買牛稲荷神社(佐世保市藤原町)

 

国道35号線沿いの「ホンダcars長崎」と「西松屋」の間の細い道を奥へ進むと、山あいの静まった所に瀟洒な神祠があります。これが買牛稲荷神社で、松尾良吉翁が大正時代に私財5万円を投じて創建したというこの社には、こんな話が伝えられています。良吉翁は、ふとしたことから牛肉商店に出資しました。だが、その店は長くせずして破産しました。翁は牛を殺す事業に出資したことをひどく後悔し、殺された牛へのせめてもの供養にと、施牛の大願を思い立ち、近隣農村の貧農を選んでは「牛を大事にすること」を条件に無料で牛を与えたそうです。この神社は、人間の犠牲となって命をなくす牛を供養するため、京都の伏見稲荷神社を模して作られ、大正7年(1918年)に完成しました。 創建当時は広大な敷地に赤い鳥居が並び、桜の名所としても有名な神社でしたが、しだいに周囲が宅地化され、現在は、小さな森に囲まれたコンパクトな神社となっています。