ジョアン・コーニグ・コステさんというアメリカ人女性は、若年性アルツハイマー病の夫(40歳代で発症し、1976年死去)の介護を、サポートグループもなければマニュアルや指標一つなかった1971年に始めました。そして、その介護の経験を通して、アルツハイマー病の介護プログラムを考案し一冊の本(『Learning to Speak Alzheimer's』 邦訳:アルツハイマーのための新しいケア─語られなかった言葉を探して, 2004年)にまとめ上げました。この本の中には、認知症の人の「相手の言葉に乗っかるような形で反射的に返答してしまう」という行動特性を認知症ケアに活用する手法が記述されております。
「『最後の言葉』を、多くのケアパートナーたちは上手に利用しているのです。このテクニックを使って、アルツハイマー病の患者に、あたかも自分に物事の決定権があるように感じさせ、自立心を育ませることができます。それはこうです。まずケアパートナーがこう言います。『この緑のシャツを着る? それとも青?』。すると十中八九、患者は『青』と言うのですが、これは単に『青』というのが最後に聞いた言葉だからです。『今日のお昼はツナのサンドイッチ? それともチーズ?』と聞いても、答えはやはり『チーズ』です。ハビリテーションの見地からいうと、常に劣等感や敗北感を経験しているアルツハイマー病の患者にとって、自分で決定するという達成感、自立心が生まれることは、かけがえのないことなのです。」(ジョアン・コーニグ・コステ:アルツハイマーのための新しいケア─語られなかった言葉を探して 阿保順子監訳 誠信書房, 東京, 2007, pp101-102)
(つづく)
笠間睦 (かさま・あつし)
1958年、三重県生まれ。藤田保健衛生大学医学部卒。振り出しは、脳神経外科医師。地元に戻って総合内科医を目指すも、脳ドックとの関わっているうちに、認知症診療にどっぷりとはまり込んだ。名泉の誉れ高い榊原温泉の一角にある榊原白鳳病院(三重県津市)に勤務。診療情報部長を務める。
認知症検診、病院初の外来カルテ開示、医療費の明細書解説パンフレット作成――こうした「全国初の業績」を3つ持つという。趣味はテニス。お酒も大好き。
お笑い芸人の「突っ込み役」に挑戦したいといい、医療をテーマにしたお笑いで医療情報の公開を進められれば……と夢を膨らませる。もちろん、日々の診療でも、分かりやすく医療情報を提供していくことに取り組んでいる。
笠間睦さんインタビュー記事