってるんだな・・・エヒュ・・・
なんて思った。


---------------------------------------------------------------------------



起き上がってから、トレーナーを脱いで上に着る物を選んでいると
ミョンスが何やら寝言を続けていた。

一瞬袖を通すのを止めて見ると、ミョンスは泣いていた。

泣くほど辛い?

俺は素早くトレーナーに頭を通して、ミョンスの頭に
そっと掌を置いた。

指先でそっと頬に触れたら、濡れていたんだ・・・

「・・・・ミョンス。ミョンス・・・起きて。」

「ふっ・・ぅっ・・・」

「ミョンスッ!!起きてぇ~♪ ははっ!お前泣いてるぞ?
お化けの夢でも見たのか?ほらっ、起きたの?w」
俺は後ろからゆっくりとミョンスの背中を起こして、
顔を覗かせた。

「ん・・・?おはよ・・・なんだろ。寝た気がしないよ。」

「疲れてるんだな・・。でも、今日は休みだろ?
少しはゆっくりしなよ?ねっ?」

「うん・・・ねぇ、今日はヌナ来るの?」

「分かんない・・・でも今日は俺とホヤはサイン会あるから
もしかしたら来るかも?」

「ふぅーん・・・そっか。あ、ドンウヒョン、頑張ってね。」

「うんっ今日は張り切って来るっ!まだ、トークが
上手くないけどっwww」

「大丈夫だよ。いつもの感じで普通に話せば。」

「そっか?てか、お前も普段喋んないじゃんっ」

「あぁ~なんか俺は最初っから社長にあんま
喋んなって言われてやってきたからそれもあるよ。」

「普段うるさいけどねwww」

「んははっそうか?」

「うん。激しく分からない時あるし。」

「激しくってwww俺を一体なんだとw」

「お前カメラの話しだすと、変なスイッチ入るからなぁ・・・
この間のソンジョンのキョトンとした顔がwww」

「あははっほんと?そんな顔してたんだw俺、自分では
気がつかなかったよっw」

「確か古いカメラの話してたと思う・・・。これは、すごく
古くて今は滅多にみかけないとか・・・?」

「あぁ~あれかw」

「うん。でも、好きなことがあると誰もそうなるよね。
俺もそうだしwソンヨルはラジコンか?
めっちゃ興奮してたもんね。SHE'SBACKの撮影に
使ったヘリのラジコンの時も。」

「あぁ~~・・あれかwすっごい楽しそうだったよね。
俺も写真撮りたかったなぁ~あの顔wあとさ、あの時
ウヒョニヒョンがプールに飛び込んで、プールの底に
激突して怪我したじゃん?wwwあれも撮りたかったなぁ・・・」

