{F8263002-B0F0-4654-9F56-6FF510C7E83E}

(冒頭から暗い話がつづきますがどうか最後までよろしくお願いしますm(_ _)m)


うちの猫は壁から産まれた壁ネコ
正確には壁から助け出されたノラ猫
片手の平サイズ。ブルーアイ。短い巻き尻尾の白い猫。

子猫を育てるのは初めてだった

女の子だと思い、高貴な名前を、と命名はクレオパトラならぬ白いのでクレオバニラ。が、後に男の子だと判明。結局バニラのバニたん。若しくはバニオちゃん。
触られるのも抱っこされるのも好きじゃない。人嫌い、猫嫌い、無愛想、神経質、俺様資質の超噛み猫。叱られると逆ギレするとても扱いにくい子だった。
でも、私にだけは抱っこを許し、寝る時はいつも甘えん坊の腕枕。そして寂しがり屋で意外とヤキモチ焼き。
そんなこんなで可愛くて可愛くて…


2006年     5月

それから11年
4歳の時に急性膀胱炎になった以外は特に大きな病気も怪我もなかった。
のだけど、異変は突然やってきた。
昨日まで食べていたご飯を全く食べなくなった。
病院へ行き血液検査
その結果

【慢性腎不全】

ステージ4
すでに末期の状態

思いがけぬ闘いの始まり


それから一週間
そこは月に1、2度程しか通らない細い道
猫が死んでいた。多分、事故。
横を通るまで気づかなかった。子猫と大人猫のちょうど間くらい。コンクリートに血が滲んでいた。目が半分開いていたが色は覚えてない。それだけでも十分ショック。
でもそれより衝撃的だったのはその子が白猫だったこと。
猫が事故に遭った所に遭遇する確率ってどれ位なのか。しかもそれが白猫である確率は?ただの偶然。そうなんだろうけども
時期が時期だけに、この事は誰にも言えなかった。
{A051EF22-7E33-45FE-BE5D-0B19F54A6D01}

6月

バニたんは完全な家猫。
せいぜいベランダで日向ぼっこする程度。
抱っこして連れて行こうとすると爪を立てて全力で拒否。
それが、病気が発覚してからというものやたら外へ行きたがるようになった。
でも一人じゃ危険。付き添い有りで家の前を朝と夕方の2回。
葉っぱの匂いをクンクン。風の匂いをクンクン。たまにコロリン。自転車の音にビクリ。なんだか、この世の見納め、そんな気がしてならなかった。

あとどれくらいお散歩ができるのか

そんな事を思っていると、私はバニたんを抱っこできなくなった。
この感触、この重さ、この温もり、それを全部失う事になるのかと思うと、怖くてできなかった。
心の準備をしなくてはならないというのに
というか、心の準備の仕方がわからない。


1日おきの点滴と注射
猫にも注射痕て残るのか?
毛むくじゃらで良かった

「大丈夫ですか」
先生が気遣ってくれた
「大丈夫です」
即答
毎日だって通う覚悟はあった。
そのかいあってか、ドライフードが食べられるまで回復した。多分ギリギリの回復。
これには先生も
「普通これだけ数値が高いと食べられないよ」
と驚いていた。
正直、あまりにも辛そうな治療に、もしかしたら、もう何もせずに静かに過ごさせてあげた方がいいのか?と治療の中止を考えた。でも、食べている事を訊いた先生が
言った。

「この子なりの何かがあるのかな」

そんな事は到底できなかった。


バニたんは食べた。
時には手に持ったお皿から。時には手から直接。時間をかけて、ゆっくりと、吐くこともなく。

今日は食べてくれるだろうか。
食べた!
でも明日は?
明日の朝は?夜は?
そんな毎日だった。
{67A75DD8-F901-4DF4-B523-C0F172366941}

7月

再び食欲は落ち始めとうとうひと舐めもする事ができなくなった。

初めての血液検査の時、このまま何もしなければあと4.5日もつかどうかと言われた命。あれから一ヶ月半
先生が言った。

「いよいよかな…」

病院で初めて泣きそうになった。
これまで辛そうに治療を受けている姿を見ても絶対に泣かなかった。
それが延命治療だとわかってはいても、もしかしたら、という気持ももっていた。
泣いてしまうとそれを否定してしまうようで嫌だった。
でも、結局その希望のようなものは、もうダメなんだとわかっていながら嫌がる治療を受けさせてしまったという罪悪感に変わった。

そして私は治療を断念した。
あとは静かに過ごさせてやりたい。
もうそうしてあげる事しかできなかった。

あと何日一緒にいられるのか。

身体中がザワザワと騒いでとまらなかった


やはり、食べる、という事はとても大切な事のようで、食べなくなった途端、急激に体力は衰え、最終的には自力で歩く事もできなくなった。
でもトイレには行こうと頑張る!
一人では置いていけない。
仕事を休んで24時間つきっきりとなった

