悪魔の手が伸びてきて、

ワタクシのかわゆいオチョボグチが、

グイッと無残にも引っ張られて

大きく開けられた。


「はい、麻酔しますね~。

 ちょっとだけ、チクッとしますよ~♪」


まだ、語尾に音符がついてる。


やな感じっ!


なんて思っていたら、

麻酔の針が、ワタクシのピンク色の歯茎に

ささったらしく、

ヂガッとした。


ちょっとだけチクッ、じゃないじゃん。

すごいヂガッ、じゃん。


ちょっとだけチクッの何倍も痛いじゃん。

痛みの表現は正確にしていただかないと、

こちらとしても、心の準備というものがですね…、

「はい、もう何箇所か麻酔しますね~♪」


へっ?

ま、まだするのぉ?


そしたら、立て続けに、

ヂガッヂガッ


と、とっても、痛いんですけどぉ~。


と、思っていたら、だんだんと、

口の中だけでなく、

クチビルまでしびれてきて、


何だか、だらしない口元になってるのが

自分でも分かってきた。


そのだらしない口元を見て、

音符の悪魔は、しめた!と思ったのか、

何かの器具で、

ワタクシの口の中をつつきながら、


「ここ痛いですか?♪」

と聞いてきた。


「フガ」←(いえ)


「じゃあ、ここは痛いですか?♪」


「フガ」←(はい)


ん?


(いえ)も(はい)も、同じ「フガ」じゃん!


これでホントに通じてるの?


麻酔が切れて、ホントに痛くなったら

この「フガ」だけで、どう訴えればいいの?


またもや、つぶらな瞳のパチクリ攻撃で

この不安を必死に伝えようとしたのに、

全く、理解されず、


悪魔が手にした抜歯用のペンチが

ワタクシの口の中に入ってきた。


そして皆さん、

いよいよ、今日のその時がやってきたのです。

      ↑

ここんとこ、NHKの「その時歴史は動いた」

の雰囲気でお願いします。