「怪我したのに?wwwあれ、痛そうだったよなぁ・・・
肘とか血ぃ出てたし。」

「でも、カメラ回ってたから苦笑いしてたよねw
回ってなかったら、泣いてたかも?」

「ぶはははははっ!!ミョンスぅ~~wwwそれはないだろっ
泣くかよ、あいつがw」

「あははっそれはないか。逆ギレはありそうだけどっw」

「グハハハハハッ!!確かにっ!!それならありそうだよねっ!」

「あ、ヒョン!そろそろ用意しないと!」

「ぁあ~あぁ・・・そうだった!!んじゃ、ミョンスはゆっくりね。」

「ん・・・^^」


部屋のドアを開けてパッと一瞬でリビングを見渡すと
俺はのけぞった。

「はやっ!!」

「あ、おはよ。ドンウ。もう顔洗ったの?」

「ヌナ・・・今日早くない??俺まだご飯たべてないよぉ~」

「ご飯よりその汚い顔をを洗ってきなよ。」

「きっ・・汚いってそんなっw」

「プッ!冗談よっ。早く行っといで?
おにぎり作っといてあげるから。」

「うん。ヌナありがとうっ!」
そう言ってドンウはテテテッと洗面所に向かった。

じぃ~~~~~・・・・

「・・・・・・・・。」

口をあんぐりと開けた人が3人くらいいる・・・

「何・・・やだ・・何見てるの?」
ヌナはその3人を見てびっくりした。
ワケも分からなかった。

まぁいいやと思いながら首をかしげてキッチンへ
向かい、おにぎりを作り始めた。

「ねぇねぇ・・・」
まず口を開いたのはソンヨルだった・・・

その声に頭を寄せたのは、ソンジョン・ソンギュミョンスだった。

「うん・・・変だよね・・・?」
と、ソンジョン。

「何か・・・いつもと違うような・・・」
と、ミョンス。

「ヌナってあんなだっけ・・・」
とソンギュも首を傾げた。

不思議に思ったのは結局4人だった。

「ヌナさ、ここだけの話刺が無くなった気がしない??」
と、ソンジョン。

「いや、刺はあるけど刺の数が減った感じ?」
とソンギュ。

「ぬははははっ言ってやろぉ~www」
とソンヨル。

「ッバッカ!やめろよっ!怒られるだろっ!?」

「ソンヨルヒョンが言いだしっぺだからね?」
とソンジョン。

「あ・・・・。」

「プハハハハッ!!ソンヨルはいつも何処か抜けてるなっ」
と、ミョンスがケラケラと笑うと、

「やぁ・・・お前が言うなってのっ!」
と、ソンヨルも頬を上げながら言った。

「ねぇ、でもさぁ、おにぎりだって・・・
ドンウヒョンにだけ??俺達のは?」
と、ミョンス。

「何、お前妬いてるのか?プププッ」
とソンギュ。

「違うって。だって仕事以外の事なのに
なんで?いつもそんな事しないじゃん・・・。
なんかドンウヒョンに優しくないか?」

「ぶはっwお前ヌナが気になるの?
ヌナは駄目だろっw。」
と、ソンヨル。

「えっ?何お前も妬いてる??くははっ!」
と、ソンギュが言うと、

「ちぃ~がうって!だってあんなの衣装さんでも
女でもないだろっwww俺達の怖い教育者みたいじゃんw」
と、ソンヨルが言った。

「お前・・それは酷いだろ・・・」
とソンギュが言う。

「ソンギュヒョンだって、この前女性スタッフに
言ってたじゃんwなんで俺が言うと駄目なわけ??」
と反撃した。

「あ・・・・。」
そう言ったっきり下を向いて苦い顔をしてしまうソンギュ。

「ちょっと、ヒョン!!
それよりもヌナに何かあったのかな?」
とソンジョンが話を元に戻すと、

「ヌナもまさか俺達に緊張してた・・・って事はない?
そういうのが少しなくなったとか・・・。」
とミョンスが思いがけずに言った。

「そ・・・そうなんかなぁ・・俺達に?
まさか・・・」
ソンヨルも少し考えたけど、ハッキリとそうだとか
そうかもしれないと出てこない様子だった。

ヌナはそれくらい厳しくて、俺達も一歩線を引いた目で
見ていたからだ・・・。時には冗談も言うけど、
本気なのかどうか分からない感じだったから、
その光景がとても不思議でならなかった。


俺達は互と目を合わせて、その不思議な空気を
感じていた。



--------------------------------------------------------------------


「いよいよだね。」

「うん。これまでのshow caseでは披露したけど、
それと同じようにサイン会もいつもの
通りで頑張ろう!」
そう言ってくれたホヤに俺も答える。

「ファイティンッ!!」

「ファイティンッ!!」
そう言って、ホヤと手を組んで肩を合わせた。

いよいよ始まるHの為のイベント。
show caseやらサイン会やら忙しい日程が
組み込まれていた。

今までの7人とは違っていつもより緊張する。
それを振りほどくかのように、ジャンプしたり
ストレッチしたり体をほぐした。

意外とこれがやっておいた方がいいんだ。

緊張すると筋肉が固まって
ダンスする時に怪我をしやすいからね。

足がもつれたりさw
あれ、ほんと凄い恥ずかしいんだよっw
ステージの上からだとわぁ~・・・皆見てるって
思ってるからw
まぁ、そうなんだけどね。

俺達は大体、歌ってる時の視線は前から10列目くらいかな・・・
それ以後ばかり見て歌ってるんだ。
だから、後列の人が目が合った!って言うのは
気のせいなんかじゃないんだよ?フフッ・・・