そしてとうとうその日………

横たわった身体
息が荒い
危篤状態
聞こえているのかどうかわからないけど

「もう頑張らなくていいから、またうちの子に生まれておいで」

それから数時間後
大きく2回息をした後、バニたんは動かなくなった。

ありえない……

だけど、私にしか抱っこを許さなかった子が、家族に抱きしめられていた。
それが、病気との闘いが終わりを迎えたという紛れも無い事実。

7月7日
七夕の夜の出来事
一年365日もあるのにね

そして、今度は私の闘いが始まった
{D9A2E662-23D6-4E48-86D5-1DA43E30C0F1}

誰もいない部屋に行ってきます
静かな部屋にただいま
一人暮らしではないけど、仕事の都合上どうしてもそうなる。

静か……
部屋が息をしていない

今日は何をしよう
明日はどう過ごそう
休みの日ってこんなに暇だっけ

眠れなくなるのが嫌であえて睡眠時間を減らした。おかげで寝つきはいい。
ご飯もちゃんと食べてる。
ただ、寝覚めが異常に悪い。

あ、猫砂買って帰らなくちゃ
あ、雷!怖がってないかな

そんな心配はもう必要ないのに、長年の癖というものはなかなか消えてくれないもので、なんとも残酷だ。

お気に入りだったお昼寝場所
なんでそこにいないのか
もういないんだ、と理解しているはずの頭の中に浮かぶ正反対の疑問

やれやれ………  厄介ですな……

それでもいつの間にか時間は流れ
気づけば梅雨が明けていた。
気づけば蝉が鳴いていた。
気づけば夏になっていた。

頭とお腹が痛いのだ。
{534C820E-BAE3-4364-A67F-E859557DE0EE}

8月

夏は好きだ。
でも今年は違う。

酷く大きな喪失感。
本当に穴が空いてるんじゃないの?と思う程のリアルな感覚。
その穴から何かが出てくる。
処理の仕方がわからない。
逃げ場もない。
それでも立っていた。

その理由

大好きな人がいる
身近な異性とかじゃないからね。
それは漫画家の先生。ただのファン。
その先生の作品が大好きだった。
ずっと前から好きだった。

何それ…
そんな事?
そう思われるかもしれないけどね。

多分、気づいていたんだろうけど、もうダメなんだ、という事は最後まで家族には言えなかった。申し訳ないと思ってはいてもどうしても言葉が詰まって言えなかった。
認めたくなかったのか、認めてしまっていたからなのか。
それでも抱えるものはどんどん大きく重くなっていく。

捕まるものが必要だった

癒しの絵。好きなものにすがる。
次の作品に期待する。それは楽しみなものになる。意識がそっちへ向けられる。
どんなものでも、あるのとないのとでは全然違う。
しばしの現実逃避が必要だった

人によってはたかが猫
否定はしない
理解も求めない
世界規模からすれば砂粒にも満たない命
確かにそうだ

そうだろうけども

ごめんなさい
そんな事で片付けられない
こういう人間もいるのです。

なら何故猫を飼ったのか

そもそも、猫を飼う気も予定も全くなかった。でもそれは興味かなかったわけではなく好きすぎて飼えなかった。いずれこうなる事がわかっていたから。
自分は向いてない。そう思っていた。
でも、バニたんはこの家を出れば保健所へ

目を背けることはできなかった。


9月

まだまだ強い日差し
しつっこい

正直、一ヶ月もすれば記憶も薄れて楽になると思っていた。
早く楽になりたかった。
あれから2ヶ月
確かに生前の記憶は徐々に薄れてきている
でも、それが逆に悲しかった。

まだここにいて!

そんな感じ

元気だった頃から冷蔵庫に貼られている写真。いなくなった後で見るのはさぞ辛いだろうと思っていた。でも、それを剥がしてしまう事のほうが辛かった。

後悔をするような死なせ方だけはさせたくない。ずっと言っていた。ところが実際はあのザマだ。いったい幾つの後悔が残ったことやら。一番最悪の死なせ方。

ある漫画で、置き去りにする方とされた方どっちが苦しいんだろう、という台詞があった。
よくはわからない。死んだことないし。
でも、今はされた方に一票、に賛成

どっかに落っこちてないかな。猫。
もしいたら
「しゃあない、飼うか」
ってなるのかね。

(じゃあとっとと次いけよ!)

ごもっとも!

