この川は、いつか来た川。お婆さんは再び川に
来た。巨大化した桃に押し潰された記憶。
それは体より深くお婆さんの心を傷つけていた。
嫌がるお爺さんを無理やり荒縄で縛りつけてきた。
いざという時の盾がわりにはなるだろう。
川の流れが速まる。来た。
お婆さんの目が鋭く光った。桃だ。
いや今度はふたつある。なんの変哲もない桃が
ふたつ流れて来るように見える。
二人の体に緊張感がはしる。早くもお爺さんは
気を失ってしまった。お婆さんは舌打ちをする。
やはり何の役にも立たぬか。
次第に巨大化するふたつの桃は、はっきりとお婆さんに狙いをつけて迫って来る。
覚悟を決めてこちらから行く。川の流れに逆行して
お婆さんは走りだした。
激突。
溺れかけて目を覚ましたお爺さんはその異様な
光景に再び崩れ落ちてしまった。
つづく。