足がつんのめったり、ダンスを間違った時の
視線はもうほんとどこ見てるのかも分からない
くらいなんだ。天井かな?
それとも、もっともっと後列みたり、もしくは
前列のみんなの反応を確かめたりしてw

そしたら笑ってね?w

こんな話をステージでもしたり、インタビューでも
話したりした。

あったことそのまま話すから笑いが出る。
俺が乗ってくると、ホヤも突っ込みやすくなるみたいで
どんどんトーク力が上がってると思うんだよね。
気のせい?ププッ・・・


「よしっ!行こう!!」
俺とホヤは気合を入れて行った。



歓声と共に始まり流れる音楽に
皆胸を躍らせた。












           ペベヌン オpソ メンナル イギジ
I-N-F-I-N-I-T-E  패배는 없어 맨날 이기지
          ウリン チョmダルルプン ケソk コッチ ナウィギル
I-N-F-I-N-I-T-E 우린 좀 다를 뿐 계속 걷지 나의 길

ムデウィェ  ティビェ オディドゥン チャジャガチ クデルウィヘ
무대위에 TV에 어디든찾아가지 그댈위해
オンラインェ キリウィェ ハンサンイッソ ピリョオンヌン 
온라인에 길위에 한상있어 필요없는GPS.....

Hands Up To The Sky We gon Have Some Fun

モドゥ タラ プルロバァ ラララララ
모두따라 불러봐  라라라라라....




-------------------------------------------------------------------------


楽しかった・・・
本当に楽しかった。

だからこそこのステージを見せたかった。

沢山指輪を付けて、指輪金持ちです。と
去り際に冗談を言って見たけど、誰も俺の
ハイクオリティーなジョークには付いてこれないようで
ファンの子がキョトンとしてた。

ロックなQPを胸につけてみたり、
小さなウサギの人形を指輪にしてつけてみたりして、
INFINITEでは出来ないお洒落を楽しんだ。

ちなみに今日はQPだ。
え?そんなの聞いてないって?ハハハッ!
そんで、髪には天使の羽根を描いてもらったの!!
とってもお洒落でしょ?んふふっ
ユカリンにも付けてあげたいな・・・

あ!そうだ。ユカリンにコウモリの耳飾りお揃いで
あげようかな?
天使の羽はいつもつけてるけど、コウモリは
ジャケット撮影で使ったんだ。

喜んでくれるかなぁ~・・・♪

大邱・釜山なども回って、俺は毎回ステージに立つ度に
ユカリンを思い出してから、歌った。
なんとなく、そうしたら声が届きそうな気がしてそうしてた。

ホヤに促されてやらされた、グィヨミ(キヨミ)もやった。

負けずにホヤにも『ひゆんひゆん』をやらせた・・・
釜山に行った頃には、ファンの子達にいつの間にか
広まっていて、会場から『キヨミ』コールがかかったんだ。
まったく、殆どやる事決まってはいるけど、何度もやるのは
やっぱり恥ずかしいっwwww
でも、喜んでくれてよかった。
頑張ってやった甲斐があるってもんだっ!