でもね、頭ではわかっていても……っていうね、とっても面倒臭い生き物なのよ


逢いたいな………

もっと写真撮っときゃよかった。
もっと動画撮っときゃよかった。

もっと抱っこしとけばよかった。

まだ暖かい身体さえ抱っこしてあげることはできなかった。
ほんと、ヘタレ
というか、また後悔が増えた

最悪だ


今一番怖いのは
何もする事がなくなる事
何かしていないとダメ人間になる。


10月

もう3ヶ月
まだ3ヶ月
やっと3ヶ月

未だに残る小さな傷跡
最後の血液検査の時にガブリッ!
だいぶ怒ってたからね。
牙が骨まで達し、三日間コップも持てないくらい腫れた。亡くなる二週間程前の事。
直後から痺れだし、重い痛みを感じていたが、まだそんな力あったんだ、と嬉しかった。しばらくは消えそうにない。
しかもそれは親指の付け根。何をしてても目に入ってしょうがない。

それでも現金なもので、三ヶ月経った今、もう一度自分の猫を抱っこしたい、という気持も湧いてきた。
でもなかなか踏み切れない。

その理由

新しい子にバニたんの姿を重ねてしまうのではないかという不安。
自分は頭が硬くて要領が悪いから、バニたんの代わりとして迎えるのは嫌なのだ。
それと、あんな死なせ方をさせてしまったのに……という後ろめたさ。
そして一番大きな理由
最期のあの瞬間にまた立ち会わなければならないのか、という事。
バニたんをうちに迎え入れた時から、最期はちゃんと看取る。
そう決めていた。
だから、立ち会えた事に後悔はしていない
でも、その瞬間は想像を遥かに超える程の衝撃を残し、根深い恐怖に変えた。

自分の中に生えてる恐怖
そこは本人でも手の届かない心情の底
引っこ抜いて捨てるにはどうすればいいのやら。

時間を戻せないのなんて当たり前。
そんな事思った事もない。
でも、今、心底思う。

時間を戻したい。


11月

できれば自然回復を望んでいる。
時間さえ経てばできるものだと思っている
あれから四ヶ月。

未だにあるんだな
黒い服にくっついている白い毛が。

たまにあるんだな
普段あまり動かさない物を移動させた時、裏に溜まった白い毛が。
結構大量
掃除しろ…

だいぶ肌寒くなってきたので毛布をだしたら……

なんてこった……

ここにも
一本、二本、三本…
ちゃんと洗濯したのに。

衣替えをしても同じ現象

年末の大掃除が怖い……

そいや、この前亡くなった事を知らない動物病院からハガキが届いた。

【バニラちゃんへ
    健康診断のお知らせ】

だとさ。

でも、この病院では一度も診察を受けてない。以前、何度かペットホテルを利用しただけ。それももう三年以上も前の事。
今までこんなハガキ一度もこなかった。
10歳を過ぎたから、という事のお知らせだったのがしれないけど、タイミングがね……

これも偶然
ただの偶然
でも、やるせない偶然

心ン中のものも含め、遺していったものの処理ってホント難しい。

それでも必死で過ごしてきた四ヶ月
いなくなったこの環境に慣れてきているのは確か。人の順応性が恨めしいとさえ思う
記憶からどんどん遠ざかっていく事が寂しい。

(お前、やっぱり向いてへんわ)

そやな…
やっぱ向いてへんかもな
でもね、そう簡単に捨てられるものでもないのだよ。

てんこ盛りの後悔
これ以上入らない位の罪悪感
べったり張り付いている執着心

それでもね
ゴメン
バニたん

やっぱり
もう一度抱っこしたい
一緒に遊びたい
一緒に寝たい

さて
どうしようか………

四ヶ月も経っちゃったよ
でも環境には慣れてきているのにやっぱり
後悔の重さは1グラムも減ってない、
逢いたい気持も変わらない。
てか、むしろ強くなってきてる。
逢いたくて逢いたくてしょうがない。

でも
無理だから
無理だから仕方がない。

荒療治への移行?

変化もあった
最近、ツイッターのアイコンを変えたのだ
ずっとバニたんのピンクの肉球だったんだけど。変えたくて変えたのではない。
なんかゴニョゴニョいじくってたら勝手に変わってしまった。
でも元に戻そうとは思わなかった。

今でも思い出すと結構な勢いで泣いてしまうけど。
まだ立ち直った気もしないけど。

結局はそういう事なのかもしれない。

いつかは普通に思い出話ができるか。
できる
できるだろう
けども
何年か経って、あの時は大変だったな、で済ませてしまうのは
なんか嫌だ。

ここ数年、空前の猫ブーム
初めて猫を飼う人も多いはず。
その人達は、こと病気がどれだけ怖いものなのか知ってるだろうか
そもそも、猫にもこんな病気があることを知っている人はどれ位?

