ポメーラ
— http://business.nikkeibp.co.jp/article/skillup/20090624/198424/典型的な成熟市場と空前の消費不況という悪条件の中で生まれたヒット。その裏側には、4代目である宮本彰社長の「ヒットの方程式」がある。
その方程式とはずばり、「まあまあ欲しい人が10人<要らない人が9人+絶対欲しい人が1人」である。「10人の消費者全員が『まあまあ欲しい』と言う商品Aと、10人中9人は『要らない』と拒否するが1人は『絶対に欲しい』と熱望する商品Bがあった場合、どちらの商品がヒットの確率が高いと思いますか」と宮本社長は言う。
全員が「まあまあ欲しい」商品はヒットしない
「おそらく多くの人は、『商品A』と答えると思います。しかし、我が社ではこういう商品の開発には手を出しません。少なくとも事務用品の世界では、Bの方が圧倒的に売れる可能性が高いからです」
「事務用品の世界では」と宮本社長が前置きしたのは、食料品や衣料の世界では、状況が変わってくるからだ。生活必需品の分野では、10人が「まあまあ欲しい」と言う商品Aの方が有望になる。
取材の時でも楽々文字入力できるポメラ(写真:山田 愼二)なぜか。宮本社長の考え方をまとめると次のようになる。
食料品や衣料は事務用品よりも、人々にとって購買の優先順位が高い。生きていくうえで必要であり、誰もが定期的に購入しなければならないため、食品 や服を見て「まあまあ欲しい」と10人が思えば、結果として半分程度は現実に購買行動を起こす。つまり商品Aは5~6個は売れる可能性がある。
それに対して、商品Bは9人が「要らない」と断言している以上、1個しか売れない。メーカーとしては、当然、商品Aの開発に全力を注ぐのが最も合理的な選択になる。
しかし事務用品は、あれば便利かもしれないが、ないからといって生活できなくなる商品ではない。「まあまあ欲しい」と思う程度では、購買行動を起こす者は少なく、場合によっては、商品Aは1つも売れない可能性もある。
それに対して、商品Bはすでに1人は「絶対に欲しい」と言っている以上、1個は必ず売れる。よって、事務用品メーカーとしては、商品Bの開発に乗り出すのが最も有利な選択となる――。
14人の役員が「誰が欲しいんだ、こんなもの」と主張し、印南教授1人だけが「素晴らしい」と絶賛したポメラは、「まあまあ×10人<要らない×9人+絶対欲しい×1人」の宮本理論から見て、絶好の新商品だった、というわけだ。