所で・・・俺の変な最近を見兼ねてなのか、
ソンギュヒョンとウヒョンが応援に駆けつけてくれたんだ。

まぁまぁ・・ほぉ~んとに盛り上げてくれちゃってさ、
おかげで緊張してたのがいい方に上手く行って
最初から雰囲気が良くなった!
ほんと、ありがたい~~~プフッ

なんか・・・・そう言えばウヒョンがソンギュヒョンに
耳打ちしてたのが気になる・・・。
ファンの子が良く気になるって言ってたけど、
ようやく気持ちが分かった気がした。

たった何箇所か回った場所で出会う人達や
俺自身へ、もう語る事は止めよう・・・

ありのままを感じて、ありのまま表現しよう。
そう思った。

俺は上手く話そうとばかりステージに上がる
直前まで悩んでたけど、そうじゃないんだ。

ユカリンと出会って、そう思うようになった。

風を感じたり、ユカリンの呼吸する肺の
動きだけで、何かを感じ取るような・・・

だから俺は止まらない。

いつもその瞬間瞬間を感じ取って
踊り続けるんだ。

船は止まらない・・・
俺達が乗る船に例え君がいなくても。
それでも俺は、君へと船を寄せて拾い上げたいんだ。
例え君への道が閉ざされようとも・・・・


俺はこれから先も船を漕ぎ、踊り続けると誓うよ。








 






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これは・・・・
ユカリンのヌナの葛藤の話・・・・

ヌナの苦悩が綴られた日記が、
俺にも・・・誰にも知られないまま
時をひっそりと刻んでいた。

俺に何が出来るかなんて、知る由もない
もう一つのストーリー・・・

ヌナの孤独は、誰の手で?

それは、俺にも誰にも分からないストーリー



---------------------------------------------------------------------




ユカ・・・早く目を覚まして?
お願い・・・

もう、これ以上父さんや母さんを説得出来ない・・・


以前からずっとお父さんは
ユカを楽にしてやりたいってお母さんに言ってた。

でも、ドンウ君の努力を見てると、勝手にそんな事は
出来なくて・・・
ドンウ君の思いや、ユカを心の支えにしている今を
考えれば、到底私達家族だけで決められることじゃない・・・

それなのに、お父さんはとうとう決心を固める勢いだった。

助けて・・・

私はそう叫びたかった。
あいつに言ったら楽になれるかな・・・?

でも、無理ね・・・

こんな私を見られたくない。

好きな人にも頼れないなんて
なんてバカな女なんだろう・・・私。
仕方がない。
私はそういう女なんだから・・・。

またあいつの泣きそうな顔を見るのなんて
嫌だから・・・
それでも素直になれない私がバカなんだから・・・

あぁ・・・どうしよう・・・

ドンウ君に伝えるべきだった?

もっと早く。

だけど、ドンウ君だってギリギリだって
分かる。ユカのお見舞いも体のしびれを押して
来てるはず・・・

なんでもないようにしてるけど、
必ず後で身体はこたえてる筈だから。



「・・・・ユカ。お父さんを許してくれ。
みんなお前がいて幸せだった・・・でも・・・
ずっと何も話さない、目も開けないお前を見ているのが
辛いんだ・・・。もう・・・限界なんだよ。お前もこれで
きっと楽になれるよな?これで・・・こんなものに
繋がれなくたっていい・・・・だから・・・。」

「お父さんっ!!待ってよ!!勝手に決めないで!!
お母さんっ!!なんとか言って!?」

「ごめんね・・・・?お父さんが決めたことに、
お母さんも賛成したの・・・。」

「待ってよ。自分はっ!?お母さんはそれでもいいって言うの?
お母さんも勝手過ぎる!!お父さんの意見に合わせるだなんて
逃げないでちゃんと考えてよ!!」

興奮する私になんの言葉も出ない両親・・・

とにかく腹が立った。

なんて弱い・・・・

なんて脆いの?