そろそろ次の準備をした方がいいのかもしれない。

でも、
『もう振り返らない』てなカッコいい事は口が裂けても言わない。
めっちゃ振り返ってやる。
その方が同じ事を繰り返さない気がする。

ただ願わくば
一つだけ聞いてみたい。

「バニオちゃんは幸せでしたか?」

(ケッ……アホか……」

と言われてしまえばそれまで。
でも、
あいつならありえる…
{B7AE7B4D-C48B-43CC-980D-5093A3D4C0F8}


今猫を飼っておられる方。子育て中の方。特にその子がファーストニャンコであるという方。どうか今ある元気な命を大切にしてあげて下さい。
もの言えぬ命を抱えるという事は、それを守ってあげる義務があるという事です。
うちの子は病気が発覚した時にはすでに手遅れでした。
年々伸び続ける猫の平均寿命。
あるデータでは現在の猫の平均寿命は15.75歳。うちの子はそれに遠く及ばない11歳5ヶ月という命でした。
でも、早期発見できていれば、完治はせずともまだまだ生きられる命でした。
でも私は気づいてあげられませんでした。甘やかして、ただ可愛がるだけ可愛がって、「あんたはこんなに大切にされて幸せやなぁ〜」とよく言ってました。
でもそうじゃなかった。
大切にする=溺愛
ではありませんでした。
それだけじゃダメだったんです。
ちゃんと見ていたはずなのに、いったい何を見ていたのやら。

でも、猫はとても我慢強いと言われています。特に腎不全という病気は、全く食事をしなくなったなどの症状が出た時にはすでに末期というケースも少なくありません。そのくせ、この病気は早期、つまりステージ1では見た目でわかる症状は殆ど出ないそうです。
という事は、やはり定期的な尿検査や血液検査が早期発見に繋がる最も最適な方法です。ですが、猫はとてもデリケートな生き物なので、病院に連れて行くと興奮状態に陥り、まともな測定ができない子も多いそうです。ですが、そういう子にも調べる方法はあると聞きました。
詳しい事まではわからないのですが。
なので、もし不安であれば連れて行く前にまずは病院の先生にお話を伺ってみてはどうかと思います。

慢性腎不全は、10歳を過ぎた頃から発症率がぐっと上がります。
これは決して完治はしない進行性の病気。
本当に怖いものなんです。
進行すればするほど身体への負担も治療も辛いものになってきます。
できれば7歳を過ぎた頃から腎不全を意識した検査をした方がいいと思います。

体重が増えない、吐き方がおかしい、
水を飲む量が増えた、おしっこの量が増えた、など、ほんの少しでもいつもと違うと思われたら、今元気だからいいや、で済ませないで下さい。
知識を持たない勝手な判断はとても危険だと思います。
本当に情けない話なのですが、今になって思えば…という事が私にはいくつかあるんです。でも、私には猫の病気に対する知識が殆どありませんでした。
それに加え、うちの子はまだ大丈夫だろう、というなんの根拠もない思い込みのようなものもありました。
本当に愚かでした。

腎不全に限らず、今はネットでも猫の病気に関する事は簡単に調べる事ができます。
少しの知識で救える命があるかもしれません。
ただ気をつけていただきたいのが、何かの症状が現れ、病院に行く前にネットで似たような症状を調べ、それが、特に気にする事でもない、という結果であったとしても決して安心はしないで下さい。
ネットの情報が100%ではないですから。
いつも見ている飼い主様がおかしいと思われたのなら、何かしら別の異変が起こっているかもしれません。
やはり、定期的な検査、病院での診察が大切な家族の長生きに繋がる最も最適な方法だと思うのです。
が、
動物病院の受診料は決して安いものではありませんから、現実的な事を考えると、私もあまり強くは言えないのですが。
多頭飼いをされているご家庭は特に…
連れて行くのも大変です。

でも
だけど
それでも言いたい

死に向かい、日毎に弱っていく姿をただ見ている事しかできないのは
辛い
苦しい
そんな言葉では軽すぎる


その子の育て方は飼い主様それぞれ
お世話の仕方も、愛情の注ぎ方もそれぞれ
それでその子が幸せならそれでいいと思います。

私の場合、幸いな事に職場が比較的休みやすい環境にあった事で最期まで一緒にいてあげる事ができましたが、やはり、なかなかそういうわけにはいかない、という方もたくさんいらっしゃると思います。

できる限りでいいと思います。

だから
どうか
何があっても
どんな状態になったとしても
最後の最後まで守ってあげて下さい。

そして、いつかその時が来た時、

「幸せな時間をありがとう。
    ご苦労様でした」

そう心から思い、送り出してあげられるような生活を送って頂けることを望みます。


12月

私は
近々、猫グッズを見に行きまする。

ウエルカムニャンコプロジェクト
発動します。

なんてな。
ちょっとカッコよく言ってみた。