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 【及川綾子】 座間市の小規模多機能型居宅介護「ふれんどりぃの郷(さと)」。利用者の家族には、仕事をしながら介護を続ける人もいる。佐藤マサ子さん(69)もその一人だった。

 2008年11月、法事の支度をしようとした夫弘晴さん(09年に71歳で死去)は、ネクタイを締められなかった。それを見た三男(39)は「そろそろ限界じゃないか」と言った。

 以前から、マサ子さんの職場に「○○さんから電話があったよ」と夫から電話がかかってくることがあった。今となっては、自分が忘れないうちに伝えたかったのだと思う。穏やかな夫との生活に、困りごとはなく、法事の後に診断を受けるまで、認知症という意識はなかった。

 マサ子さんは25年以上前から、手作りの弁当屋で働いてきた。長男の中学のPTA役員時代に知り合った友人の店に加わった。

 いくつかのデイサービスにあたってみた。だが、「午後3時半にはご主人を迎えに来て下さい。午後4時にはカギをかけます」と説明された。「仕事を辞めて下さい」とまで言われたこともあった。

 そんなとき、職場の仲間から「郷」を薦められた。自宅から歩いて15分もかからない場所なのに、存在を知らなかった。特別養護老人ホームや介護老人保健施設といった名前は聞いたことがあったが、「小規模多機能型居宅介護」は聞いたことがなかった。

 「お父さん、手伝いで介護施設に行くんだけど、一緒に行ってみる?」。認知症という言葉は使わずに誘い、同年12月末に三男と3人で見学に行った。

 「私たちの日常が崩れないで生活できる」と思った。弘晴さんは「郷」で「私にできることがあれば、何でもお手伝いさせていただきます」と言った。

 「郷」は時間の融通がきいた。弁当用の豆を煮るため、朝6時半に出勤する日は、「カギを開けておくから、出勤前に連れてきて」と言われた。「宿泊」のサービスも提供しているため、泊まり込みの介護職員がいる。

 仕事を終えて、午後9時過ぎに弘晴さんを迎えに行っても、「奥さん来たわよ」と職員が迎えてくれた。上がり込んで、お茶をごちそうになって帰る。

 温かいお茶を手に、職員から弘晴さんの1日の出来事を聞くのが、マサ子さんにとって安らぎの時間となった。

(朝日新聞 2014年3月1日掲載)