花瓶に挿したチューリップの花が、私の視界に
入ると、ユカの思い人が浮かんだ。

静かな病院に、一歩廊下を出れば少しだけ
騒がしく聞こえて来て・・・
なのに、この部屋だけの空気は
この部屋だけの世界の様に変わっているんだね。

「お父さんも・・・お母さんも自分勝手よね・・・
ユカの命はユカが決める。それに、ドンウ君の気持ちが
何処にも入ってないじゃない。」


「ドンウ君には色々済まないと思ってる・・・
入院費まで出してもらって・・・。」

「お父さん、何言ってるの?それもそうだけど、
ドンウ君の気持ちは?聞いたの??そんな勝手・・・
許されると思ってるの?ドンウ君に一生恨まれるわよ?」

「悪いが・・・もう決めたんだ・・・済まない。
お母さん、先生を呼んでくれ。」

「はい・・・。」


ドンウ君・・・お願い。
早く来て!!




--------------------------------------------------------------------------




その頃俺は INFINITE Hのインタビューやら
バラエティのゲストで色んな番組に出演していた。

ヌナからのLINEにはまだ目を通していなかった・・・

「やぁ~・・・なんかドンウの携帯、やたら通知
来てないかぁ~?」

マネージャーがドンウの荷物の傍で呟いた。

「そう?」
近くにいたスタッフが聞き返す。

「うん・・・さっきからブンブンブーブー鳴ってるんだよなぁ・・・」

「何それwww動物?」

「いやっそうじゃなくてwww携帯の音だよ。振動の・・・。」

「分かってるし・・・。」


「あっ!お疲れ、ドンウっ!
お前の携帯、ガンガン鳴ってるぞ?
ブーブー言ってるよ。ブーブーと。」

「豚?クククッ・・・」

「うるさいってのお前はぁ~・・・」

「豚・・・ケケッ・・・」

「まだ言うかっ!待てこらっ!!」

ヒョンがスタッフとジャレ合ってる中、
俺は返事をした。

「あ、ヒョン、分かったぁ~ありがとぉ。」
多分、もう聞こえてないかもだけど。

なんだろ・・・?

俺はさっきまで番組に出てた勢いで
気分は上がってた。
まさにルンルン気分のような・・・
でも、ホヤと二人だけで出演するのも
緊張するな・・・

ただでさえ、7人で出演しても
黙ってしまうのにw
俺はいつも観客のように見てて、メンバーの面白い
発言に大笑いしてしまうんだ。
だから、話すことって難しいんだって
尚更身に染みた・・・

携帯がうるさかったって?
そんなに?

俺は不思議だった。
だって、音とか鳴らないように
してるのに・・・
それでもその振動がうるさかったのかなぁ・・・

そう思いながら携帯を見てみると、
ヌナからのLINEだった。

物凄い数のLINEが届いている。




『ドンウ君ッ!!』

『気づいて!!』

『緊急!!』

『お願いっ!早く!!!!!』

『ドンウ君っ!!お父さんが
ユカを楽にしてやるって・・・
前から本当は言ってたんだけど、
心配させたくなくて言えなかったの。
ごめん!!早く来て!!』

『ドンウ君急いで!!』


『なんとか今誤魔化しながら
止めてるけど、時間がないよ!』

『ドンウ君!!まだなの??』

『早くして!!』

『ドンウ君、仕方なくお父さんと喧嘩した。
でも、もう駄目かもしれない・・・』

『ドンウ君。お母さんまで弱気で
私じゃどうにも・・・』

『仕事抜けられないよね・・・』

『あぁ~~早く気がついて!!』





ヌナからのLINEは延々とこんな風に
何十件も続いていた・・・


まさか・・・なんで急に??

ヌナ・・・なんでもっと早く言ってくれなかったんだよっ!!

「ヒョン!この後、フリーだよね?」

「ん?あぁ・・・。」

「俺、ちょっと用事!!着替えて挨拶してくる!!」

「えぇ?どこ行くの?」

「病院!!ホヤッ!ホヤッ!!ごめんっ俺、行かなくちゃ!!
ユカリンのお父さんが・・・ユカリンを・・・!」

「ドンウヒョンっ!落ち着けって!
大丈夫。後は俺が言っておくから。
早く挨拶だけしてこいよ。」

「うっうん。ありがと、ホヤっ!」

「あ、ヒョン!!気をつけて!」

俺は頷いてすぐに出演者達に
挨拶をしてから、スタジオを飛び出した。

「おいっ!ドンウ待てっ!!」

マネージャーヒョンに止められてしまった。
時間がない・・・時間がないってのに!

「乗れ。近くまで送ってやるから。」

「ヒョンッ!!サンキュッ!!」

「ホヤ、後で迎えに来るから待ってて。」

「あ、じゃぁ俺もこのままで行くよ!」

そう言ってホヤは着替えた服のボタンを留目ながら
出てきてくれた。

挨拶もそぞろに俺達は駐車場に走った。

今日はやけに駐車場が遠い。

走っても走っても無限に広がる砂漠のようだ・・・

やっと追いついた先には、まだ距離があって、
この砂漠の中を走っているんだ。

半分枯れそうなアロエ・・・
誰が折ったのか、先の切れた
アロエから、透明な液体が出ているようだ・・・
そのアロエで胸の傷に塗って欲しい。

ははっ・・・そんなの無駄なのに。
目に見える程に俺は傷ついてるのだろうか?

その左に首を回せば、
痛々しく刺を生やすサボテンが
俺は笑っているように見える。

砂の中から現れたトカゲやサソリに
睨まれながら、俺は負けずに睨み返して
走り去るだろう。

自分に負けない。
心に負けない。

ただひたすら待ち望んで頑張るしかないんだって
言い聞かせてる。
なだめて騙し騙し、しているだけでもまだマシだろう。

そう自分に暗示をかけたほうがマシだろう。

君を失くすことよりもね。

白昼夢から抜け出した俺は、ホヤはいるのか
気になった。でも、今は走らなきゃ。


車に乗って、ホヤが俺の顔を
チラッと見たのが分かった。

「ドンウヒョン・・・俺も祈ってるから・・・。」

「ホヤ、ありがと。」
俺はこの時、らしくもなく首を下にもたげてしまった・・・

潤んだ瞳が早く乾くように、車の窓を全開に開けた。

目の周りが熱くなって、唇を震わせても
ホヤは静かにただ傍に居てくれた。

そっとタオルを渡してくれて、後は窓の外ばかりを
眺めているようだった。

そんなホヤの優しさにまた目を熱くさせてしまうけど、
俺はタオルにだけ涙を見せて、それからは
ただ黙って座った・・・。

そうだ!ヌナに連絡しなくちゃ!!
俺は急に思い出して、ヌナに連絡を入れた。

『ヌナ!俺さっきLINE読んだんだ。ごめん!!
仕事中だったんだ。』

そう書き込んで、暫くすると、ヌナから連絡が
入ってきた。

『ドンウ君っ!急いで!!今どこ??』

『ヌナ!今、マネージャーヒョンが車で送ってくれてるんだ。
そっちに向かってるとこ!!待ってて!!
お願いだよ!急いで行くから!』

『分かってる!!分かってるけど、こっちも限界よ!
とにかく何か状況が変わったらお互いに連絡しよう!!』

『分かった!!』

暫くするとなんだか車の停止時間が長くなっている・・・

渋滞だった。

「ヒョン、ありがと!もう、ここでいいよ。
間に合わないからここで降りるね?!」

「オゥ!気を付けて行けよ!!」

「ドンウヒョン!何かあったら連絡して?帰りでもいいし。
俺、迎えに行くから!!」

「分かった!ホヤありがと!!
皆に言っといて!」

「OK!分かった!」


俺は車を降りて走った。
練習でもこんなに息が上がる程のスピードは
なかっただろうって位、本気で走った。

途中、息が切れて膝に手を置いて
止まってしまったけど、息が整うまで
そうしていられないから、また俺は走ったんだ。

あっ・・・そうだ!ヌナに・・・

『ヌナ、車が渋滞しちゃったから、
俺今走ってる!でも、もうすぐ着くから!!』


『分かった!気をつけてよ?』

それを見た時には、すぐ目の前に
病院が見えて来た。

頭の方から額へ・・・
額から目のすぐ横を通っては落ちていく汗が
俺の心を焦らせる・・・

痛い・・・痛いよ・・・

待って・・・ユカリンと俺を
引き裂かないで・・・
頼むから、そんな事しないで。

もう、足も膝もガタガタとして
今にも転びそうだ。

でも、今はそんな事気にしていられない。
建物についた俺はそのまま
階段を飛び乗るように駆け上がり
ユカリンの部屋まで一気に走り込んだ。

はぁはぁはぁはぁ・・・・
はぁはぁはぁ・・・くっ!はぁはぁはぁはぁ・・・

やっとドアの前までたどり着き、
一気にドアをスライドさせた。

「ユカリンっ!!」

「ドンウ君っ!!」

その瞬間にユカリンから呼吸器が取り外されようと
している所だった。

「やめろっ!!やめろぉおおおお!!!」

ドンウの大きな声が部屋に響き渡った。

ガシャーーーンっ!!
ガターーーーンッ!!!

ドンウは医者の体を押しのけて、
ユカリンのベッドを動かした。

「あっ!」
「あぁっ!!」

ドサッ・・・ゴンッ!

「きゃあああああああ!!!」

「先生!!早く手伝って!!早く!!」
ドンウは急いでユカリンをベッドに寝かせた。

「何やってるんだ君はっ!!危ないじゃないか!!」

「先生・・すみません・・・でも、でも、俺!・・・
ユカリンには生きていて欲しいんです!!
お願い・・お願いです・・・俺からユカリンを
奪わないで・・・くださいっ・・・お願いしますっ!!」

ドンウの涙がハラハラと床に落ちるのが早いのか
それともユカの父親の涙や母親の涙が早かったのか・・・

泣き崩れた両親が俺に泣きながら済まないと
謝るんだ・・・

苦しい・・・苦しい言葉が胸に突き刺さって・・・離れない。

「済まない・・・わる・・・っった。
ドン・・・ウ君・・・・・・。」

ユカリンのお父さんは嗚咽しながら泣き崩れて
なんて馬鹿な事をしたんだといつまでも
俺に頭を下げた。

「いいんです・・・いいんですよ。皆辛かったんですから。
誰が悪いんじゃない・・・俺も頑張りますから、
諦めないでください・・・。」

「ドンウ君・・ごめんなさい・・・母親の私まで
こんなふうになってしまって・・・あなたは・・・強いのね・・・。」

「いいえ・・・お母さん。僕は強くなんてないんです。
僕の気持ちがそうさせているだけで、僕は今にも
自分が死んでしまいそうです・・・。すいません・・・
こんな事言って・・・。」

「いいのよ・・・私が悪いの・・・。ユカを見てるともう
起きないんじゃないかって思ってきちゃったのよ。」

「そうですね・・・もう、1年も経ちますもんね・・・。」

「ほんと、お母さんが弱いからお父さんが決心したんじゃない!
お父さんだってそんな事はしたくなかった筈だよ。
お母さんの辛い顔を見たくなかったんだってば!!
全く、信じられないっての!」


「あれ・・?ヌナ・・・なんでこんなとこにいるの?
仕事は???」
そこにいたのは、ユカリンのヌナじゃなくて・・・
衣装を持ってきてくれるヌナだった。




キョトンとした顔でドンウがこちらを見ている・・・

まずった・・・
そういえばまだ会った事ないって
ことにしてたんだった・・・

どうしようか?
いや、どうしようかって言っても仕方ないか。

正直に言うしかない・・・

「ドンウ・・・私がユカのヌナだよ。
騙すつもりもなかったけど、言わなくてごめん・・・。」

「え・・・ほんとに?ほんとにヌナがユカリンの?」

「うん・・・。でも、お願いがあるんだ。」

「うん?何・・・。」

「メンバーにはこの事言わないで欲しい・・・。」

「ソンギュヒョンにも?」

「うん・・・。」

「ホヤは??」

「それも駄目だ。」

「ヒカリちゃん・・・・。」

「一応駄目・・・。」

「一応って・・・。」

「とにかく今はまだ言わないでよ。
分かった?」

「あ・・・はい・・・。」

「いいよ。今更敬語なんか。」

「あ・・うんw」

「普段もあんまり使ってないじゃない。」

「ああ、そっかw」

「何を今更緊張し・・・あっ!」
ヌナは今まで俺としていたLINEを思い出したらしく
顔を赤らめてしまったらしい。

「ドッ・・・ドンウや。」

「ん?」

「私たちのLINEの事だけど・・・
あんなしおらしいのは私じゃないからね?
少し演技したんだっ。分かるよね?
それとっ!LINEの事は絶対に内容を誰にも明かすなよ?」

「なぁ~んか・・・夢壊れた感ぁ~んじぃ~・・・」
俺は目を細めて言った。

「なっなんだ!その意味ありげな言い方は!!」

「ほらほら、ユカも大丈夫みたいだし、喧嘩するなら
外でやって頂戴?」

ユカリンのお母さんに呆れた感じで怒られてしまった。

「ユカリン?良かったね^^俺、また来るからね?
またこれで、一緒にいられるね?フフッ・・・」


「おい・・・Hのイベント始まるじゃん・・・
忙しくて来れないだろうが・・・。ユカに
嘘つくんじゃないよ!!」

「あっ・・・そうだったwwwwヌハハハハ
ユカリン、俺ねイベントが始まるの。
何箇所かだけなんだけど、頑張ってくるね!へへっ・・・」

「何、その緩んだ顔・・・・」

「えぇっ??なんでっwwwwあはははっ」

「そんなにユカが好きなわけ?」

「ヌナ・・・シャラップです・・・うふふっ」

「はいはいっ・・・分かりましたよ。分かりましたーだっ!」

「ヌナッwwwwギャハハハハハッ」

「なっ!何がそんなにおかしいんだ?ん?」

「そんな、楽にしてるヌナを見たのってあのメンバーの中じゃ
俺だけだなぁ~って思ってwなんか得した気分w」

「うっさいっww私だって、ちょっとは愛嬌あるんだぞ?
それをさせない奴が悪いんだっつーの!」

「あはははははっ!!あはははははっ!!!はぁ~~~
ツボったぁ~~はぁああ~~~~wwwww」

「どんだけツボってるんだ?売り飛ばすよ?」

「うははははっ!!うはははははっ!!!
売られたら困るよぉ~~~ほほほほwwww」

「おほほってお前はマダムか?」

「あぁ~~腹痛てぇ~~ぎゃははっ!!」

俺はヌナの登場のおかげなのか安心したのか、
物凄く笑った。
病院内に響く俺の笑い声・・・
ユカリンにもきっと聞こえてると思ってる。

俺のうるさいくらいの笑い声が君に届くと信じて
俺は明日からINFINITE Hの活動に専念しようと
思った。

このままでも、君がいてくれればいいんだ。
エゴだって・・・なんだって。

俺はご両親ともう一度話をして、ヌナにも
明るい笑顔で手を振って家に向かった・・・

また虚しさに襲われるだろう・・・
いつまでも続かないだろう・・・
分かってる。
分かってるよ。
いつかは別れる時が来ることくらい・・・

それまで夢見ていたいんだ。
ユカリンに告白をして、好きだって言うんだ。
それから手を繋いで・・・
春になったら必ず桜の花を二人で見たい。



それまで・・・夢を見てもいいだろう?




ユカリン・・・君がいなくて寂しいよ。
君がいないと真っ暗闇みたいだよ。

家に帰って部屋に一人きりになると、
やっぱりいつものように襲ってくる寂しさに
俺は俺と戦って・・・・・・・・






 





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